軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

109.古い龍脈

トカゲを一掃した後、龍脈の活性化を眺めつつ、自分のステータスをチェックした。

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名前:ノア・アララート

帝国皇帝

性別:男

レベル:17+1/∞

HP C+B 火 E+S+S

MP D+C 水 C+SSS

力 C+S 風 E+C

体力 D+C 地 E+C

知性 D+A 光 E+B

精神 E+B 闇 E+B

速さ E+B

器用 E+C

運 D+C

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戦う前とまったく変わっていなかった。

魔物を一掃したからレベルが上がってる可能性はあったが、そうはならなかった。

まあ、そんなものだろうと思った。

俺のレベル上限は(何故か)∞だが、世の中の大半が15以下だ。

つまり今の段階でも人間のかなり上位クラスのレベルである。

一戦程度じゃ上がらないのも無理からぬ事だ。

上がらないものは上がらない、無い物ねだりしても得られるものはない。

俺は自分のステータスから、再び龍脈を活性化しているバハムートらをみた。

大地――砂漠がほのかに光り始めている。

ぼんやりと、月明かりと同じ程度の淡い光を放ち始めている。

その光が、まるで支流から本流へ流れ込む川のように、活性化している中心点に向かって流れ込んできていた。

それと同時に、普段感じられない、濃密な魔力の波動を感じる。

それだけでも成功しつつある、というのが分かる。

「うぅ……」

「頭……痛い……」

「むっ」

急に背後から、ペイユとアイビーの苦しそうな声が聞こえてきた。

振り向くと、二人がうずくまって、苦しんでる姿が見えた。

「どうした?」

「……ッッ」

「さ、さむい……」

ペイユは喋る余裕もない感じで、アイビーはどうにか「寒い」という言葉を搾り出した。

「寒い?」

「ああああ、熱い……熱いっ!」

一変。

アイビーは転げ回って熱さを訴えた。

どういう事なんだ――。

「はっ! これか」

ハッとして、パッと龍脈に振り向いた。

龍脈から、高濃度な魔力があふれ出している。

これに当てられたのか。

「ジズ、こっちに手を貸せ」

俺はそう言って、龍脈活性にかかっていたジズを引っこ抜いた。

そのジズを使って、光の翼を作った。

俺の背中に現われた、淡い燐光を放つ光の翼。

飛翔の能力があるそれを目一杯広げた。

翼を全開に広げて、燐光の粒子を放ちながら、背中にいる二人をかばう。

すると――

「……あっ」

「熱くない……」

「ご主人様!」

ペイユが感動気味で俺を呼んだ。

状況を見て理解したようだ。

ペイユに一呼吸遅れるようにして。

「すごく綺麗……」

と、こっちは光の翼に見とれていた。

「……はっ! ご、ご主人様。私達いったい……」

「魔力に酔ったのだろう」

「酔った……魔力に?」

「ああ。翼の範囲から出るなよ」

「は、はい」

二人に念押しして、俺は再び龍脈の方に集中する。

「いるだけで苦しかったのに……平然と立っていられるなんて」

「すごい……」

龍脈が活性化するのを、じっと待ち続けたのだった。

数時間後、二人を連れて宿に戻ってきた。

部屋に入って、ここしばらくですっかり足洗いが上手くなったアイビーにそれをやらせつつ、懐からガラスの小瓶を取り出した。

瓶の中には、澄み切った色の液体がゆらゆらとしていた。

「魔力って……水みたいなんですね……」

俺が持っているものを見て、感嘆するペイユ。

「いいや、魔力は本来見えないものだ。どちらかと言えば空気の様なものだ」

「え? でも……」

驚くペイユ、俺の顔と小瓶の液体を交互に見比べる。

「これは魔力を凝縮させたものだ。前にみせたポーションもこれから作られている」

「そ、そうなんですか」

「せっかくだ、いろいろみせてやろう」

俺はそう言って、まず部屋の中央、俺が座っている椅子のセットでもあるテーブルの上にある燭台を手に取った。

燭台のロウソクを取り払って、魔力の雫を一滴――わずか一滴だけたらした。

そして――火をつける。

「わあっ」

「あかるい……」

じっと見つめていたペイユはもちろん、俺の足を洗い、布で拭いていたアイビーも驚いて、手を止めて顔をあげた。

「こんなふうに、火をつけて灯りにする事ができる」

「油みたいなものですね……あれ、すごく長い」

「そうだ、蝋よりも油よりも、こっちの方がずっと明るくて、長持ちする」

「す、すごい……」

「それだけではない――アポピス」

アポピスをよんだ。

杖の形になっているアポピスを呼んで、ようやく燃え尽きた燭台の上に、アポピスの毒をたらす。

そして魔力の雫を更に一滴たらす。

アポピスの毒と魔力の雫が混ざったあと、小枝サイズの棒でかき混ぜた。

やがて、透明だった魔力の雫から細い糸のようなものができた。

円を描くようにかき混ぜつつ、その糸をすくい上げる。

それをペイユと、完全に手が止まっているアイビーに見せた。

「こんなものも作れる」

「これは……?」

「一種の糸だ。通常の糸と違って燃えにくいし、水も通さない」

「はあ……」

「つまり燃えないし、雨の時濡れないような服を作ることができるわけだ」

今ひとつ理解してなさそうな二人に、糸の 先(、) を説明してやった。

「す、すごい!」

「そんなものが作れるの……?」

驚き、驚嘆する二人。

「他にも様々な用途があるが。どれもまだ模索している段階だ。当面はポーションを作るために使うことが多いだろう」

「模索……って、ご主人様が研究しているのですか?」

「そうだ」

「わあ、さすがご主人様研究も自分でするんですね」

「学者とかじゃないんだ……」

二人によいしょされつつ、俺は持っている魔力の雫を改めて見つめた。

龍脈の活性化が上手くいって、魔力の雫の凝縮に成功した。

ペイユとアイビーがそれに当てられたことからも、サラルリアの龍脈が産み出す魔力がアルメリアのそれよりも高濃度・高純度だという事がわかった。

純度が高ければ高いほどいいのが、この魔力の雫だ。

お試しの抽出が成功したのだ、次は量産体制の事を考えねばな。

そのためには相当の投資がいるだろう。

さて国庫は……足りるか?

最悪、 徴用(、、) してでもこっちを優先――。

『主よ、緊急事態が起きた』

「リヴァイアサン? なんだ、緊急事態というのは」

俺は眉をひそめて、リヴァイアサンに聞き返した。

リヴァイアサンがこんなことを言ってくるなんて珍しい。

『龍脈が弾けた』

「なにっ!?」

掛け値無しの緊急事態に思わず立ち上がってしまった。

俺の足を洗っていたアイビーに水がかかったが、それどころではなかった。

女二人を置いて、俺は活性化に成功したはずのところに戻ってきた。

満月が地平線に沈んでいく中俺がみたのは、あっちこっち途切れていて、断末魔の様な光を漏らしている龍脈の姿だった。

「どういうことだリヴァイアサン」

『推論でよろしいか』

「話せ」

『御意……この土地の龍脈は長年寸断され、魔力が通っていなかった』

「ああ」

『そこに主がつなげ直した。しかし、長年魔力が通っていなかったため、龍脈そのものはすでに劣化していた』

「……家屋に人が住んでいなければ加速度的に劣化する、それと同じか」

『本質は同じだ』

「ふむ……」

俺は頷いた。

「つまり、ボロボロの管を繋ぎ直したはいいが、管はすでに流れに耐えられなくなっていた、ということだな」

『ご明察、さすが我が主』

「アルメリアの時は大丈夫だったぞ……ああいや。ここの方が魔力の純度も、なんなら勢いも上だったな」

『……』

リヴァイアサンは答えなかったが、無言の気配から同意と感心の感情が伝わってきた。

いわばヒントを与えられている状態だ。ならばアルメリアと違って何故そうなったのかも推察が付こうという物だ。

「原因は分かった。ではどうすればいい? 繋ぎ直すことは可能なのか?」

『人柱――生け贄がいる』

「そうか」

俺は少し考えた。

「生け贄になる人間に何かしらの条件はあるのか?」

『贄になる瞬間が健康体であること、それだけだ』

「なら死刑囚を使おう。連座制で家族もろとも処刑されるヤツがいたはずだ。家族の助命と引き換えにすれば命をさしだしてくれるだろう」

『さすが我が主。皇帝に相応しい決断、お見事でございます』

「他に注意事項は」

『不浄なるものがあってはならない。贄にする三日前から清めて、食も断たせる。それから――』

リヴァイアサンからいろいろ説明を受けたが、その先はすべて些末な事だった。

生け贄か……。

なんとも思っていない――と言うことは無いが。

それでも龍脈の活性化、魔力の雫。

それを量産した暁の帝国の発展を思えば。

例えそれが罪業であろうと、皇帝としては背負う以外の選択肢はないと、俺は思ったのだった。