軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過去に遡って

数日後、ギルドマスターに呼び出された。

ソファに座ると、さっと紅茶が配られる。

ギルド職員は給仕を終えると、入り口の方に下がった。

一見無駄に見えるけれど、不正防止や話し合いを記録に残すといった役割があるんだろうな。

ギルドマスターが一口飲んでから話し出した。

「この間はご苦労さん。

おかげで、エレッサ支部のギルドマスターを逮捕できた。

レスタール王国には、冒険者ギルド本部からトーマへの接近禁止を勧告した。

強制力は無いが、次に何かしたら冒険者ギルドを敵に回すぞって釘も刺しといた。

しばらくは身辺に気をつけながら、冒険者活動を再開してくれていいぞ」

それを聞いて、ホッとした。

ホテルの居心地はいいが、このままでは感覚が鈍りそうでうずうずしていた。早く、冒険者らしい生活に戻りたい。

「いい見世物になってたから、しばらくは酒場で肴にされそうだ」

ルナは苦笑したが、それでも嬉しそうだ。訓練だけじゃ足りないよな。

「正直、ありがたいよ。

国が絡んできてるから、もみ消されないように対策する必要がある。

あの通りは、中堅どころの冒険者がうろついている。国際的に手広く商いをやっている商人もいた。

上流階級がいる通りだったら、早々に静かにしろと言われただろう。だが、あそこなら程々に野次馬が集まっても大丈夫。おあつらえ向きのホテルだぜ」

サァラとフォンが目を合わせて、ふふっと笑い合う。

「新聞記者もいたから、世論を味方につけられるといいな。

下位の貴族も聞いていたらしいぞ。寄親や派閥に情報を流してくれることを期待しよう。

冒険者ギルドが大きな組織だと言っても、国を相手取るのは簡単じゃねぇ。

他の国や神殿の応援を取り付けられたら、逆にこっちが叩かれるしな」

なるほど。言われてみれば、そうだよなぁ。

厄介ごとをこの国に持ち込んでしまったようだ。

そんな俺の気持ちに気付いたのか、ギルドマスターは豪快に笑い飛ばした。

「トーマと『花猫風月』のおかげで、一つの支部の腐敗が明らかになったからな。

立て直しのいい機会だ」

それならいいか。他の冒険者たちのためにもなるなら……。

「そのことなんですけど、トーマが三、四年前のワイバーン討伐でちょっと気になることを言っていて……」

フォンが言葉を挟んだ。

「そりゃまた、懐かしい話を。なんだ?」

「討伐で出た怪我人を、アーデンの私費で村に帰したそうなんです」

「剛剣のアーデンか。ギルドから先は、自分たちでなんとかすべきだろ?」

ギルドマスターは何を言っているんだと、片方だけ眉を上げた。

俺も、フォンが何を言いたいのかわからない。

「いいえ、その前の話です。

討伐現場からギルドまでは、搬送する義務がありますでしょう」

「当然だろ。ま、息のある奴だけになっちまうがな。

通常の依頼とは違って、死傷者が続出するのが前提の招集だ。回復の見込みがある奴は、出した支部が責任持って……おい、なんだ? まさか――」

ギルドマスターは俺の顔色を見て、嫌な考えが頭をよぎったのだろう。

俺は、あまりのことに、頭の血管がガンガン騒ぎだすのを感じていた。

指先が震えて、紅茶がズボンに染みを作る。太ももに生ぬるい、嫌な感触が落ちる。

腐敗したギルドが義務を果たさず、助けるべき冒険者を見殺しにしていた?