軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お疲れ休み

うあ、目が回る。頭がガンガンする。

しまった。二日酔いだ。

ぱ、パンツは履いてるぞ。

……昨日、何かありましたかね?

「起きたのね。これ、飲んで」

フォンが蜜柑の果実水をくれた。平衡感覚が怪しいのを察知して、背中と俺の手を支えてくれる。

うお~、体に染みわたるぅ。

だが、天井は回ったままだ。飲み終わって、すぐ枕にぽすりと逆戻りした。

「数日は周囲が騒がしいでしょうから、ここに連泊することにしました。ゆっくり休んでいいのよ」

頭をなでられ、幸せを噛みしめながら眠りについた。

カチャカチャと食器の音がして、いい匂いが鼻をくすぐる。

次に目を開けたときは、昼時だった。

胃が荒れて重たい感じと、ものすごい空腹。

「腹減った」

喉がざらついて、掠れた声になる。

「おはよ? その顔だと、スープで暖まった方が良さそうだな。

フォン、冷風でスープをさませるか?」

「熱々より、少し温かめって感じでいいかしら?」

そんな至れり尽くせりの状態に、目頭が熱くなった。

フォンが魔法を使っている間に、ルナとサァラがトレーに食べ物を載せて、ベッドの上に運んできた。

ここで俺を囲んで食べる気か。ピクニックみたいだな。

フォンはスープを俺に渡してから、ガウンを持ってきてくれた。それを急いで身にまとう。

ルナとサァラは、午前中に冒険者ギルドの訓練場で体を動かしてきたそうだ。

「昨日は舌戦?で、あたい全然運動してないからさ」

サァラが尻尾をぱたぱたとベッドに叩きつける。

フォンが「スープがこぼれちゃうわ」と注意し、サァラがぺろりと舌を出して謝った。

なんとも、心が和む光景だな。

「野次馬の中の気配を探ってたから、神経は疲れてるんじゃないか?」

「まあね。そういう時は体を動かすといいんにゃ」

サァラは腕をあげて、力こぶを見せた。

要はバランスよく、ということだろうか。

前のパーティーのヴェリーだったら、恩着せがましく「疲れたんですけどぉ」と言うに違いない。

「あ、奴らはもう王都に向かったんですか?」

冒険者ギルドの牢屋では、一晩預かるだけだと言っていた。

「夜明けと共に出たって。

王都に行くまで通る領地で、レスタール王国から圧力をかけられて容疑者を引き渡されたら困るだろ?

あっちが自分たちの計画が失敗したと気付く前に動かないと」

「賄賂に弱い領主の情報を把握されてたら、危険だわ」

ルナとフォンが心配している。

「でも、あっち側の情報収集能力は大したことなさそうですけどね」

どんな状態でも最大の警戒をすべきだが、相手のレベルが低すぎる。こちらの油断を誘っているわけでもなさそうだし。

「どうしてそう思うのかしら?」

フォンが興味深げに訊いてくる。

俺はスプーンを置いた。

「俺を陥落させるための手紙なら、村長の息子のエドガーさんか、最初に仕事を教えてくれた村の宿のじっちゃんとばっちゃんじゃないと。

それか、ハロルの街の山猫亭の人たち――」

「家族が一番だと思い込んで、人間関係を調べなかったってことかにゃ」

「だろうね。

それにエレッサの街から連れてくるなら、画家見習いのメグだろう」

「昨日も言ってたねん。なに? エレッサでの彼女?」

サァラが唇を尖らせる。拗ねたフリをしているだけで、本気ではなさそうだ。

「あはは。いや、境遇が似てたから、励まし合ってた仲間だよ。

俺は冒険者になりたいのに、ホテルの厨房で働いていた。

彼女は絵の工房に入れなくて、冒険者をやってた。絵の工房には貴族も出入りするから、門前払いを食らったらしい」

懐かしい。そして、二人とも自分の夢を掴んだ。

だから、なんとなく特別な仲間意識があるんだよな。

「俺が、横領した職員と食事に行ったのは、ワイバーン討伐の後だけ。

メグとはワイバーン討伐の最中だけじゃなくて、アーデンさんがホテルに泊まったときも一緒に仕事したんだ。

ちょっと調べれば、どっちの方が俺と親しいかなんてすぐわかる。調べる気すらないんだよ。

たとえば下調べしない冒険者なんか、三流だろ?」

下準備を馬鹿にする奴が「時と場合によっては、やる」なんて可能性は、低いと思う。

「あれ、なに? アーデンの関係者?」

ルナが目をぱちくりさせた。

「うん、同じ村出身」

「そっか。あたしたちも討伐に出ててさ。ワイバーンの翼の片方を切り落としたの、アーデンだったんだぜ。あれで、形勢が逆転したんだ」

ルナは身を乗り出して、熱く語りだした。

他の冒険者たちにも認められて、感謝されているなんて、誇らしい。

何年経っても、共に戦った人たちの中で、アーデンの偉業は色あせていなかった。

「とても、勇敢な方でしたね。今はどちらに?」

「村に帰って、所帯を持ってます。自警団を強化して、子どもたちに戦い方を教えて――」

と、エドガーから聞いている。

「それはよかったにゃ~」

にこにこと、サァラが喜んでくれている。

数日一緒に戦っただけのこの人たちが褒め称えてくれるのに、クランで世話になったガルドとブルーノがアーデンの顔に泥を塗りまくっているのはなんでだ?

情けない、やるせない。

……これ以上は、今の俺にはきつい。

二日酔いで頭がシャキッとしてないし、頭痛もぶり返してきた。

「また、今度、聞かせてください」

そう言って、俺は昼寝に逃げた。