作品タイトル不明
モンスター
「ん。岩モグラの気配がします」
オンが夕食後、談話室でそう言った。
「どっち方面かわかるか? 今いるクランハウスはここだ」
俺は壁に貼ってある地図まで歩いて行き、指差した。オンはその後ろをついてきて、山脈をなぞった。
「この一帯ですね」
あっという間に人だかりができた。
「岩モグラの討伐ランクって、いくつだ?」
「Aランクでしょ。爪が凶暴だし、すぐに地下に潜られるから土の魔法使いが必要だし」
「この国で出るのは珍しくないか?」
身近にいないモンスターなのに、皆よく知っているなと感心する。このクランは意識が高い人が多いよな。
「この山脈、レスタール王国と獣人国にかかってるじゃん」
「獣人国から逃げてこっちに来ようとしてるってこと?」
その場合、さらに高ランクのモンスターが背後にいるかもしれない。
「妖精族の動物使いの支配下にいますね。このクランがターゲットの可能性を感じます」
オンは口調を変えずに、そう言った。
そ、それは一大事だぞ?
狙いはフォンか?
「バスラさんに報告しないと!」
そう言って、一人の冒険者が談話室を飛び出していった。
「岩モグラはそんなに早く動けませんけど」
もう見えなくなった男に向けるように、オンは入り口を見ながらのんびりと呟いた。
走って出ていった男が戻ってきて、数人を呼び出した。急遽会議を開くという。
もちろんオンが指名され、アーデンと数人のAランク冒険者。そして、なぜか俺も呼ばれた。
ルナが微かに眉をひそめている。心配しないでというつもりで肩を叩いたが、あまり効果はなかったかもしれない。
「あの、フォンがターゲットなら、同じパーティーのメンバーとしてルナとサァラも出席できませんか?」
緊迫した雰囲気を乱すように、俺は声を上げた。
「……それも、そうね。たぶん、いいと思うわ」
Aランクの冒険者がそう言って、サァラに手を差し出した。心細そうに眉を寄せていたサァラが手を乗せる。
手を繋いで行くのかと思いきや、ぐいっと引っ張って、サァラを横抱きにした。
「ぎにゃー、何するんにゃ!」
サァラが怒る。
「ふわふわ、もふもふ。会議室まで運んであげるから」
サァラに頬ずりしそうな勢いだ。
ルナが冒険者の後ろに回り、膝裏を軽く蹴る。カクンと体勢を崩したところ、俺がサァラの腕を引っ張って、奪還する。
膝をついたAランク冒険者に、ルナが冷たい視線を向けた。
「女性同士でも同意がない濃厚接触は許されませんよ」
「やだ、ちょっとした冗談なのに」
そう言い訳する女性に向けて、サァラが断言した。
「あたいはアンタなんか大嫌いにゃ」
「そ、そんなぁ」
と手を伸ばす冒険者を無視して、俺たちは会議室に急いだ。
アーデンがぼそっと呟いた。
「高ランク冒険者は頭のネジが飛んでいる奴が多いからな」
――これから、高ランク冒険者たちを集めた会議ですよね?