軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

職人たちの遊び

次の日、オンは風の魔法使いと冒険者ギルドの訓練場に行った。

入れ物は昨日使わなかった一つだけ。どうやって訓練するかは、お任せにした。そこまで俺が考えてしまうと、本当に専属になってしまいそうだったので。

ルナはクラン内で剣士を臨時募集していたので、そちらに参加する。

俺とサァラは、壊れた入れ物を三つ持って、職人街へ赴いた。

新しい入れ物を取りあえず十個くらい注文したい。壊された現物があれば、改善点も見つけやすいと思うのだ。

「ほうほう。兄ちゃん、気が効いてるな。使用後の状態を見るってぇのは、すごくいい」

職人がご機嫌になる。

一つ一つ、どんな魔法をつかったか解説していく。

「これは風魔法で、槍のように尖らせた攻撃がこの穴。平べったい攻撃で、ここを切断した」

俺は鋭い断面で手を切らないよう、気をつけながら指差していく。

「こっちは火の魔法だにゃ。攻撃した後に、ブレスレットに火を引き戻して収納してた!」

サァラが興奮気味に説明する。

「うん? 火を収納するブレスレットだ? とんでもねぇ特注品だろ」

「そういえば、お高いって言っていたな」

「魔力の質も解析しなきゃいけないからな。

もしかしたら、角のじいさんの作品かもしれん。おい、ひとっ走り行って、じいさんの手が空いてたら呼んでこい」

職人は弟子にそう声をかけた。

「がってんだ」

と元気に返事をして、弟子は工房を出て行った。

水魔法の攻撃を説明している間に、頑固そうな老人を連れて弟子が戻ってきた。

火魔法の攻撃跡を様々な角度から観察する。

「かなり高温で焼いたな」

「Aランクの冒険者ですから」

言わなくてもいいかもしれないが、ただ黙ってみているのも居心地が悪い。

「この威力の火を収納できたわけじゃな?」

その老人は満足そうに、少しだけ口角を上げた。

気がついたら、近所の職人まで集まってきていた。

魔族が魔法のコントロールを身につけるための訓練用のものだと説明する。本人は気をつけたつもりでも、沼を一瞬で干上がらせてしまうということも伝えた。

「Aランクに合わせるのは大変だろう。Sランクの魔力に合わせたら駄目なのか?」

「駄目ということはないですけど、それだと見本を見せてくれる魔法使いが見つからないので……」

「兄ちゃん、物作りは目的がブレたらいかん。

今回は、見本を見せるためにAランク仕様にした。

魔族は周囲に被害を出ないように魔力をコントロールできるようになるのが目標。つまり、Sランク仕様でも構わない。

そうだろ?」

近所の職人が入れ物をぺちぺち叩きながら、そうまとめた。

「それなら、硬度を上げた方がいいな」

「重さはどれくらいまで許容範囲だ?」

「あ、クランハウスから冒険者ギルドまで運べるくらいで」

「サイズも大きくして構わんのじゃないか? あんまり難易度が高いとやる気が失せるぞ」

わいわいと職人たちが相談を始めた。

確かに、やってもやってもゴールが見えないと諦めたくなる。俺たちはモンスターと戦って生き延びなければならないが、オンにはそんな切実な目的はない。

「おい、お前のところの弟子が、使えない杖を作ってたよな」

「ああ、魔力効率がすげぇ悪いやつな。使わない方がましってくらい、魔力喰いの欠陥品」

「魔族があれを使ったらどうだ?」

「……爆発しないかって、心配はあるけどな」

「今、訓練場にいるにゃ」

そうサァラが言うと、さっそく行くかという話になった。

サァラに彼らを訓練場まで案内してもらい、俺は注文の打ち合わせの続きをすることにした。

「ちょっと、サァラさん、どこに行くんですか」と声が聞こえた。あ、やべ。俺についた護衛が一人なのは、サァラがいたからか。

つい、うっかりしてしまった。まあ、いいか。

気を取り直して、打ち合わせを再開する。

使用後の入れ物を工房に戻すなら、その分割引してくれるという。

「魔法を分析するのに、いいサンプルになるからな」

と、この工房の職員が言う。

「どんどん性能を上げていってやろうぜ」

近所の職人たちが燃えている。採算度外視にはしないだろうが、趣味の領域に入っていないか……そんな疑問が湧いた。