軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一人目の魔法使い

俺たちが冒険者ギルドに入っていくと、一斉に視線が注がれた。

英雄バスラとアーデンが並び、ワイバーン討伐参加者なら知っているオンが揃っているのだ。何事かと思うだろう。

ギルド職員たちは事前に訓練場を使いたいと連絡を入れているので、驚いた顔はしていない。だが、何をするのかと好奇心を刺激されているようだ。

訓練場は簡単に仕切られている。物理攻撃に強い区画や魔法攻撃に特化した区画、障害物を配置しているところもある。今日は当然、魔法特化の区域だ。

ルナとサァラに持ってきてもらった袋を受け取る。人の頭くらいの大きさをしている入れ物が、二つ入った袋。合計四つの入れ物を用意した。

「ルナ、これありがとな」

小声で、ぬいぐるみの入った袋を手渡す。

「この可愛さには、魔族も逆らえない」

ルナはくくっと自慢げに笑った。

俺は入れ物を一つ手に取って、攻撃する物を固定する台に置いた。

「協力してくれるAランクの魔法使いの方々、前へどうぞ」

三人の魔法使いが前に出る。人族、ドワーフ、エルフと、いかにも冒険者らしい絵面だ。

「中に入っている紙を破損しないように、この入れ物を壊してください。その際、魔法をどう使っているか口に出して実況してほしいのですが、可能ですか?」

「なんのために、そんなことを?」

ドワーフが片方の眉を上げた。

「オンが魔法を制御するヒントになるかもしれないので。ただ闇雲に『制御しろ』と言われても、『具体的にどうすれば?』というところで躓いてしまいます」

実際、問題はそこなのだ。

三人は俺の発言を受けて、納得してくれたように見える。

ただ、「修業時代ならともかく、最近は意識しないで使ってるからなぁ」と風の魔法使いがぼやいていた。

「では、まず風の魔法からお願いします」

そう声をかけたら、「俺からかよ」と苦笑いされた。デッドフロッグ討伐で世話になって、気軽に話せる関係になった。三人の中で一番話しかけやすい。

「なんか、見学者が増えてるぞ」

風の魔法使いが苦情というほど強くはないが、小声で言ってくる。

「……名前を売るチャンスでは?」

ここで降りると言われても困るので、焚きつけた。

「お前、結構攻撃的だな。面白い」

そう言うとオンの方を向き、自分の腰のベルトを指さした。ナイフの他に棒が三本。

「ここに下げているのは、杖です。使わなくても魔法は出せますが、細かい制御をするのに便利です」

オンが目を輝かせる。

「近くで見てもいいですか?」

「どうぞ。でも、触らないでくださいね」

風の魔法使いは釘を刺した。杖を壊されたら大変だからな。

「まず、この細い物は出力を最小にしたいときに使います。ただ、注ぐ魔力を予め絞らないと、すぐに弾け飛ぶので、あくまで補助ですね。

このネジネジになっている杖は、竜巻を起こしたいとき。

この平べったいヘラは、大きな岩などを切断したいときに使っています」

オンは、うなずきながら聞いている。

風の魔法使いは少し照れくさそうにしてから、入れ物に向き合った。足を開き、細い杖を構えた。

「まず、体を巡っている魔力を額に集めます。その一部を腕に移し、指先から杖に流して……」

言葉を切って、詠唱を始めた。杖の先の空気が動いた気がする。

「貫通!」

その言葉と共に、強い力が入れ物に襲いかかった。

果たして、攻撃は効くのか。

ガツンと大きな音がして、入れ物がへこんだ。

「おお」と、どよめきが上がった。だが、これでは魔法の威力が充分なのか、入れ物が強すぎたのか判断がつかない。

「もっと強くてもいいのかな」

風の魔法使いは周囲の反応を気にせず、実験を楽しみ始めた。

「さっきの倍の力で行くぞ」

今度は、小さな穴が空いた。

「それならヘラで行くか」

鋭い刃が放たれた。期待に息を呑む観衆。

だが、風の刃は狙いを外し、上空へ抜けていった。

「ありゃ。これ、横からの風の影響を受けやすいんだよ」

軽く言い、もう一度挑戦する。

スパッと音がして、入れ物の一片が切れ、転がり落ちた。

「うおおお!」と歓声が上がり、拍手が起きた。

風の魔法使いは余裕の表情で入れ物に歩み寄り、中から紙を取り出した。

「お見事です!」

俺も惜しみない拍手を送った。