作品タイトル不明
討伐の続き
休憩も兼ねて、エドガーたちのところまで退避した。
俺は革袋から、ぐびぐびと水を飲む。沼からの異臭が鼻について、水もまずく感じる。
フォンがいたら風魔法ですっきりさせて……いや、討伐中は魔力の無駄遣いをしないか。
ビタンと音がして、アーデンがデッドフロッグの舌を地面に投げ出した。
「おら。討伐証明の部位を忘れてんぞ」
「あ、すみません」
エドガーが槍で舌を突き刺し、ルナが開いた袋に押し込んだ。「うわ、ぶにゅって感触、鳥肌立つ」と、冒険者ではないエドガーが呟く。
アーデンは岩の上にどかりと座り込んだ。
「どうしたよ。まずは一匹倒したのに、しけた顔してんな」
「倒せたんですけど、もっといい方法があるような気がするんです」
「冒険者活動のブランクが半年もあるだろう。いきなり本調子には戻れないぞ」
「あ……」
「デッドフロッグはCランクなら四、五人で討伐するモンスターなんだ。三人と助っ人の俺という編成なら、ちょっとキツいくらい当たり前だろ。
序盤に舌を斬って攻撃力を削るのは、いい作戦だと思うぞ」
そうか、以前と人数が違う。
盾役ブルーノの巨体から出る拳と、小柄なサァラの格闘術。
ガルドの剣よりも短い、ルナの半月刀。それに、あのときはガルドに槍を使わせた。
ヴェリーの火魔法を中心に構成したんだった。
モンスターと攻撃力の組み合わせは、メンバーによって変わる。
立て直せ。気持ちを入れ替えて、今のメンバーに合った作戦にするんだ。
俺は自分の頬をパチンと手叩き、気合いを入れた。
「なぁに? あたいたちを誰と比べてんの?」
サァラがむくれる。
「あの……あたしも出番がほしいのですが」
堅焼きのビスケットを食べ終わったオンが、そろりと手を挙げた。
そうだよな。見てるだけじゃ退屈だ。休憩を切り上げよう。
「火力を確認したいから、討伐したデッドフロッグを焼却してもらえるかな」
舌以外に必要な部位はない。
「了解です」
オンは満面の笑みで、とことことデッドフロッグに近づいた。
「周りに延焼しないよう、最小限で……」
「先に水を撒いておくといいかも」
サァラがアドバイスをする。
「なるほどですね」
オンは嬉しそうに、サァラにお礼を言った。
巨大な水柱が立った。
「え?」
「はぁ?」
「ちょっ」
水柱の中にデッドフロッグとオンがいる。中は空洞らしい。
「それでは」
オンは静かに開始を告げる。
ゴオオと水柱の中に火柱が立った。
沼地の周囲はうっそうとした森が広がっている。
オンが森に入ってから、逃げていく魔物の気配や鳴き声はあった。
だが、今、絶叫を上げて遠ざかっていくのは……姿は見えないが、おそらく大型のモンスターだ。
「魔法の、同時、二重がけ……初めて見た」
俺の口から、そんな間抜けな言葉が出た。
「あ、しまった」
オンがそう呟くと同時に、その柱が沼の方に傾いた。
バシャンと水しぶきを上げ、臭い沼の水が跳ね上がった。
続いて、ジュッという音と熱い蒸気の爆風。
肌を焼くような熱さ。喉と肺がやられる。目を開けていられず、ぎゅっと目を瞑る。
「あ、あ、ごめんなさい!ごめんなさい」
オンが魔法を消して、こちらに駆けてくる足音が聞こえる。
顔を覆っていた腕を下ろし、そっと目を開けると……。
その背後、沼だったところはすっかり干上がり、水生のモンスターがビチビチと跳ねている。
デッドフロッグのような両生類も、体表が乾燥して苦しそうだ。
「急いでデッドフロッグ四体を確保! その後、オンは水を出して沼を満たせ」
アーデンが指示を出した。
「あわわわわ、了解です」
おろおろとした気が弱そうに見える表情と、オンがやっていることが、脳内で一致しない。
混乱する頭を、現実に切り替える。考えるのは、やることをやってからだ。
早く水に戻さないと、沼ごと虐殺したことになって生態系が崩れる。
槍で突き刺して運ぶか、縄をかけて陸まで引きずってくるか――そんな相談をしていたら、突風が吹いた。
「あ、カエルさん七匹になってしまいました。でも、セーフじゃないでしょうか」
振り返ると、オンがデッドフロッグの小山の前に立っていた。
「あの、風魔法で集めました」
小山の中にカニっぽい甲羅とか、他の水生モンスターも混じっている気がするが……。
「俺たちがトドメを刺すから、オンは水を張りな」
アーデンがオンにそう言って、各々自分の役割を果たすことになった。
気のせいだと思いたいが、アーデンの手が震えていた。