作品タイトル不明
討伐の準備
夕食の場に、クランの事務担当が来た。
「伝書鳥の教会から苦情が来ました。今日の午後、怯えて飛べなくなって仕事にならなかったと。
明日の討伐では慰謝料を支払えるくらい、たくさん討伐してきてくださいね」
こめかみに青筋が見えた。
「それは、オンに言ってください」
俺は苦情窓口じゃないし、オンの担当でもない。パーティーを組んでるわけでもないんだ。
「……期待しています。よろしく」
事務担当はそそくさと食堂を出て行った。
「昼間になにがあったんだ?」
ルナにそう訊かれて、オンが風魔法を使ったときのことを話した。
「そんな威力があったら、Cランクの討伐は逆に難しくないか?」
ルナにずばりと言われた。
「そうなんだよなぁ。食事が終わったら、また作戦を考えるよ」
頭が痛くなりそうだ。
「考えてたから、食堂に来るのが遅かったん?」
サァラはスープを飲み込んだ。
「うん。規格外で、今までの経験が役に立たない。
あ、職人街に行ってくれてありがとな」
「いろいろ面白いのがあったかも。魔導具がお手頃価格だったにゃ」
「そうなのか? じゃあ今度、みんなで行こう」
楽しい提案をした直後に、オンの爆風が頭をよぎる。
「――その前に、明日の討伐だよなぁ」
パンをちぎって口に放り込んだ。
「どんな作戦か、楽しみにしてる」
「ええー、一緒に考えてくれないのか?」
つい、からかってしまった。頭脳労働が苦手なルナに頼られるのが、嬉しい。
こんな、冒険者らしいやりとりも久しぶりだ。
「だって、ほら、あたしは三日月ちゃんの表面に、ザラザラになる粉をつけないといけないじゃない?」
「あたいは長い棘のグローブに慣れておかないとにゃ~」
二人は目を逸らして、逃げようとする。
「あははは、わかってるって」
なんだか胸が温かくなる。得意なことを寄せ集めて、俺たちは一つのパーティーを作っているんだ。
きっと、俺たちにぴったりのいい案が浮かんでくるに違いない。
翌朝、俺たち三人はフォンの繭に出かける挨拶をした。
「フォン。デッドフロッグの討伐に行ってくるよ」
ルナが繭をそっと触る。
「ボコボコにしてくるにゃ」
サァラは抱きついた。
「帰ってきたら、報告にくるよ。かなり、不安なんだけど……」
俺は手の甲で、コツンと繭を叩いた。
俺たち三人とアーデン、オン、それに見学者としてエドガーがクランの玄関に集合した。
冒険者ではないエドガーは、出発前に、何があっても自己責任という書類に署名させられていた。
「しっかりしたクランだなぁ」と、アーデンが苦笑いする。アーデンのクランは、かなりいい加減な運営をしていたみたいだからな……。
そして、クランからAランク冒険者を押しつけられた。
依頼には手を出さず、護衛に徹するそうだ。きっと監視も仕事に含まれているんだろうな。
そして、討伐がどうなったかというと――
沼が蒸発した!