作品タイトル不明
得体の知れない同行者
声をかけてきたのは、フードを被った魔法使いらしき人物だ。
「あれ、あんたは……」
どうやらアーデンとは知り合いみたいだ。
「ワイバーン討伐のときは、お世話になりました」
魔法使いの女性はウィンクをした。
……女性? だよな。一人称が「あたし」だし。中性的な雰囲気で、華奢な男性と言われても納得できる。
「あ、ああ……こっちこそ世話になった」
アーデンが口ごもる。
「あんた、ランクは?」
「あはは、Aのままです。魔力のコントロールを覚えないとSに上げないって言われました」
「覚える気もないのか。――危険すぎる」
なにやら物騒な会話だな。
「そちらのトーマ君は、能力に合わせて作戦を立ててくれると聞きました。ぜひ、ノーコンのあたしを使ってやってください」
「ノーコンってなんですか?」
濃紺? 濃厚? 文脈的に違うよな。
「えっとね、コントロールが下手ってことです。……若い子には通じないのですか」
しょんぼりとうなだれてしまった。若く見えるけれど、結構年上なのかな。種族によって平均寿命が違うから、長生きしているのかもしれない。
「俺、隣国の出身だから知らないだけかも、です」
「ありがとう。優しいですね。では、冒険者ギルドに行きましょうか」
は? そういう流れだったか?
いつの間に同行するって決まったんだ? みんな「仕方ないなぁ」みたいに立ち上がる。気が付けば、エドガーもアーデンも朝食を終えていた。
驚いているのは俺だけか。ついて行けてない、寂しさをほんの少し感じた。
俺は護衛対象ということで、外出するときは受付に言付けないといけない。受付の人はアーデンと魔法使いをチラリと見て「いってらっしゃい」と言った。
この人は何者なんだ? そういえば、まだ名前も聞いていないぞ。
「あの、お名前をお訊きしてもいいですか?」
歩きながら質問する。
初対面の挨拶をしていないが、こちらのことは知っているようだから省略だ。
「え、名前……名前かぁ」
という意外な反応が返ってきた。ええ、俺の方がおかしいのか? 不安になって見回すと、ルナもサァラもうつむき加減で顔色が悪い。
ルナが俺の袖を引いた。
「呼びかけるときは、『あなた』とかでいいんじゃないかな」
ぼそぼそと聞き取りにくいしゃべり方だ。何があるんだ?
「……わかった」
これ以上訊かない。
「ん~、では、『オン』というのはどうでしょうか?」
魔法使いが俺を見て言った。
どうでしょうか? 自分の名前を、今? そんな適当なノリで?
「どう、と言われても……なんと答えれば?」
戸惑ってばかりなんだが――
「それもそうですね。改めまして『オン』と呼んでください」
「了解です?」
「ふふふ。疑問形ですね」
彼女の目が三日月のように細くなった。
「冒険者タグには何と書いてあるんですか?」
ランクの話をしていたんだから、冒険者登録をしているはず。名前は必須事項だ。
「えっとですね」
胸元からタグをたぐり寄せて、確認している。
「『名前を言ってはいけない』と書いてあります」
……そんなことある?