作品タイトル不明
久しぶりに冒険したい
クランという新しい環境に、戸惑うことは多かった。
集団生活なので決まった時間内に食堂へ行き、事務職がいて「○○は、やりましたか?」と教えてくれたりする。人間関係の煩わしさと組織の便利さ、両方がある。
「久しぶりに依頼を受けたいな」
朝食の場で、思い切って言ってみた。
つい先日まで、フォンの繭の側で魔法使いが変なことをしないか、あるいは妖精族に繭ごと誘拐されないか見張っていた。
だけど、段々そこまで警戒しなくてもいいかと思えるようになってきた。
魔法使いたちは「後は時間が解決するでしょう」と言って、通ってこなくなった。クランの建物は入り口で不審をチェックしているし、使用人たちもおかしな動きはしていない。
その一方で、クランには毎月会費を収めないといけない。建物の維持費や使用人の給料は、そこから出る。つまり、稼がないといけない。
「そうだにゃ。このままだと体がなまっちゃう」
サァラが目をキラリと輝かせた。
「うん。じゃあ、今日は冒険者ギルドに依頼の掲示板を見に行こうか」
ルナはそう言って、目玉焼きをパンに載せた。
そこにすっと近寄ってくる人がいた。年配の魔法使いで、フォンの繭の調査に協力してくれていた妖精族だ。
「よければ私が同行しよう」
「え、なんで?」
サァラが疑問をぶつけた。久しぶりにパーティーメンバーで依頼を受けるのに、水を差されてムッとしているようだ。
「トーマ君の護衛のために、誰かが付いていく必要がある。
フォンさんが不在で魔法使いがいないのだから、私は適任だと思うがね」
言っていることはもっともだが、逃がさないという圧を感じる。これが嫌なんだよな。
ルナを見ると腕を組んで考えていた。
「……それはクランの総意?」
少し圧のある声で、魔法使いに問いかける。
「半分はそうだな。君たちが三人で行動するなら護衛を付けるのは、総意だ。誰がつくかまでは決まっていないから、今、立候補している」
魔法使いは、椅子を引いてテーブルについた。
こんなふうに保護対象と言われると、一人前として扱われていないと思い知らされる。
俺たちは顔を見合わせた。なんとなく気が乗らない。なんでだろう?
フォンの穴埋めを妖精族がする――そこに引っかかりを覚えた。まるで後釜を狙っているみたいじゃないか。
「それだったら、うちの合同討伐に参加しない? 盗賊のスキル持ちがいるから、狙われたらすぐに気がつく。返り討ちできるよ」
別の冒険者が会話に混ざってきた。討伐対象の情報や参加するメンバーのアピールを、一気にまくし立てられる。残念だけど、耳を滑って頭に入ってこない。
「それなら、護衛任務に慣れている俺たちの方がいいんじゃないか?」
新たな参戦者が現れた。
「護衛で王都を出たら、何日かかるのさ。問題外でしょ」
「だから、護衛をするなんて一言も言ってないだろ。近郊の依頼だって、王都の外壁の外だろうがよ」
と、言い争いが始まった。
ええ~、依頼を受けたいって話しただけなのに、面倒くさいことになったぞ。