軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見知らぬ人に怒鳴られる

精神的に疲れて、会議室を出た。

途中から酸欠になったように頭が回らなくなっていた。

午後から始まった会議は、休憩を挟んで夕方まで続いたのだ。

エリオットは一緒に出口に向かいながら、「明日、迎賓館に顔を出す」と言った。

商業ギルドのぬいぐるみの話の進捗確認かな。

あっちもフォンも、どうなったか気になる。

俺は迎賓館に帰るため、迎えの馬車を待つことになった。

広いから、ささっと徒歩で気楽に帰ることもできない。

俺の馬車が来るまで、エリオットはつきあってくれるという。

「平民に嫌味を言う貴族もいるから、私が護衛をしてあげよう」

「ええ? トゥランさんに俺が怒られます。やめてくださいよ」

そういえば、トゥランはどこだろう? さっきまで後ろを歩いていたのに……迷子か?

「ああいう会議は初めてだろう。どうだった?」

エリオットに声をかけられて、思考が引き戻された。

「話が広がりすぎて、ついていけませんでした。

それぞれの組織の知識がないので、どんな立場からの発言かもわかりませんし」

エリオットは、「それもそうか」と笑った。

「アーデンさんの報酬、取り戻せるといいね」

突然の発言に驚いた。

そういう話題も出ていたのか。本当に理解できていなかったんだな、俺。

それよりも――

「え? 報酬……ワイバーン討伐の?

そっか。強制的な命令でも、『討伐依頼』ではあるわけか。

あれ? どうなってたっけ?」

「おい、まさか――」

エリオットが驚いた顔をしている。

「クランハウスを売ってお金を作ったりしていて、なんか『お金がない』みたいな……」

記憶を辿るが、アーデンにもクランにも入金はなかったような気がする。

うつむき加減で考えていたら、突然怒鳴られた。

「貴殿らのせいだろう! 娘を返すよう要求する!」

こちらに向かって怒鳴っているように見えるが、どちら様だろうか。

「おやおや、『娘』ですか?

突然言われても、困惑するばかりです。はて、どういうことでしょう」

エリオットが前に出てくれた。

それにしても、エリオットの声が大きい。怒鳴っている相手に負けないようにしているのか。

騎士のトゥランは何をやっているんだ?

まわりを見るが、彼の姿が見えない。一緒に会議室を出て来たよな。

本当に迷子になっていたらどうしよう。

守るためだとしても、俺が貴族をぶん殴ったら駄目だよな?

絡んできた貴族は、エリオットを犯罪者であるかのように責め立てる。

「ああ! 盗賊と手を組んでいた、過激なお嬢さんのことですか」

相手の神経を逆なでするように、エリオットは片手を握り手のひらの上でポンと叩いた。

「貴様が大人しくぬいぐるみを渡していれば……」

ついに、激昂した男はエリオットのクラバットを掴んだ。

胸ぐらを掴まれた瞬間、トゥランが飛び出してきて男を取り押えた。

どうらやトゥランは、王宮の入り口にある受付の影にいたらしい。

一人が座ったらいっぱいになるくらい狭いスペースで、通信の魔導具が設置してある。

王宮で迷子になったら、ここに来るといいと教わった場所だ。

エリオットは胸元を整えながら、男をチラリと横目で見た。

「ぬいぐるみの取引は国が取り仕切っています。

それに横やりを入れるのは、王族の意思に逆らうということですよ。

先ほどの暴言の数々は、たくさんの人に聞かれています、

あなたの脅しや金になびいて助けてくれる人がどれだけいるでしょうね」

男は青ざめ、「国王に異を唱えたわけでは」と言い訳を始めた。

トゥランは男の身柄を近衛兵に渡した。

引き立てられていく男に、エリオットが声をかける。

「そんなことも理解できなくて、よく領主をやっていられますね?

この親にしてあの娘あり、か。

親子仲良く、罰せられるといいよ」

領主は後ろを振り向いて文句を言い返そうとしたようだが、近衛兵に小突かれてよろめいた。

娘と同じ牢に入れられたら、数日ぶりの再会に喜び合うのだろうか。それとも互いに責めて詰って、喧嘩になるだろうか。

いや、娘は一般牢で、あの男は一応貴族牢かもしれないな。

「これはわざと入城させたんだよ。わかるかい?」

エリオットは俺の方を見ないで、話し始めた。

「どういうことですか?」

「あの男のピュージェル領は、怪しげな新興宗教がはびこっているんだ。

彼らは他国では認められず追い出され、宗教に寛容なこの共和国に流れ着いた」

ああ、移民にも寛容な国だもんな。

「宗教の自由は認められているが、この国のルールを無視して国民に害を与えるなら話は別だ。

領主が狂信していたら、その領内であっという間に広がる。

問題を起こすよう導いて、領主を捕縛した。

宗教にかぶれていない親戚筋が残っているなら、そちらに領主変更すればお取り潰しまでにはいかないだろう」

だからトゥランは姿を隠し、相手が暴力を振るうのを待ち構えていたのか。

この一連の流れが計画通りとは――どこからが計画だった? まさか、令嬢が襲撃してきたところから?

モンスターとは別の意味で、怖ろしい。

思わずぶるりと震えてしまった。