作品タイトル不明
庭園で
朝食を終えた人から出て行って、部屋の中は閑散とした空気になっていた。
「庭園、行ってみようか」
ルナが静かに言う。
いつもなら「行ってみようぜ」と勢いをつけて言うか、フォンが穏やかに提案するのに……。
昨日馬車で着いたのとは反対の出入り口に向かうと、庭園が広がっていた。
幾何学模様に整えられた庭は技術と手間を見せつけるようで、どこか気取っていて、落ち着かない。
「こういうの、わーっと壊したくなるにゃ」
サァラが明るさを装うように、はしゃいで見せた。
ルナはベンチを無視して、芝生にどかっと胡座をかいた。
「今後のことを話し合おう」
俺たちは車座に座って向き合った。
「まず、優先事項はフォンのサークレットのこと。
それから、トーマの事情聴取。これは拒否権がなさそうだから、従うしかない」
ルナが状況を整理していく。
「問題は、いつまでかかるかわからないことかな。
それと、あたしとサァラは王城に滞在できないから、離ればなれになる」
「さっき、領主様のお屋敷にいていいって言われたから、そこで待つんじゃないのかにゃ?」
サァラが不安げに問いかける。
「そうだな。あたしたちは王都に詳しくないから、それがいいと思う。
ただ、あまり借りを作っちゃうのも不安じゃないか?
それに待つ間、近場で依頼を受けるとか何かしたいよな」
「そのあたりは、エリオット様に相談したら?
あの人、利用できる者を遊ばせておくような人じゃない気がする」
俺は旅の間のことを思い出しながら、そう言った。
正直、後で何を要求されるかわからない怖さはある。
だけど、非道なことは……あまりしない気がする。
「身動きが取れなくなってしまうわね」
フォンが申し訳なさそうに視線を落とした。
「いいや。領主様のお屋敷で安全を確保しながら王都の状況を調べられる、こんな機会は滅多にないよ。
使用人にもいろいろ教えてもらえるかもしれないしさ。
いつか活躍して王都に拠点を構えるかもしれないだろ」
ルナはそう言って空を見上げた。
今まで、そんな大きな展望を語ったことなどない。強がりと、励ましと……そんな彼女がやけに眩しく見えた。
庭園から迎賓館に戻ると、「光牙の道標」のメンバーに手招きされた。
魔法使いのオルドが、フォンに同行するために残るという。
「魔塔に丸め込まれないよう、監視役が必要だろう。
食事の毒判定もしてやれる。
それに、お前さんたちよりは貴族とやり取りした経験がある」
それは実に頼もしい。
だが、そんなに甘えていいのだろうか?
「俺たち光牙の道標は、エリオット様の動き次第だ。
しばらく王都にいるかもしれないし、トゥルメル領に移動するかもしれない。
本拠地を変えるところだったから、予定も入れていないし気にするな」
ダルグがそう請け負ってくれた。
「もし先に領地に戻ることになったら、引っ越し作業をよろしく頼む」
オルドがパーティーメンバーに軽く言う。
「あの、ぐっちゃぐちゃのガラクタを? 変なもんを触って怪我したくねぇぞ」
ベルーフが嫌そうな顔をした。
「いや、今回来る前に箱詰めしておいた。そのまま運んでくれればいいから」
「そう言って、半分も箱詰めできていない気がするわ。
あたしにやらせようって魂胆じゃないの?」
メルティナが腰に手を当てて、いぶかしげに睨めつける。
オルドは「はは、バレたか」と軽く流した。
「お前の実家の妨害があったらどうすんだよ」
ベルーフが重ねて訊く。
「そうしたら、家督を奪ったときのことを証拠つきで訴えると言ってくれ」
茶化すように言いながらも、昏い目つきになっている。
オルドはなにやら実家と揉めているようだ。
ダルグは「まあ、なんとかするさ」と話をまとめた。
こうして王城に留め置かれる人と、領主の屋敷に行く人に分かれた。
心配していたとおり、俺たち冒険者パーティーは分断された。
だけど、先輩冒険者の力を借りて、なんとかなりそう……かな?