作品タイトル不明
落ち着かない朝食
翌日の朝食は、昨日の夕食と同じ部屋に用意されていた。
エリオットが話し合いをしたいからと、城の使用人たちを下がらせた。
わざわざ給仕してもらわなくても食事できるしな。
俺たちは護衛任務を終えているため、遠慮なく大皿の料理に手を伸ばす。
「どれを食べようかにゃ。フォンはどうするん?」
サァラがそう気遣っている。
どうやら一晩では回復していないようだ。
フォンは果物を選んでいる。
食欲が湧かないのだろう。
ルナがさっとスープをよそって、フォンの前に置いた。
兵士たちはいくつかのグループに分かれて、同じ物を食べないように騎士のトゥランに指示されている。
これで数人が動けなくなっても、残りは戦える状態を確保するそうだ。
「食べながらでいいので、聞いてくれ」
エリオットが話し始めた。
「君たちの働きで、昨日、無事にぬいぐるみの納品ができた。
トラブルがあったけれど、誰ひとり欠けることなく任務を遂行できたことは喜ばしい。
報酬という形で、働きに報いたいと思う」
わっと喜びのさざめきが起きる。ベルーフがヒューッと口笛を吹いた。
「国から、数名はこのまま王城に滞在してほしいという要請があった。
マーガレットさん、トーマは他国に住んでいた頃の情報提供を求められている。
フォンは魔塔と協力して、魔導具の解析を進めたいだろう。
それぞれが持っている情報は、機密性が高く誘拐の危険性もある。我が領主邸と行き来するより、ここの方が安全だという提案だ」
エリオットは俺たち三人の顔を順に見る。
俺はパンを片手に持ったまま、見つめ返した。うなずいて了承していいのか、迷ってしまった。
拒否はできないだろうが、冒険者パーティーの仲間に相談せずに答えたくない。
エリオットは声を潜めて、
「王城内でも、拉致や食べ物に警戒は必要なんだけどね」
と苦笑いする。
「三人がいつ解放されるか、現時点では不明だ。
商業ギルドの面々は、数日、滞在してほしいとのこと。
ぬいぐるみの今後の話し合いを、早急に詰めたいそうだ。担当部署が殺気立っていたよ」
「嬉しいような、怖ろしいような状況ですね」
商業ギルドを代表してロイが答えた。
「一段落したら、領主邸に来るといいよ。
馴染みの薄い商業ギルドの王都支部より、うちの方が居心地がいいだろう」
「そうですね。
田舎者だと馬鹿にされるのはいつものことですが――強引に取引を迫る人がいそうで、ギルドの宿泊施設は別の意味で安心できないかもしれません。
遠慮なくうかがいます」
そんな話が進む中、サァラの顔から笑顔が消えた。猫耳が少し伏せている。
ルナは眉間にしわを寄せ、エリオットをじっと見ている。
「私たちは昼前に領主邸に移る。それまでは迎賓館の庭園などを楽しんでいいそうだ。
せっかくの機会だから、楽しんでくれたまえ」
エリオットはそう結ぶと、自分も食べ始めた。
「あたいたちも残ったらいけないのかにゃ?」
サァラが意を決したように、大きめの声で言った。
エリオットはスープ皿から顔を上げる。
「うーん、同じ冒険者パーティーとして心配ということかな?
残念ながら、それは難しいね。
滞在する理由がつけられないし、その場合は念入りに武装解除される」
「そっか……」
サァラがシュンとなった。
「私もできるだけ王城に顔を出すようにする。
領主邸に滞在するなら、私が連絡役を務められるよ」
「お屋敷に行っていいの?」
サァラが恐る恐る訊く。Cランクの冒険者が領主の屋敷に滞在することなど、普通はない。
「君たちがよければ、どうぞ」
ただの善意とは思えない、どこか胡散臭い微笑みが返された。
サァラとルナは顔を見合わせた。
どうする?――と言葉にしないまま。