作品タイトル不明
四日目 増員
今日は商隊用の馬車で、犬獣人のダルグと組む。
突発的なことが起こったら、ダルグが真っ先に動くから、一日中一緒にいられることを願おう。
この宿場町の冒険者を、領境までの警備として雇ったと、商隊長ロイが発表した。
「今日の午後までの付き合いになるが、よろしく」
獣人ばかりのパーティーだ。
トカゲのような爬虫類も「獣人」と呼んでいいのかな? 肩幅が広くて強そうだ。太い尻尾で攻撃されたら痛いんだろうな。
現地での情報をもらって、ロイと騎士のトゥランが打ち合わせをしている。
商隊の前方と後方の警戒をしてくれるそうだ。
四台の馬車が分断されたときのために、各馬車にポーションの箱が配られた。周囲を警戒している兵士や冒険者は、怪我をしたら近くの馬車に退避すればいい。
獣人のパーティーは、Aランクパーティー「光牙の道標」とも顔見知りらしい。
この状況で安心できる護衛が増えるのはありがたい。
昨日の戦闘でひどい怪我をした場合はポーションで治療したが、軽い怪我は普通の手当をされている。
包帯を巻き、薬草の匂いをさせた兵士が横を通った。
「あの、ポーションで治さないんですか?」
何度か食事を一緒にとって顔見知りになっているので、訊いてみた。
「ああ、ポーションを頻繁に使うと、自然に治癒する力が衰えるからな。
それと、筋トレの効果が減る」
筋肉を痛めることで筋力をアップする方法があるそうだ。
「俺もやったら筋力アップできますかね?」
ワクワクしながら訊いた。
「う~ん、体質もあるからな。効果がある奴もいるが、やり方を間違えて筋を痛める奴もいるぞ」
兵士は、あまり嬉しくない情報をくれた。
「鍛える筋肉と戦闘スタイルの組み合わせは、ちゃんと考えないと駄目よ」
槍術士のメルティナが通りかかって、教えてくれた。
「メルティナさんは、あんまり筋肉質じゃないですね」
「私は筋肉がつかない方ね。握力を補助する手袋と遠心力をうまく使っているの」
なるほど。そういう工夫をしているのか。
馬車に乗ったら、グレタばあさんがいた。
養鶏場でぬいぐるみをささっと作り、流行の元になった人だ。
膝の上に毛皮を広げて、ブラシで毛並みを整えている。
「縫い物はできないけど、素材の準備は進められるからね」
昨日の襲撃に怯えていないのはありがたい。
「こっちの馬車は普通の木と布だろ? 昨日は大丈夫だったか?」
強がっているだけじゃないといいなと思い、念のために訊いてみた。
「魔法使いのオルドが何やら保護をかけてくれたからね。
ルナとサァラもいて、大活躍さ」
グレタばあさんは、冒険活劇を見たかのように話してくれた。
緩やかな登り坂で、馬車の速度が落ちている。
午前中に狭い谷になっている部分を通る。
襲われるとしたら、そこだろうか――朝から緊張感があった。
午前中の休憩のあと、御者台にダルグと並んで座った。
「襲撃が来たら、お前は馬をなだめて、守れ。
鎧を着た人間と戦ったことはあるか?」
「ありません」
というか、人を殺したことはない。
「動く鎧の隙間を狙うのは難しい。
ベルーフに小道具をもらったりしていないか?」
「いくつかお借りしています」
「体格に恵まれなかったら、知恵と道具で乗り切るんだ。
道具は奪われて、こっちの攻撃に使われたらマズい。
うちのパーティーは、オルドが使用者権限を付与している。だから渡す前にお前も使用者登録しているはずだ」
「あ、そういえば、その場にオルドさんもいました」
「もし、ランクアップを狙うなら、そういう作戦も立てられるようになれ」
「ありがとうございます。
なんで、そこまで親切に教えてくださるんですか?」
護衛の仕事をしながら、俺たちCランクのパーティーを育成してくれる。
冒険者ギルドが口添えしてくれたとしても、ここまで丁寧に、自分たちの戦い方を開示してくれる人は珍しい。
敵対した場合、その情報が命取りになるのだ。
「……英雄アーデンと同じ村出身なんだろ?
あいつへの借りを返しているだけだ」
懐かしい名前が出て来た。