軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四日目 崖

少し広めの場所で一時停止し、最後尾の護送車を二番目に移動させた。護送車はサァラが手綱を握っていた。

エリオットが乗っている領主の馬車、護送車、ぬいぐるみを積んだ荷馬車、商隊用馬車の順番になった。

商隊馬車に乗っていた非戦闘員を、先頭の馬車と三番目の馬車に分乗させる。

移動する人を見ながら、水筒に口をつけた。

「この先が怪しいんですか?」

俺はダルグに訊いた。

「道が狭く、上の崖がせり出している場所がある。

誰が考えても襲うなら、そこだ。

敢えて外すなら、この広場なんだが……来ないな」

ダルグはニヤッと笑って、ブーツをひっくり返して小石を取り出した。

急な崖を、雪豹獣人のラティーアが降りてきた。

突然何かが崖を転がってきたように見えたので、驚いた。

ダルグを含めた主要人物たちはわかっていたようで、さっとラティーアの周りに集まっている。

さっきの午前中の休憩のあとに別行動して、崖の上を偵察してきたそうだ。

出発の合図で先頭の馬車が動き出す。

俺が乗っている商隊用馬車は、乗っている人が減り、最後尾になった。

「荷馬車の後ろに乗り、後方を警戒しろ。

襲撃ポイントに差し掛かったら、大岩が落ちてくるけどビビるなよ」

そう言われて荷馬車の後ろに移動し、進行方向と逆向きに座る。

遠ざかる景色を見ていると、過去を振り返っているようなしんみりとした気持ちになった。

馬車の周りを馬で警戒している兵士が、ときどき話しかけてくる。

後方に、怪しげな一団が付いてきているらしい。

ただ同じ方向に進んでいるだけかもしれないが、訓練された動きをしているので要注意だと。

フォンが風魔法で盗聴できたら、敵か無関係かわかるんだけどな。

サークレットを外すまで、能力を封印しなければいけない。

カラン、コツン。

小さな石が上から落ちてきて、道ばたでとまった。

「び、びっくりした」

思わず呟いてしまった。

「俺も。こんなタイミングで、紛らわしいよな」

兵士が苦笑いした。

ほっとした次の瞬間、誰かが「来るぞ!」と叫んだ。

振り返ると、二番目の護送車と三番目の荷馬車の間をめがけて大きな岩が落ちてきた。

いや、落とされた。

「ぼさっと石ころみてんじゃねぇ。警戒!」

ダルグに怒鳴られて、警戒すべき後方に目線を戻す。

土埃を上げて、騎馬が4体向かってきた。

ダルグは荷馬車をひく馬の顔に袋をかけ、俺の横に来た。

その時、ガツンと大きな衝撃音がして、衝撃波が地面を、俺の体を揺さぶった。小さな石がいくつもぶつかる。

な、なんだ――?

「よそ見してんじゃねぇ。てめぇの仕事に集中!」

ダルグの声で、目の前の光景に意識を戻す。

「落とされた岩を、魔法で砕いただけだ。気にすんな」

小石は痛かったけど、怪我はしていない。

敵の馬は、今の爆風で前足を上げて竿立ちになっているものもいた。

ダルグが駆け寄り、大きな斧で敵を馬からたたき落とす。

俺は敵が立ち上がる前に、短剣で腕や足を刺していく。

鎧の隙間を狙えるのは、ダルグに斧で殴られ、落馬の打撲で動きが鈍いからだ。

ここでは下っ端だから、安全な役割をもらっていると思う。

肉を貫く嫌な感触。

モンスターとは違う、罪悪感に襲われる。

いや。ためらうな。一瞬の迷いで、自分が殺されるんだ。

次の敵に行こうとしたとき、足首を掴まれた。

しまった。変な手加減をしてしまったか。

不意をつかれ、転んで膝をついてしまう。

敵の手に短剣を突き刺したが、手まである鎧を着ているので弾かれた。

ガツッと火花が飛んだだけ。

冷や汗が出た。ヤバイ。

敵の目が血走り、ギラギラとした視線が俺を射貫く。

前のパーティーで俺を殺そうとしたセリアの目とダブった。

一瞬で過去の恐怖が甦り、体の芯が凍り付く。

駄目だ。怖がるな。俺は逃げて、生き延びたんだ。

鎧がない部分を探せ。

うつ伏せている敵の背中は、鎧が覆って保護している。首も覆うタイプの鎧だ。

くそ。背中側だと、肩も肘も覆いがある。

ダルグみたいに力で鎧をへこませることができたら……違う。やれることを探せ。

そうか、目だ。

敵が武器を取り出す前にやらなければ。

短剣が鎧のヘルメットをかすった。目の上のツバが邪魔で、角度が悪い。

俺も体を低くして、狙いやすくするか。

戦闘中に体を地面につけることに、本能が恐怖を訴える。勝つためだ。本能をねじ伏せ、体を敵に近付ける。

敵が空いている手を動かし、腰の剣を抜こうとしている。

少し鞘から出た刀身が光った。

抜ききったら、切られるのは俺だ。

体をひねって、空いている足で敵の頭を蹴りつけた。

足首を掴んでいる手が緩んだ。

もう一度蹴る。

しっかりした鎧は、敵を守ると同時に動きを鈍くした。

足をサッと引くと、再び足を掴もうとする敵の手が空振りする。

脱出するのと同時に、敵の背中にダルグの斧が叩きつけられた。

敵の口からは、悲鳴にもならない声が漏れた。