軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三日目 夜の警護

日が傾きかけた頃、ダルグと兵士が追いついてきた。

それを待っていた別の兵士とメルティナが、今夜の宿を確保するため、馬で先を急ぐ。

今日の夜の警戒は、昼間の戦闘に加わっていない者が担当することになった。

俺は皆が食事している間、馬車が並ぶ車庫で警備に当たっていた。

ふらりと領主の孫、エリオットがやってきた。

「みんなの食事が済んだら、交替の騎士が来る。そうしたら食事に行ってくれ」

食事時に飲んだのか、少しアルコールの香りがする。

「俺は夜中までここで待機のはずですが」

もう少ししたら食事が運ばれてくると聞いて、楽しみに待っているところだ。

「予定変更だよ。

そこの護送車にいる令嬢の親が、捜しに来るかもしれないと情報が入ったんだ。

調べようという人間が近づいたときに、『ここにいるのは襲撃犯だ』と退けられる騎士と交替してもらう」

ああ、貴族の脅しに負けない人ということか。それなら、俺は役者不足か……。

「真夜中は魔法で撃退できるオルド、明け方は気配察知に優れたフォンに担当してもらう」

なんだ、単に俺の実力不足か。

「はい。わかりました」

悔しさを顔に出さずにいられただろうか。

エリオットは俺の顔を観察するように見ている。

何か言いたいことがあるのか?

「君は、どうして冒険者でいようと思うんだい?」

え……「向いていないのに」と言われてるのか?

自分が一番よくわかっているさ、そんなこと。

唇を噛みしめ、制服のベルトを強く握る。

「戦うのは怖ろしいだろう?」

「……」

「スキルで常人とは違う能力を得て、初めて対峙できるものだと思う。

戦闘スキルを得ると恐怖心が軽減する――麻痺する傾向があるらしい。

そんな恩恵もなく、なぜ……と不思議なのさ」

俺の隣に並び、エリオットは持ってきた酒を一口飲んだ。

どうやら、俺を馬鹿にしようとしているわけではないらしい。

「自分でも不思議なんですが、子どもの頃から憧れていたから……ですかね」

未だに、答えが見つからない。

多分、冒険者ギルドよりも商業ギルドの方が向いていると、薄々感じているところではある。

「向いていない方向に、努力するんだね。くじけそうにならないかい?」

あまりにも突っ込んだ質問に、一瞬、頭が真っ白になってしまった。

親しい人だって遠慮するような話題を、数日前に会ったばかりの人間と話したくない。

ところが、エリオットは、俺の答えが聞きたいわけではないようだった。

馬車の方に顔を向け、自分の話をしだした。

「私は、領主一族として生まれ、いずれ領主になる。

それ以外の道を考えるのは許されなかった」

しばらく愚痴めいた話が続き、俺は疲れと空腹で苛立ってしまった。

どこかで「もう、いいや」と開き直り、失礼だと怒られてもいいと言い返した。

「本当にやりたいことがあったら、ご兄弟に譲る道もあるのではないですか?

決めつけないで、相談して、説得して道を開くのです。

私は狭い村から出たいと、村長の息子さんに相談して、二年かけて街に出る準備をしました。

宿で働きながら休日に冒険者をして、専業の冒険者になる準備をしました」

まくしたてながら、「酔っ払い相手だからいいよな」という気持ちが湧いてきた。

「向いていないのはわかっています。

時間がかかるし、才能がある上に努力を重ねる人には敵わない。

だけど、それでもなぜか諦められないのです」

「そう言われると、そこまでしてなりたいものは思い浮かばないな」

エリオットは乾いた笑いを漏らした。

しまった、言い過ぎたか。

「隣領の領主をやり込めたとき、とても生き生きとしていらっしゃいました。

領主のお仕事が、向いているように思いますよ」

俺のせいで落ち込まれても困る。

「慌ててフォローしなくていい。

定められているのが面白くないだけで、嫌いではない気がしてきたよ。

それに、お祖父様がまだまだお元気で、私の番が回ってきそうもないから腐っているだけかもしれないな」

いい感じで浮上してくれたようだ。

ほっとした横で、護送車からガタンと物音が聞こえた。

エリオットと目を合わせる。

「……頑丈だし、魔法がかけられている。中からは開かないよ」

「なら、安心ですね」

俺は交替が早く来ないかな、と思いながら答えた。