軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タルタルソースには隠し味を入れる派です

あの後、先ほどと見劣りしないほどの量のドロップ品を抱えて戻ってきたアリアさん達を収容し、王都へ向かう道をひた走った。

多少の遅れは出たものの、魔物と遭遇することもなく、事故やら進路妨害やらのトラブルもなく……それなりにスムーズに走れたおかげで、日が落ちる頃には目標としていた辺りまで距離を稼ぐことができた。

ここまでくれば、明日はお昼前には目的地……王都・シュルブランに到着できるはずだ。

例によって街道から少し離れた所に 野営車両(モーターハウス) を停めて、本日の野営地に定める。

ちなみに、徒歩の旅人さんはどうするのか……っていう話なんだけど、街道沿いにある宿場町的な所に泊まるんだって。

だから、朝早くに出て、日が暮れる前にそういった場所に着けるよう、旅程を計画するそうな。

馬車の場合は、馬車の中で野宿……っていうのも定番パターンらしい。

そういえば、街道沿いに街というか村というか……そんな感じの集落があったような……気が……?

気にならないわけじゃないけど、今は夕飯の準備が最優先だ!

「さて! それじゃあ、あとはタネを揚げていきます!」

「リン! リン! また、レモン、斬る!?」

「はい、お願いします!!」

フォグバードやウズマキシダ……それと、フォグバードの群れの近くによく生えるという食用キノコに衣をつけて、冷凍庫からも前回残しておいたタネを取ってきて……。

いざ、揚げよう……という段で、アリアさんが野菜室からレモンを出してきてくれていた。

わくわくした表情が隠しきれていないアリアさんに頷いてみせれば、そのまま糸で切断してくれた。この間はだいぶ細切れにされたものの、それでは少々使いにくいと悟ったのか、今回はだいぶ大きめに切ってくれている。

おお! アリアさんが調理について学習している!!

そのまま席にレモンを運んでくれるアリアさんを見送って、タネを油に滑り込ませた。途端に、ジュワァァッと水分が躍る音と共に、弾けた細かい油が腕や手に飛んでくる。

地味に熱いけど、揚げたてのアツアツを頬張る悦楽に比べたら、この程度のこと……!

なお、油に入れてすぐに弄り倒すと、衣が剥がれてしまうので……。

「よし! 今のうちにソース作っておこう!」

「ああ。さっき言ってた特製ソース、か?」

「そうです、そうです! 揚げ物のお供には欠かせないかと思うのですよ……!」

アリアさんと入れ替わるようにやってきたヴィルさんが、期待に満ちた瞳で手元を覗き込んでくる。お昼の答えが知りたい気持ちが大いに働いているんだろう。

イチゴ色の視線を受け止めつつ、狩りに行ったみんなの帰りを待つ間に茹でておいた卵と、刻んでおいたピクルスと玉ねぎを冷蔵庫から取り出すと、大きめのボウルに茹で卵を入れて、フォークの背中で潰していく。

その間に、衣がだいぶ硬くなってきたので、焦げないようにひっくり返して…………こういうマルチタスクは難なくこなせるんだよなぁ……。

やはり、好きこそものの上手なれ、ってやつなんだろうか?

もう片面を揚げている間に、ボウルの中にピクルスと玉ねぎを加えて……。

「あとはもうマヨネーズ先輩にお任せですよ!!」

「……まよねーず……」

「酢と油と生卵で作る調味料なんですが……こっちでは見かけたことないんですよねぇ……」

「な、生卵……だと……!? た、食べられるのか、ソレは……」

「ああ、その反応だと、卵を生で食べるって言うのは一般的ではないんですね……鮮度管理とか衛生管理もしっかりしてる場所で作ってますし、そもそも美味しいですよ、コレ」

「生の卵を使っているのに、美味い……リンの世界の食料は、謎が多いな……」

材料を挙げれば、ヴィルさんの顔が若干ひきつった。

あー……まぁ、海外じゃあ生卵はゲテモノ扱いって聞くし、こっちの世界でもそんな感じなのかな……?

私の住んでる所ではごくごく一般的な調味料であることを説明しているうちに、フライが良い揚げ具合になってきた。

こんがりとキツネ色に揚がったフライをバットに取り出して、次の揚げ物ダネを再び油に滑り込ませる。

ジュワジュワと揚げ物を上げる音と香ばしい香りの中で、きゅぽんとマヨネーズが入った瓶の蓋を開けると、ほんのりとお酢の香りが周囲の空気に混じった。

濃いクリーム色のマヨネーズを、スプーンで景気よく掬ってボウルの中へ!

見る間に元の量に戻るマヨネーズは、やっぱり「不思議」の一言に尽きるけど、遠慮なく使えるって言うのはものすごい利点だと思う。

今まで使っていたフォークでボウルの中身をよーく混ぜていくうちに、ポロポロ崩れていた卵の黄身がマヨネーズと混じり合い、さらに黄色味を増していく。

全体がなじんだら、塩・コショウとレモン汁で味を調えて……隠し味にちょっぴりケチャップを加えるのが小鳥遊家流。

ケチャップの赤が全体に混ざるまでよーく混ぜたら、タルタルソースの完成ですよ!!

生卵が材料と聞いてちょっと怯んでいたようだったヴィルさんも、やはり未知なる食材が気になるのか、タルタルソース作りを食い入るように見つめていた。

「ヴィルさん、ちょっと味見してみます?」

「い、いいのか……!?」

「スプーンはこのまま食卓に出す時にも使いますけど、フォークは洗っちゃうつもりだったので……」

今までボウルの中身を混ぜていたフォークの腹に、ちょっぴり具材を多めに掬って渡してみれば、興味津々という顔のヴィルさんがたちまち食いついた。

生卵が使われてるとはいえ、好奇心には勝てなかったらしい。

ぱくりとフォークを口に入れた瞬間……クワッとイチゴ色の瞳が見開かれ、そのままこちらを凝視してくる。

「な……な……なんだ、コレは……!?」

「お昼に言ってた特製ソース……タルタルソースです。魚のフライとか、今回のフォグバードのフライとよく合うと思いますよ!」

フォークを片手に立ち尽くすヴィルさんの唇から、ぽつりと言葉が零れ落ちた。

そのイチゴ色の視線は、つい先ほどまでタルタルソースが載っていた銀のフォークに向けられている。

呆然とした様子の ヴィルさん(リーダー) に、このソースとよく合うであろう今日の食材を告げてみれば、ギギギ……と音がしそうなぎこちない動きで、ヴィルさんの顔がこちらを向く。

「………………あのフライに、このソースを………………リンは悪魔か……!!」

「悪魔だなんて、人聞きの悪い!! 私はただの食魔です!!!」

すっかり魂を抜かれてしまったようなヴィルさんが、戦慄を隠せない声で咆哮する。

えー! ただちょっと、美味しいものが大好きなだけじゃないですかー!

ちょうど揚がってきたフライをバットに上げながら、私は訂正の声を上げた。