作品タイトル不明
166話 こりないやつら。
さて、当然というか、彼ら初心者パーティを観察しているのは俺自身である。
ダンジョンの床下にはもう一つ通路があり、俺がいるのはそこ。
というより、このダンジョンそのものを作ったのも俺だし、ダンジョンがあるのはマッターホルンの敷地内である。
エルフの里に作ろうとしたら、里長さんから文句が来たせいである。本当にエルフは心が狭い。
なので、冒険者ギルドからの移動にスイッチの能力を使っている次第だ。
よって、厳密に言えばダンジョンではなく、ただの地下建造物である。
敵役のゴーレムも、俺がクリエイトしたもので、遠隔で動かすことはできないので、床下に有線で繋がっている。
要するに、初心者冒険者用の訓練施設ってことだね。
で、今回のパーティがもつ課題としては、危機意識が足りていないこと。仲良しパーティにはありがちで、皆が横一列で冒険しようとしたりする。
今回は前衛が全員前に出てたな。
そして、敵からの不意打ちや罠の存在について無頓着だった。
仲間にそういったエキスパートが居ないのは仕方ないが、全く警戒がないというのはいただけない。
なので、その辺をみっちりと経験してもらうわけだ。
たとえば。
「お、なんだこれ、宝箱?」
「やったわ。これで一気に黒字よっ」
「よし、開けるぞ。……ぶわ、なんだこれ、煙?」
安心しなさい。毒じゃないから。
「ああっ。目が、目がぁぁぁっ」
「大丈夫かよ、おいっ」
「目が痒いぃぃぃっ」
「はい、水よ。これで洗って」
「はいー、みんなの水筒も使ってー」
「た、宝箱の中は?」
「……銀貨が四枚入ってるね」
とか。
「おい、水場があるぞ」
「よかった。水筒が空だったんだ。汲んでいこうよ」
「俺たちラッキーだな。ぶはっ、なんだこれ。しょっぱくて辛いぃぃ」
「ごほっ。ごほっ。なんですのこれは」
「水、水ぅぅぅ」
とか。
「なんだ、これ。部屋の真ん中に台座?」
「上に突起があるね。何か書いてある。えーと、『押すな』だって」
「いや、押すでしょ。ぽちっとな」
バクンッ
「ぎゃー、落とし穴ー」
とか。
なお、全員罠にかかったら入り口に強制送還である。スイッチスキルで。
「ここは……」
「入り口の椅子ですねー」
「いつの間に……。俺たち、罠にかかったはずじゃ……」
「はい、お疲れさまでござるよー」
冒険者を迎えたのはカエデ。彼女はあまり身長が伸びてない。
髪型がポニーテールに変わったくらい。
「ちくしょう、酷い目にあったぜ」
「まあ、でも赤字にはなってないし。今度はあのボタン押さないで行けばいいさ」
「一番奥まで行ければ、もっとお宝があるわよ」
いやいや、自分達に足りないものを考えようよ。北の大地に行ったら大怪我してしまうぞ。
これじゃ、Fランク卒業は遠そうだな。
なお、次回挑戦時に、今回のことで学習した彼らは、『押すな』と書かれたボタンを押さずに先へ進んだ。
そして、その先にあった『押したら良いことあるかもね』と書かれたボタンを押してリタイアしたことをここに記しておく。