作品タイトル不明
165話 開かずの扉
冒険者ギルドの地下に扉があった。
この街はダンジョンの上に作られていて、それを冒険者ギルドが管理していると噂されている。
ギルドでは、この扉の中に入って行き、中にいるゴーレムを倒すという依頼が定期的に行われていて、ソロ冒険者や初心者パーティに依頼することがある。
今日、依頼を受けたのは四人の冒険者パーティ。
「さあ行こうか、って中が暗いじゃないか」
「これじゃ、探索なんてできないよ」
「冒険者ギルドもダンジョンの地図くらい、くれても良さそうなのにね」
「とにかく、上の売店で松明を買ってくるよ。地図は、きちんと描いて提出すれば報酬に上乗せしてくれるらしいから、単にまだできてないんじゃないかな」
「そんなわけないでしょ。この依頼、いつからあると思ってるの」
「なんかぁ、入る度に道が変わっちゃうらしいよー」
事前準備不足だな。このダンジョンについては、ギルド二階の本棚を調べれば資料があるというのに。
なけなしのお金で松明を購入して、ダンジョンの中へ。
最初の部屋には入り口を含めて二枚の扉と四つの椅子。
「えーと、扉を閉じて全員で椅子に座れ、だって」
壁に書いてある文字を口に出して読む。情報共有は大事だな。
「え? それって罠だったりしないか?」
を、警戒するのは良いね。ポイントを上げよう。
「でも、このドア動かないわよ」
正面のドアは叩いても蹴ってもびくともしない。
冒険者って、なんでドアが開かないと、みんな蹴るんだろうな?
蹴ったら発動する罠とか、簡単に引っ掛かるんじゃないだろうか。
「他に方法が無いのなら仕方ない、取りあえず座ってみよう。みんな、武器をちゃんと持って、警戒はするんだ」
その言葉に従い、一人ずつ椅子に座る。
ピーン、という音がする。
穴の空いた硬貨を指で弾いたような綺麗な金属音だ。
「これで良いのかな? ……あ、ドアが開くぞ。よし、行こう」
椅子から立ち上がった一行は、一列になってドアの向こうへ。
そこは石造りの回廊。一人であれば武器を振り回すのに支障ないくらいの空間が続いている。
先頭の少年が剣を構えて警戒しながら、前へと進む。
「……何もないな。進むぞ」
先頭の少年が通路の角を曲がったとき。
「きゃあぁぁぁぁ」
最後尾を行くローブ姿の女の子が悲鳴をあげる。
女の子のさらに後方から飛んでくる塊。それは体にぶつかるとともに衝撃で弾ける。
硬く固められた泥団子のよう。
「な、通ったときは居なかったのにっ。ぎゃっ」
先頭の少年が振り返ると同時に、前方の通路からも飛来する泥団子。
「く、リーダーは前を頼む。後ろは俺がっ」
「ま、まかせた」
仲良し集団らしい連携で体制を建て直す。
それぞれに前衛が対峙した後の動きは悪くない。後衛からの攻撃で敵を順に撃破するのに、そう時間はかからなかった。
「大丈夫だったか?」
息を切らすローブ姿の女の子に、リーダーらしき少年が声をかける、が。
「大丈夫じゃないわよ。酷い目にあったわっ」
女の子の方は、かなりおかんむりだ。
「おい、見ろよ。このゴーレム、銀貨持ってるぜ」
地面を這うように動く小さなゴーレムだ。攻撃は一本の筒から行われていて、焦りさえしなければ彼らでも対処は可能。
そして、破壊した残骸からは銀貨が見つかった。
「いまので銀貨2枚ね。いいわね、どんどん行きましょう」
文字通り現金に女の子の怒りは治まったようだ。
ギルドからの依頼報酬と合わせれば、今の戦闘を5回も繰り返せば十分な収入になる。
幸い、痛い思いはしたものの、たいした怪我ではない。服が汚れた程度。
と、そんな風に思っているのだろうねぇ。