作品タイトル不明
517話:変える頃合い2
色々課題があるのは、まぁ、後回しにしてたつけだね。
卒業も見えた時期だ。
宮殿に戻るためにやることと、戻ってからを考える頃合いなんだろう。
だからソティリオスも、今のタイミングで人員の話を振って来た。
その上でテリーも、父に探るよう言われてきてる。
とは言え、目の前のことも優先して対処しなくちゃいけない。
何せ弟が僕に会いに来てくれてるからね。
「はい、ここが錬金術のための部屋だよ」
「エメラルドの間とはまた違う感じだ」
テリーが時間作って屋敷に来てくれたけど、また色々引き連れてる。
とは言え、二階は常から立ち入り禁止で、騎士なんかもそうだから、元から屋敷にいる人たちがテリーの同行者を一階で対応した。
錬金術部屋まで一緒なのは、学友のウォーと従僕のメンス。
あと騎士のユグザールという、慣れた相手。
そして今日はゴーレムの核作り、久しぶりに弟と錬金術だ。
「そう言えば、下の人たちあまり強く止めなかったけど、もう僕がテリーに危害を加えるとかいう噂は収まったの?」
「えぇ!?」
日の浅いウォーがびっくりして声を上げ、慌てて口を両手で覆う。
メンスは親から聞いてるのか無反応だ。
一応、テリー周辺はルカイオス公爵派閥だと思って、一階だとほぼ喋らずに済ませた。
ルカイオス公爵本人にばれてても、派閥広いし、知らない人まで警戒させるのもまだ早いかなって。
「兄上の実力を知らない人ばかりだから、何もしてない兄上に遅れは取らないと思われてるんじゃないかな」
「あぁ、そう言えばもう昔みたいに身長差もないもんね」
年相応に年齢が体の大きさに現れていた幼い頃と違い、今は身長があまり変わらない。
十五で成長期がいまいちな僕と、十二で成長し始めたテリーって言うのが、ちょっと不安。
見るからに年下って感じがなくなったお蔭で警戒されないにしても、弟たちに身長抜かれたら、ちょっとショックかもしれない。
「あとはテオが強く信頼されてる」
テリーがユグザールに目を向けると、恐縮するように視線を下げた。
幼い頃から宮中警護として側にいて、その信頼から今はテリーに剣を奉げた騎士になってる。
何度かテリーの危機に活躍してるから、ユグザールが一緒ならって感じらしい。
他に考えるなら、僕のほうも帝国からの人員を二階には上げてないせいか。
普通に邪魔だからなんだけど、たぶん一階では今日までの僕の様子を情報交換でもしてるんだろう。
「よし、それじゃゴーレム作りの前に、この部屋での注意事項を教えるよ」
「はは、懐かしい」
テリーが笑うのは、エメラルドの間でもやったから。
ウォーとメンスは初めてのことに真面目な顔で耳を傾ける。
伝える内容は、前世の理科の実験で言われるようなこと。
走らない、騒がない、周りに注意する、説明はきちんと聞く、片づけは最後まで。
テリーがなんとか時間捻出してくれたけど、こういう基本的なところはおざなりにして取り返しのつかない事故になっても嫌だからね。
「それで、今日はゴーレムの作り方についての説明。そして実際にゴーレムの核となるものを作る工程をやる。完成は後日になるけど、すでに作ってある核で、ごく小さなゴーレムを動かす実践もやるよ」
「発言をよろしいでしょうか?」
メンスが使用人のように視線を合わせず声をかけてくる。
「気軽にどうぞ」
「ゴーレムとはそれほど簡単に作れるものですか?」
「簡単ではないかな。最低限知識と設備が必要だし、一つ作ってもあまり実用性はない。数が必要になるから、作るだけが重要じゃないんだ。運用して初めて真価を発揮する」
僕が答えるとテリーが天井を見上げた。
「ゴーレムは小さくても大柄な獣人を越える背丈があると聞いたけど、大丈夫?」
「それは野生のゴーレムかな。もしくは現存する人工ゴーレムだ。それらは成長していく。錬金術が廃れる前に作られたものが動いて大きくなってるから大きいんであって、元は僕たちよりも小さいゴーレムなんだよ」
存在するゴーレムを基準にすると、認識がずれるから、そこら辺も説明しないと。
僕はそもそも錬金術で作られるゴーレムについて、そして今から作る核で作れるゴーレムが胸くらいの高さであることを説明する。
「で、その本来のゴーレムが自動補修と素材の取り込みを繰り返して、今のゴーレムの形になってるんだ。今いるゴーレムほど大きなものを最初から作るのは難しい。これがメンスへの答えにもなる」
つまりメンスが想像するより、錬金術で作るゴーレムは小さい。
だから世間一般で想像するゴーレムを作るとなると難しい。
そういう説明と、簡単に図を描いての説明を続けた。
「ルキウサリアにはこういう大本のゴーレムが残っていた。けれど作り方は帝室図書館のほうにしか残っていなかったんだ。珍しい青いアイアンゴーレムがルキウサリアにいるから、ちょっと捕まえてみたんだけど…………」
「あの、ゴーレムってそんな簡単に捕まえられるのでしょうか?」
ウォーがもう何が普通かわからないって顔して聞く。
だから人体に似た動きをするところに目をつけて、転ばせて起き上がれないようにしたんだってことを、また絵で説明した。
「これで誤算だったのは、使った錬金術の薬にロックゴーレムを引き寄せる副次効果があったことでね。アイアンゴーレムを呼び寄せる前に三体も捕まえることになった。お蔭で罠を三回も作り直すことになったんだよ」
「兄上、さすがにゴーレム四体を捕獲したなんて話は、聞いてない」
おっとまた伝達漏れがあったけど、これは別に言わなくて良くない?
話が逸れるからもうゴーレムの核作りに移行して有耶無耶にした。
ただまずはまた化石の話から、口頭での説明が続く。
説明しながら錬金炉の作動と、残りの説明もすると、後は待つばかりになった。
だからまた錬金炉の内部で起きてることを光を操って見せる。
王城でもやったやつだ。
「め、目が、回るぅ…………」
「うわ! ウォー、大丈夫?」
天が回り大地に四季が巡る様子に、ウォーが目を回した。
慌てて腕を引いて椅子に座らせる間も、セフィラがやってるから光は動き続ける。
「錬金炉、こんなことになってたんだ…………」
テリーは今まで使ってた道具の内部の神秘にわくわくしてるみたいだ。
「兄上、これは私でもできるかな? ワーネルやフェル、ライアにも見せたい」
「あ、そっち。うーん、ちょっと待ってね」
正直、これは映像情報を見慣れた僕だからできる魔法だ。
そして魔力出力の限界がないセフィラあってこその制御でもある。
(ってことは、まず制御のための術式が必要か。セフィラ、これ術式としてまとめられる? 動かすまではしなくていい。投光器の絵のように、一つ一つの映像を術式に落とし込むんだ)
(主人の提案を了解。最低二十四の術式を必要とします)
(多いな。いや、でもそうなるか。うーん、よし。天と地で二つにわけて、二人で息を合わせて動かすって形にしよう)
無理なら分割しようと決めて、僕は術式を書き上げた。
「…………第一王子殿下は、魔法にも長けていたのですね」
「うん? メンスも魔法に興味ある? 僕は自分が使いやすいようにしか使ってないから、基本はきちんと学んだほうがいいよ」
「高名な魔法使いが家庭教師についていると聞いたのですが?」
父親のおかっぱから聞いたかな?
「出力の高い魔法を放てる環境になかったから、基本は理論ばかりだったよ。今でも高出力の魔法とか必要だとは思わないし」
「ちなみに魔法に関してはどのようなことをこちらでなさっているのでしょう?」
「魔力の性質や波長が…………。うん、そこは錬金法関係だね」
危ない、魔導伝声装置に関して話しそうになった。
そしてメンスはしれっと実態を聞き出そうとしたな?
僕はメンスからあえて目を逸らし、術式を書きあげてテリーに渡す。
「この術式に魔力を通して。こっちが天で、こっちが地。流す魔力の量を調整することで回る速度変わるから、やりすぎて術式壊さないでね」
「…………兄上、こういう複雑な術式を書けること、父上は知ってる?」
「…………言った覚えがないね」
テリーに指摘されて気づいた。
僕、幼少期に学習内容言うことをやめてから、ずっと父に何学んだか言ってない。
魔法なんて水出したりとかの初歩しか使った覚えもないな。
そんなところも変える頃合いなんだろう。
そもそも味方が僕の能力把握してないんだから、こうして弟を送り込まれてるわけだし。
けどその辺りは家庭教師が定期的に報告してたはずだよね?
なんてヘルコフ見ると、首を横に振られる。
どうやら、僕の魔法の腕とかについては言ってないらしい。
実はここでも報告漏れがある気がしてきたな。
確かに術式組んだりって、セフィラに関してだし、そこは僕が口止めしてる範囲だ。
「よ、よぉし。次は小さいゴーレムを作るよー」
「兄上…………」
うん、雑な誤魔化しにテリーから呆れられてしまいました。