軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

518話:変える頃合い3

魔法術式のことで、僕自身が無知で呆れられた。

うん、これだけできれば魔法得意って言っていいレベルらしい。

魔法放つほうじゃなくて、作るほうとして。

あれだ、英会話できないから英語が得意じゃないって言っておいて、文法はできて文章なら書けるから成績はいいみたいな。

本当にセフィラ相手だったからまともな使い方してなかったんだけど、比較対象ウェアレルって言ったら納得してくれた。

なんかテリーには、評価されなさ過ぎたせいじゃないかって心配されてしまったけど。

その後にジェンガのような小さなゴーレムで、テリーたちの気を逸らすことに。

ウォーとメンス用にも用意してた核に、術式を書かせて素体を作らせた。

粘土に埋め込んで焼成させて、ただ小股で歩くだけの手乗りサイズのゴーレムだ。

そしてそれぞれ作ったゴーレムでレースをさせる。

単純な動作でも造り手によって起きる不具合が違うから、真っ直ぐ歩けなくてけっこう白熱した。

「さ、今日はまず青いアイアンゴーレムの見学に行こう」

翌日、僕はルキウサリアの王城でまたテリーたちと合流を果たす。

錬金術するからってことで、ルキウサリア国王が見学者つけたいって言ったけどそこは拒否。

弟との約束優先です。

代わりに同席させる人員はレーヴァンともう一人許可した。

というか、巻き込んだ。

「お、お初にお目にかかります。わたくし、ゲオルワフ・ウィチェフ・ユダーレヴ・リトヴィシミャンと申します」

震える声でアイアンゴーレムが隠された厩で自己紹介するのは、錬金術科卒業生のジョー。

皇子二人と両手で足りる程度の随行者しかいないのに、ガチガチだ。

完全に第一皇子の姿してる僕に気づいてないし。

学園のほうでどう理由づけしてるのか、今日はウェアレルも一緒。

顔見知りってことでジョーをフォローしてるけど、ガチガチ。

あらかた、アイアンゴーレムを捕まえた経緯や方法の説明だけはなんとかこなす。

「それでは、室内へと移動しまして、詳しいことはそちらで」

もうウェアレルが進行役として移動を促し始めた。

行く先は、誘拐未遂から急遽用意された錬金術実験室。

と言っても、厩近くの穀物庫を数日で整えた部屋だ。

色々設備が足りない場所で、火を使う場所はレンガを敷いて造り、水は近くの井戸から汲んで貯水タンクに毎日入れるそうだ。

僕としてはもっと換気をどうにかしてほしい造り。

これは後でルキウサリア国王に要相談だな。

「さて、ここからは喋ってもいいかな」

「兄上、あのアイアンゴーレムはどうして青いの?」

「うーん、鉄が何かに反応してるはずなんだけど、中の術式に素材を変えるような機構はなかった。けど、大きく破損した状態で内部に現存してる。そこが他のアイアンゴーレムとの違いに繋がってるんじゃないかと思ってるんだ」

「へ、え? いつ、調べ、え?」

僕とテリーの会話に、ジョーは困惑の声を漏らすけど、僕に気づいたわけじゃなく、アイアンゴーレムの内部を知ってることに関してのようだ。

「ゴーレムの作り方はわかってるから、問題は鉄を青くする方法。そこは錬金術科に興味を持つ学生がいるからそちらに任せるつもりでいるんだ」

「そうか、あの小さいゴーレムは遊びだけじゃなくて、研究実験用に使えるのか。つまり、兄上がそちらに手が回らないから?」

「そうだね、そろそろ帝国に持ち帰るための技術を考えないといけないし。年数のかかることには手を出せないかな」

「持ち帰り、そうか」

持ち帰りとなるとルキウサリアを頼れないからね。

なんて話してる間も、ジョーは気づかない。

「…………ウェアレル、これ、そのままでもいいかな?」

「意図しないタイミングで気づいた場合、漏らしそうで不安がありますね」

それはありえそうだ。

だったら、やることは一つ。

僕はジョーがよそ見してるのを見計らって声をかける。

「それで、先輩。石材は何処にありますか?」

「それならこっちに、って、んえ!? アズ?」

催しもやって指示出しも聞き慣れてたせいか、すごく反射的に答えたジョーは、次に声を裏返らせた。

そしてキョロキョロしてるってことは、これで気づかないのか。

なんて思ってるとテリーが感心したみたいに頷いてた。

「兄上の変装は本当にすごいな。私もできないかと思ったけど難しい」

「僕の場合はほとんど表に出なかったからね。テリーは顔を覚えてる人が多いから」

言いながら、僕は黒髪をかき上げてジョーに見せる。

顎が外れたように驚いてるジョーは気にせず、簡単に身分を隠して入学してたことを説明して聞かせた。

その上でルキウサリア国王の周辺しか知らないことも伝えて口止め。

「というわけで、後でルキウサリア国王陛下のほうから口束の呪文の話があると思うのでよろしくお願いします」

「おぉ、あ、いや、はい。つ、謹んで」

「今さら面倒なので僕にはそのままでいいです。というか、下手に取り繕って他の錬金術科の前でボロを出されても困るので」

「あの、他に知ってる者は?」

「錬金術科にはいませんよ」

「おぁぁぁ…………」

頭を抱えてしまったので、肩を叩いて慰める。

「今年の卒業生の中に引きずり込める人がいたら、吐き出せる相手もできるので頑張ってください」

「ひど…………」

壁に寄ってたレーヴァンがぼそっと漏らす。

そこはルキウサリアの錬金術師確保のためにはいい仕事だって言ってくれてもいいと思うんだけど?

まぁ、ジョーは一時しのぎの説明人員だから、この後質問攻めにされるんだろうけど。

「さーて、それじゃ昨日作った核からゴーレムを作るよ。先輩も素体づくりは初めて見るんですから、いつまでも頭抱えてないでください」

「皇子…………アズが、皇子…………ひぃ」

青くなったり赤なったりしてるあれは、僕に関しての振る舞いが黒歴史化してる感じかもしれない。

うん、最初は木っ端貴族扱いだったからね。

まぁ、それも初手で叩き返したけど。

「は! ヴィー先生なら?」

逃げ道のようにそんなこと呟くけど、それをウェアレルが首を横に振って止めた。

「知ってのとおり、以前からアーシャさまに執心していますので、露見の恐れが高く授業にも差し支えるとのことで、何一つ教えていません。いっそ、一番ばれると面倒なので気をつけてください」

「おぁぁぁ…………」

またジョーが唸って頭を抱える。

もう気にせず、僕はゴーレム作りの準備を始めた。

「兄上、いいの? 放っておいて」

「ジョーは指示を出して動く限りは腕がいい。自分で考えても空回りするタイプだ。上からきちんと命令されれば従うし十二分に働くよ」

僕たちはあくまでお客だ。

だからルキウサリア国王のほうから話しが行けば、もう悩まず従うだろう。

貴族意識が強くて上下関係に拘るからこそ、上には従順。

同時に後輩って意識のある僕が言っても、今は無駄に悩むことになるだけだ。

「扱いやすい人物ということですね」

ゴーレム作りを見るために寄って来たメンスが、ズバリ言っちゃう。

ウォーも一緒に来てるけど、あんまりな言い方に、メンスの不動の横顔を凝視してる。

メンス、実はノマリオラタイプだったりするのかな?

「兄上、ここでする必要もなかったんじゃない?」

「この場の点検も必要だったし、どうせなら見たくない? 青いアイアンゴーレム」

案内した理由を言えば、テリーは笑顔になる。

うん、この後またジョーへ改めて説明とか、ルキウサリア国王との取り持ちとか面倒ごとあるけど、僕にとっての報酬はこれで十分。

ジョーの負担とかは、それも仕事だと思ってほしい。

「じゃあ、昨日作ったゴーレムと工程はほぼ同じ。ただ、大きさと形状、素材も違うから、術式も変えていく必要がある」

言いながら、僕は術式を素体を作るための布に書き込んでいく。

多分これ、布も加工によってゴーレムの質変わりそうなんだよね。

ロックゴーレムとアイアンゴーレムの時点で中の素体を構成する素材は違ったし。

そうなると、外見を形作る材質以外にもカスタマイズできる。

で、実際にカスタマイズしたら合体ゴーレムができた。

さすがにそこまでテリーに教えるのは早いけど、それっぽいヒントは説明の中に入れていく。

「さて、この素体の周りに、ゴーレムを形作る材料で囲むよ」

「それはどうして?」

「術式が発動すると、指定した素材を取り込んで再構成するんだ。その時に構成が失敗するとゴーレムが歪む。だからできるだけ均等に素材で囲むほうがいい」

説明を聞いたウォーはわからない様子で首を捻った。

「これは魔法と違うのですか?」

やっぱりそうなるか、よぉし、ここは手間を惜しまず説明して、兄の株を上げるぞ。