軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

420話:ハリオラータの報復5

僕たちはルキウサリアへの帰路、ハリオラータに襲われた。

罠を見破り、魔法も防いで、その上で幹部らしいクトルを名乗る人物に迫る。

けどそこにもう一人幹部らしい目立つ傷のバッソという、敵も味方も爆破して笑うヤバい奴が現れた。

結果として幹部らしい二人には逃げられてる。

捕まえたハリオラータの魔法使いは、半分が怪我によって治療が間に合わず死んでしまうことにもなった。

そこは負傷した味方の救助が先だったから、後回しにしたせいだ。

「こちらの被害が軽微で済んだのが成果と言ってもいいくらいだ」

馬車で合流したソティリオスが、慰めなのかそんなことを言う。

僕は今皇子かアズロスか、周囲にはわからない状態なのでともかく馬車の中へ入った。

「そっちも爆破には巻き込まれた?」

「お前は…………。本来巻き込まれるようなところに皇子が片手で足りる程度の護衛しか連れずに行くな。知ってる側の身にもなれ」

どうやら僕がいる場所が爆破されて、ソティリオスは気を揉んだらしい。

僕はヘルコフのお蔭で無傷だ。

ヘルコフも、セフィラとウェアレル、イクトの三人がかりで魔法を使い、怪我はほぼ塞がってる。

「ともかく今は、帝都へ戻るよう列を組み直そう」

「いや、このまま進んだほうがいいよ」

僕の意見に、ソティリオスは目で先を促した。

「ここは帝都に近すぎる。これはハリオラータの勢力範囲ってことだ。帝都近くにアジトがあったし、そこを潰されてもまだ動かせる人員があれだけいた。その上で今日の襲撃だ。向こうが立て直して追い駆けてこられないようにしたほうがいい」

「追い駆けてくるのか? あれだけ味方さえも巻き込んだというのに」

「ウェアレルの魔法に興味を持っていたし、僕がハリオラータの道具を使ったのにも興味を示した。その上でまた誘いに来るってことも言ってるから、追ってくるだろうね」

「は? はぁ!?」

そんな、僕に対して正気を疑うような顔しないでほしい。

こっちだって何考えてるかわからなくて不気味なんだ。

「ハリオラータは魔法のために犯罪もするっていう危ない集団だ。こんな街道しかないようなところで襲ってきたのも、あの爆発する魔法の実験の経過観察を含めた襲撃だったとしか思えない。その上で今さら、魔法使ったり活用したりする相手にも興味持つなんて…………」

「いや、九尾ならわかる。あの円尾などは興味を持たれてしかるべきだろう。だが、何故アズロスにも興味を持った?」

「うーん、杖の道具に自信があったからかな。それで逆に動けないようにしたからとか?」

「上回られたことに対する敵愾心よりも、身の内に招いて研鑽させるということか?」

「さぁ? 犯罪者の考えることなんてわからないよ」

「確かにハリオラータは魔法への執着があるとも聞くが。結局、私への報復は?」

「そこもわからないなぁ。気が変わったか、最初からただのポーズだったか」

失態への報復として、最初はちゃんとソティリオス狙っていたんだ。

けど幹部クトルの言葉は、完全に目的変わってた。

いっそ場所と最後の爆破の範囲、バッソの狂気的な言葉を考えると、最初から魔法の実験のついでに襲ってきたとも考えられる。

「いや、だが確かに立て直して追ってくる可能性があるなら先に進むべきか」

「なんか妙に不気味だし。なるべく先を急いだほうがいいと思うよ」

僕たちは意見を揃えると馬車を出て、代表者に指示を出した。

荒れた街道の復旧なんかは、一部を帝都に戻して報告して応援を連れて戻るようにする。

そして僕たちは急いで先へ向かい、行く先の町で報告して、ハリオラータの回収をお願いした。

「はぁ…………。お前と行動するといつも何かしら起こらないか?」

「いや、それはおかしい。僕が外に出るのこれで五回目くらいだよ」

「アズロスも含めてだ。いや、第一皇子としても多すぎるだろう。派兵に入学体験に入試に」

「どれも僕が何かして起こったわけじゃないのに」

「本当に何もしてないのか?」

ちょっと、なんでそこで疑うのソティリオス?

「僕は基本的に、後手にしか回れないんだ。必ず何かやらかす人が先にいるんだよ」

「そう、言われればそんな気もするが…………」

気のせいじゃなくて事実だってば。

「…………ちなみに、入試の時の誘拐未遂事件はなんだったんだ?」

「そう言えば外交官がとか言っててわかってなかったね。あれ、たぶんソティリオスを誘拐する前段階だよ」

「は?」

「僕と違って、ロムルーシへの留学って入学前から決めてなかった?」

「それは、そうだ。というか、本当にあの留学は欠員が出たから急に決まったのか?」

本当だから頷いたんだけど、ソティリオスが目元覆って呆れた。

皇子がそんなことするなとか続きそうだから、先に話を進めよう。

「授業進度の調整っていう慣例みたいだったし、ユーラシオン公爵の事情的にもロムルーシのイマム大公と話し合う必要も知る人は知ってる。で、そこにソティリオスが派遣って話があれば、トライアン王国の港町なら情報として先に得られた可能性は?」

「…………あるな。留学へ私がという話も、イマム大公と折衝するために人員を送ることも」

「誘拐未遂に遭った令嬢の父親の国ってさ、ルキウサリアからトライアン王国へ行く途上だったよね?」

情報を上げて行ったら、ソティリオスが手をどけて僕を見据える。

「つまり、令嬢を人質に取られた上で、トライアン王国へ行く途中で私を誘拐する手駒に?」

「さらに帝都にいたことを考えると、ユーラシオン公爵を見張ることもさせるつもりだったかも?」

外交官というそれなりの立場なら、直接帰国しなくても名義を使ってソティリオスを呼び出して攫わせることも可能だろう。

「あと、割符の時にさ、割符を奪うんじゃなくて、ソティリオスごと攫うことを指示されてたっぽいし」

「あれもか…………!」

「まぁ、今にして思えばって話だよ」

大貴族の子弟をただ事件に関与しただけでさらうのは思い切りが良すぎた。

それは王侯貴族相手にも犯罪をするファーキン組とは言え、あまりに考えなしだ。

「もしかしたら港町での誘拐も視野に入れてた。けど内部情報を持ち出されたって別の失態に焦って、どっちを優先すべきか迷った結果、下まで指示がちゃんと届いてなかったとか」

「ない、とは言えないな」

「ま、その辺りにも関わった人は捕まえてあるし。そっちはもう情報出るのを待っていい」

そこまで連携して、ニヴェール・ウィーギントが引き抜きをしてたことを思うと、あれは最初から死兵にでもするつもりだったんだろう。

ところが実際に切り捨てられたのはニヴェール・ウィーギント自身だった。

皇太后が裏にいたことを思えば、結局引き抜いたファーキン組も捨て駒だったんだろうけどね。

「うーん、ハリオラータはどうしようかな。あんなとんでもない爆発物仕かけるって、絶対計画性なんてないよ。捕まえるとなると厄介だな」

「おい、待て」

僕が考えを呟いてたら、ソティリオスに止められた。

走る馬車はけっこう急いでるのに、向かいにいる僕に手を伸ばしてまで。

「危ないよ」

「それはお前だ」

指を差された。

「何を考えている?」

「え、来るって言うからには捕まえようかと。今度は仕掛けは全部見つけて…………」

「やめろ」

睨む勢いで止められる。

その上で、ソティリオスは何か気づいた様子でつづけた。

「まさか、犯罪者ギルドを作った全ての家を潰すつもりか?」

「できるならしたいけど、難しいよね」

「目指すな! ハリオラータの魔法使いもおかしいが、お前もおかしいからな!?」

ひどくない?

「ひどくない?」

言ってみたらお前が言うなって顔された。

ひどいよね?

「僕だって国一つを敵に回す大変さはわかってるよ」

「そこで大変くらいの感想なのがおかしい」

実は最後の一つの家は、国持ちの犯罪者組織だ。

しかも傭兵稼業で起きた国という、戦争をするために生まれたような武装国家。

そこから出てきた一家が、帝都で犯罪者ギルドを作ってたんだよね。

基本的な犯罪家業は誘拐して兵隊化と武器装備の違法売買。

誘拐被害者を傭兵として雇用する上に、武装国家から武器が流れてくるって、絶対国も噛んでる。

「言っておくがな、相手にすることになる国は一つじゃない。最低二つだ。…………あそこは傭兵が使う武器を売る国と強く結びついてる」

「あぁ、なるほど。それは面倒だね。うん、その時にはちゃんと考えて動くことにするよ」

「動くな!」

そうじゃないって感じで怒られた。

ソティリオスの助言受け入れたのになぁ。

まぁ、実際問題今の僕にそっちの傭兵国家をどうにかする力はない。

今は、ない。

けど、自分で来ると言うならハリオラータは対処できる範囲だ。

さすがに今日大怪我をしてたクトルとバッソは追って来ないはずだから、少しはましなはず。

(安全第一ではあるけど、さてどうしようかな)