軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

419話:ハリオラータの報復4

ソティリオスがユーラシオン公爵家の手勢で前に出た。

攻める姿勢にハリオラータは混乱もあって押される。

「思ったより抵抗が弱い?」

「ハリオラータは魔法使いが主体の犯罪者ですから、距離を詰められると弱いですね」

「体を鍛える暇があったら魔法を磨いてる奴らですよ。身体強化の魔法を研鑽した奴がいなけりゃこんなもんです」

イクトに続いてヘルコフが教えてくれた。

ハリオラータは犯罪者ギルドを作った四家の内の一つ。

地元権力者と癒着して悪事を働くサイポール組、一般人を巻き添えに暴力性を発揮したファーキン組、そしてハリオラータは魔法を使った悪事を働く組織だ。

だから構成員も魔法使いということらしい。

「だが、あのウェアレルと打ち合ってる奴は別格みたいですね」

「どうか、我々の前には出ないよう、ご注意を」

ヘルコフが行く先に注意を向け、イクトは僕に釘を刺した。

僕たちはソティリオスがハリオラータとぶつかる横を駆け抜けている。

独り指揮官に急襲を仕掛けたウェアレルのフォローに向かってた。

「なんだ、九尾ってのは実戦でも行けるもんだな!」

行く先から何処か楽しげな声が響く。

同時に雷が落ちるけど、それを寸前で弾くように土が盛り上がるのが見えた。

「まさかあの速さの魔法に対処できる魔法使いか」

イクトが魔法による攻防を見て、警戒の滲む声を漏らす。

ウェアレルが雷を落とすと、それだけで人間では対処の難しい速さだ。

その上ウェアレルは魔法を形成して放つまでが早い。

なのに敵はそれに対処して魔法を使ってる。

ウェアレルに劣らない腕前の魔法使いだった。

「お前、ハリオラータに入らないか? それだけ腕を磨いたなら、魔法でやりたいことあるんだろ? こっちは組織でお前のバックアップをしてやる!」

なんか勝手に勧誘してる!?

僕はヘルコフとイクトの間から、ウェアレルと戦う相手を視界に収めた。

「九尾の何人かが、ハリオラータを名乗る不審者に勧誘されたという話は聞いてますよ。もちろん、誰もそんな話に乗りませんでしたが!」

ウェアレルは打ち出された炎の塊を雷で貫いて、そのまま槍のように敵の魔法使いに突きつける。

けどその雷の槍は、渦を巻く水の壁を水蒸気に変えて消された。

水蒸気の向こうから走り出して石を次々に放つ魔法使いは、引き締まった体だけど中肉中背のどこにでもいる人間種。

顔立ちも何処にでもいそうで、特別悪さもしそうにないように見える黄緑色の髪の人物。

ただ実際目の前でウェアレルと戦い、ハリオラータに勧誘までしてる賊だ。

「あれ、捕まえられそう?」

「あれだけ動いて魔法にぶれがないとなると、やり手ですなぁ」

「下手な介入はこちらの被害にもなるでしょう」

ウェアレルを助けに来たけど、下手な手出しはウェアレルの不利にもなるようだ。

「だったら、あのハリオラータの気を逸らすようなことは?」

「俺は速さ的に無理ですね。できるとすればイクトでしょうな」

「遠巻きに位置取りしなければ、攻撃に巻き込む盾にされそうだ」

「少しの間でいい。隙さえあれば、これで」

僕はそう言って、ハリオラータの杖を見せる。

動けなくなるというのは知らせてあるし、術者には影響がないとも言ってある。

イクトは頷いて一つお願いをしてきた。

「ではその動きをセフィラを使って伝えていただきたい」

「んじゃ、俺は盾兼目隠しってところだな」

言われたとおりセフィラでウェアレルにこっちの作戦を伝え、イクトが微妙な位置取りでハリオラータに圧をかける。

ウェアレルもそっちと連携して、ヘルコフのほうへと追い詰めるように魔法を使い始めた。

「悪い連携じゃないが、こんなことでそうそう俺を捕まえられると思わないほうがいい」

「だろうね」

ハリオラータが余裕を口にするけど、僕は範囲に入ったのを確認して、走り出すと杖を地面に突き刺した。

その行動にはさすがに目を見開く。

それでもすぐに余裕の笑みを取り戻した。

「残念だが、ハリオラータの幹部には効かないように…………」

「それも知ってる。…………落として!」

僕は大きく後ろに飛ぶと、それをヘルコフがキャッチしてそのまま背を向ける。

僕に注目してハリオラータが反応できない内に、ウェアレルは杖に雷を落とした。

瞬間、破壊された杖から新たな魔法が発生する。

一定範囲の対象を強制的に動けなくする、あれだ。

「ぐ…………!?」

それにはハリオラータの幹部らしい男も、地面に膝をついて固まる。

こっちの魔法には抜け道がないことをセフィラが暴いていたんだ。

もちろん、僕以外のウェアレルやヘルコフも巻き込まれるんだけど。

(セフィラ、お願い! ウェアレルとヘルコフを)

(対象は一名のみ。家庭教師ウェアレルは自ら対処しています)

(え、どうやって?)

(実際に体感した主人と旧友に話を聞き、自ら仮説を立てていました。体内の魔力を重しに変えると見て、魔力を可能な限り抑制しています)

そう言ってる間にヘルコフが復帰する。

セフィラは影響受けないからこそ、逆に外部からの魔法で干渉して解いたんだ。

一度かけられた魔法による不調を、別の魔法をかけることで上書きできた。

ウェアレルも自力でどうにかして立ち上がる。

ただそれは劣らない技量のハリオラータの幹部も、一拍遅れて足に力を入れた。

でも、動けなくなる隙があればそれで良かった。

ハリオラータの幹部の首筋には、すでに剣が突きつけられている。

「動くな」

「はは、これは参ったな」

イクトの脅しではない警告に、ハリオラータの幹部は動きを止めた。

イクトは一人効果範囲外にいたんだ。

けどハリオラータの表情から、余裕は消えない。

まだ何かあるのか。

この状況でも助かると確信できる何か、仕かけ?

(セフィラ、探して)

(一名こちらに急接近、敵です)

予想外だったけど、警告を受けて、僕はセフィラに教えられた方角を指差す。

瞬間、ヘルコフが咆哮を上げた。

身体強化で放たれたその音は確実に耳を傷め、体を芯から揺らす波動になって叩きつけられる。

「う…………!?」

突然の轟音に、素早く接近していた小柄な人物が足を止めた。

顔の下半分を襟巻で巻いて隠すような怪しい出で立ち。

その姿にウェアレルが攻撃の動きを見せると、ハリオラータの幹部は刃も気にせず魔法を放つ。

もちろんイクトも首を切ろうと剣を動かした。

ただその一瞬の選択の中で、足を止めた小柄な人物は笑う。

襟巻の合間から見える口元には、裂けるような目立つ傷があった。

「淀みの魔法使いを真っ当な脅しで止められると思うな」

傷の人物が言うと同時に、僕らの足元が突如として爆発した。

その爆発にはハリオラータの幹部も、傷の人物も巻き込まれ一緒に吹き飛ぶ。

(はぁ!? 自爆!?)

(魔法による回復で治癒できる範囲です)

冷静すぎるセフィラだけど、僕を庇って抱え込んだヘルコフは降り注ぐ砂礫を浴びて苦痛の声を漏らした。

「はははは! いい爆破だ!」

「いっててて。バッソ、地伏罠見破られて怒ってんだろ?」

「もっと大爆破! 大叫喚が起こるはずだったんだ!」

傷の人物は予想以上にヤバい。

そしてそれを当たり前の様子で語る幹部もいかれてる。

何せどちらも血だらけで、決して軽い怪我じゃないんだ。

「よし、それじゃ退くか。お前ら逃げろー! 逃げない奴は死ね」

「そら、どーん!」

とんでもないことを言う幹部に続いて、バッソが地面に手を突いて叫んだ。

瞬間魔法が発動して、ハリオラータたちの足元が爆発。

敵も味方も巻き込み、場は混乱して誰も彼もが逃げ散る。

見たこともない遠隔爆破という希少な魔法なのに、扱い方が危険極まりない。

「なんてことするんだ…………!」

「じゃ、そこの学生? も面白いな。俺はクトル。また誘いにくるぜ」

「え!?」

そんなことを言って逃げ去るクトルとバッソ。

僕の返事なんて聞いてない。

こっちは怪我もあるし、味方の救助もあって追えない。

だから僕は心からの思いを叫ぶしかなかった。

「来るなー!」

さすがにこれは、捕まえるより先に身の危険と周りの被害が半端じゃなさ過ぎる。

サイポール組にも、ファーキン組似も劣らない危険性はわかったけど、正直あまり会いたい手合いじゃなかった。