軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

418話:ハリオラータの報復3

地面の杖を引き抜くと、後ろからソティリオスに声をかけられた。

「それは? 杖か」

僕がわざわざ拾ったから気になったようだ。

「杖と言えば杖なんだけど、レクサンデル大公国で襲われた時に、ニヴェール・ウィーギントが使ってた物と同じなんだ」

「第二皇子が襲われたという? どんな効果だ? 何故杖を地面に刺した?」

ソティリオスが食いついた。

レクサンデル大公国にはいなかったし、離れた帝都では詳しく知れない。

しかも僕と入れ違うようにルキウサリアに戻っていたから、たぶん間接的で、外に出せる程度の情報しか聞いてないんだろう。

それでも錬金術科が関わったと知ってれば、もう僕がアズロスだってわかってるんだし、敵の道具の使用方法や効果を知ってるものとして聞いて来てる。

まぁ、知ってるんだけどね。

「簡単に言えば、身動きを封じる魔法が込められてる。その上自爆機能付き。無傷で回収できたのは運がいいよ。レクサンデル大公国で使われた物は、使われた魔法も何もわからないよう自爆された後だったから」

そして今絶賛、セフィラが解析中。

いくらか対策のために構造や仕込まれた術式の目星はつけてたけど、答え合わせに夢中みたいだ。

「さ、今は車列の先頭へ急ごう」

「ハリオラータは報復として、お前の狙いはなんだ?」

僕が動く理由をソティリオスは訝しむらしい。

狙われる友達のためって言っても、この状況じゃ説得力がないね。

ソティリオス置いて行くつもりで動こうとしたし。

「今は目的をはっきりさせることかな。まずは馬車を狙うか、中の人間を狙うかを見定めよう」

馬車の中には一人いるように見せかけたこの状況で、最後まで守られるのは皇子だから馬車の守りはいちおう固い。

そして外に出た僕とソティリオスは、顔を隠してるからどちらかわからない。

つまり皇子か帝国の権威の失墜を狙うなら、堅い守りでも奇をてらうこともして馬車を攻撃する。

失敗の報復でソティリオスを狙うなら、先頭に移動する僕たちを狙う。

「ハリオラータと当たりをつけた理由は?」

走りながらソティリオスが聞く。

賊は一度攻撃の手が緩んだ。

ただ新たな命令を受けたらしく、走る僕たちを狙って魔法を放ってきた。

もちろん車列を守る兵がいるから、そう簡単に攻撃は通らないけど足を止める余裕もない。

「狙いはソティリオスだ」

「つまり、報復か。本当に、予想どおりだな。…………何故犯罪者の思考にそこまで詳しいかは、後で聞く」

どうやら切り抜けても、僕は詰められるらしい。

うーん、犯罪者ギルドを潰したことは伏せて、大聖堂きっかけで調べたって話すか。

後は、市井に詳しい側近たちってことにしよう。

先頭が見えてきたところで、そっちでも戦いが起ってるのが見えた。

「そんなんで抜けられると思うな!」

身体強化の魔法で近づく相手を放り投げるヘルコフ。

それを背後からサポートして魔法を連打するウェアレル。

ちなみにイクトはずっと馬車を降りた時から無言でついて来てる。

「二人とも!」

僕の声にヘルコフは即座に退く。

同時にウェアレルが強い風を吹かせて敵に距離を取らせた。

「ちょうど良いところに。こちらを確認していただけますか」

「あ、そっちでも? こっちもほら」

ウェアレルが差し出すのと同じ杖を僕も見せる。

それを見てイクトが敵の行動の方針を口にする。

「つまり、その杖の力で守る者たちを無力化。爆発物に気づかずにいれば、混乱の隙を突かれたかもしれません」

ただ結果は不発だ。

地雷は踏む前に気づいたし、杖も使わせる前に没収した。

「狙いはソティリオスだ。ハリオラータの報復だろうね。これだけやって引かないなら、まだ手があると思う」

「聞く限り後手に回ると厄介ですね。だったらこっちから敵の頭目潰したほうがいいでしょう」

ヘルコフの言葉に、ソティリオスは頭痛を堪えるように頭に手を当てた。

「手慣れすぎてるだろう…………!?」

「なんでか犯罪者ギルドの残党って、僕を巻き込みに来るんだよね」

暗殺狙ったサイポール組しかり、入試の団体狙ったファーキン組しかり。

今回はソティリオスを狙ってハリオラータだ。

「ソティリオスが狙いでここに視線が集中してる。だったら、目をくらまそう。ウェアレル、上から敵を確認して」

「そんなことをすれば魔法で集中砲火だぞ」

ソティリオスが止めるけど、ウェアレルはすぐに魔法の準備を始めた。

僕は気にせずヘルコフとイクトに指示をだす。

「爆発物は上に荷重をかけなければ危険はない。そして街道から逸れると埋まってる爆発物を踏むことになる。けど、街道に大勢で入り込めないのは向こうも同じ。だから…………」

「掘り返して投げつけますか?」

「近くのものはね。他は面倒だからもう誘爆させる」

「わかりました」

僕の言葉にイクトはすぐに動き出し、ヘルコフも続く。

けど聞いてたソティリオスは絶句してた。

他の人たちは攻撃をしのぐのに必死で聞いてないようだ。

(セフィラ、誘爆と被害がこっちに出ないよう地面の硬化、それと爆風の誘導)

(了解しました。…………敵側には地雷とは別の爆発に関する魔法が仕掛けられています)

(うわ、深く踏み込んでも攻撃してくるつもりかな? ともかく馬車の側のものは誘爆させてしまおう)

セフィラの計算上、こっちに被害が出る距離の地雷を三つ掘り返した。

前世ほど繊細な物じゃないから、ボタンよろしく一度押し込まないと発動しないらしい。

ただ押し込むと、問答無用で上下に分かれてた魔法が一つになって発動する。

殺傷能力は高くないけど爆発力が強いようだ。

その上でご丁寧に四散する金属片も仕込まれてる。

殺傷能力というより、確実な足止めのための道具だった。

「一つは無力化して確保。間に棒噛ませるだけでいいよ。で、残り二つは向こうに投げて」

そう言うと、ヘルコフとイクトが飛距離を競うように思いっきり振りかぶった。

敵方は何を投げられるかわかってるから、あわてて退避し攻撃がやむ。

地面に落ちて転がると、遅れて術が発動して爆発。

次いでセフィラが範囲外を誘爆させて処理した。

金属片は飛んでこないけど、爆風はすごい。

そして埋められてた土をまき散らす砂ぼこりが辺りを覆った。

そのタイミングでウェアレルが上に跳び砂埃の上に出る。

「う…………跳んだ? そうか、こんな状況では攻撃もままならない」

「そういうこと。けど、ちょっと砂埃立てすぎたかも、目が痛い」

ソティリオスに答えて、僕はこすりそうになる手を止めて耐える。

そこに落下の勢いを風で殺してウェアレルが戻った。

「街道を見下ろせる小高い場所に、指揮官らしき男が一人。私と目があったにもかかわらず笑っていました」

「そう、余裕なんだね。だったら、行って。ウェアレル」

僕の指示でウェアレルはすぐさまもう一度跳ぶ。

今度は真上ではなく、敵の指揮官がいるだろう方向へ魔法で勢いをつけ、敵の頭上を越えた。

その風で砂埃が晴れていく。

(セフィラ、状況は?)

(地雷と呼ぶものの投擲により、指揮系統は混乱。すぐさま今までのような魔法による間断のない攻撃は不可能です)

(ウェアレルは?)

(敵の指揮官と交戦開始。その動きに敵方が動揺しています)

狙いどおりに動いてる今がチャンスだ。

「反撃できない今の内に叩くよ! けど敵の深追いは駄目。まだほかの爆発物があるかもしれないから」

「…………あぁ、そういうことか! お前に従うのが一番早いとわかっているからか。なら、狙われてるのは私だ。先を行かせてもらう!」

もう自棄かと思うように叫んだソティリオスは、その場で顔を露わにした。

僕とは髪色が違うから、すぐに標的だとばれる。

ただユーラシオン公爵家からの護衛たちに打って出るよう命令を出して自分から敵の目を集めてくれた。

まぁ、それもウェアレルに先越されてるけど、それは言っちゃいけない雰囲気だ。

ただソティリオスの思い切りのいい動きのお蔭で、僕は完全にフリーになる。

「相手はまだ未知の魔法の道具を持ってる可能性がある。何か行動される前に制圧して」

「わかってる。さっきの杖はまだあると思うか?」

「たぶんね。範囲的にこの長い車列全部に影響及ぼすには二本じゃ足りない」

「使わせない以外の対処は?」

「発動して広がる光を跳んで避ける。完全にかかっても僕なら対処はできるから動かずに救助を待つのもありだよ」

初見じゃそんなことできなかったし、さっきまでは取れない選択だ。

けどもうセフィラが完全に解析してしまったから、できることになったのだった。