軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

417話:ハリオラータの報復2

ルキウサリアへの帰り、何もない街道に車列は止まることになった。

「いったい何があった?」

ソティリオスが平然としてる僕に聞く。

ただ答える前、問いかけた次の瞬間、前方で爆発が起こり馬が悲鳴のような嘶きを上げた。

これはさすがに僕も驚く。

(セフィラ、何?)

(地面に爆発物あり。魔力を感知。刺激を与えることで爆発するようです)

(地雷!?)

(単語に該当なし。詳細を問う)

この世界に地雷はないらしい。

いや、今まではなかったか。

確実に今地雷らしきものが爆発したんだから。

「おい! 何があったか報告をしろ!」

ソティリオスは即座に危険はないと見て、御者に対して声を上げる。

ただ御者も危険物への注意が行われたことと実際に起きた爆発しかわからず、明確には答えられない。

その間に僕は、地雷についてセフィラに説明してた。

今回はさすがに好奇心を後回しにはできない。

だってすぐそこに脅威があるんだ。

対処を考えないと。

(地雷という兵器について理解しました。先ほどの爆発は、加圧により発生したと推測。形式は術式二つを接触させることで可能としたのではないかと推論。しかし爆発音から想定する威力が強すぎます)

(そこはたぶん、火以外の術式組みこんで威力を底上げすることで、吹き飛ぶ方向に威力を高めたんじゃないかな)

話ながら、僕はフードを被る。

これはアズロスとしてセフィラが操ってた人形に着せてたものだ。

「待て。手慣れ過ぎてる、じゃなくて。何処へ行く気だ?」

妙な言い間違いをしたソティリオスも、突然の事態に慌ててるのかな?

ただ状況は待ってくれない。

僕はセフィラの警告を聞きつつ、馬車のドアに手をかけた。

そしてノブを回すと同時に蹴り開ける。

「ぎゃ!?」

「おとなしくしておいてね」

僕は、馬車の側に近寄ってた不審者を踏む形で車外へ飛び降りた。

そして不審者が持ってきた箱を持ち上げその場で回転。

砲丸投げよろしく回転の力を使って、僕たちがいる道から離れた所へ放り投げる。

(ゼンマイ式の装置を確認。すでに巻かれているため、すぐに退避してください)

(わぁ、時限装置付きの爆発物を馬車の下に設置するとかやめてよー)

僕はセフィラの警告に従って、馬車の中へと飛び込んで扉を閉めた。

踏んだ不審者は馬車の後ろにいた兵が回収に動いてたから放置だ。

そして座席に座り直したところで、外から新たな爆発音が響く。

今度は近いから僕が投げたやつだな。

「あの大きさでこれって、やっぱり爆発の規模が大きすぎるかな?」

「お、まえ…………」

ソティリオスが顔を覆って呻く。

けど待ってあげる余裕はないんだ、ごめんね。

僕は御者席の窓を開けると、外へと声を張り上げた。

「賊はハリオラータ! 魔法による仕掛けがすでに設置されている! 道から極力外れるな! 街道から外れた場所に伏せているぞ!」

言って、御者席の窓を閉める。

途端に、向かいの席からソティリオスが腕を伸ばして僕を捕まえた。

「待て、なんだ今の口調。まさか私の真似か?」

「え、だってユーラシオン公爵家からの護衛もいるし。僕が何か言うより聞き入れてくれるかなって」

非常事態だから、ちょっと声違うくらいは聞き逃してくれたようだ。

実際馬車の外では、僕の言ったことを周囲に伝達する声が響いてる。

「待て、本当にちょっと待て。何故そんなに落ち着いている?」

「相手に先手打たれた以上、慌ててもしょうがなくない?」

「どう考えても異常事態だ」

「そうだね。まさか速攻で皇子の馬車破壊に動くとは思わなかったよ」

話してる内に、ソティリオスに両腕を押さえるように掴まれる状況になった。

次のために動きたいんだけど、ソティリオスからしたらまた飛び出させないためかな。

「こんな事態、慣れるほど経験があるのか?」

すっごい信じられないみたいな顔された。

「ないない。こんなの一年に一回も、いや、一回くらいなら? うん? 二回くらいは、あるかも?」

「一生で一回二回ではなく、一年での話な時点でおかしい」

「入学してからだと、半分ソティリオス関わってるけど?」

言ったら顔がくしゃっと嫌そうに顰められた。

それ、僕の正体がばれた時のユーラシオン公爵に似てるね。

まぁ、心当たりありすぎて否定も言い訳もできないんだろう。

ロムルーシは行きと滞在中がすごかったからね。

「く、確かに入試の時もそうだ。ハドリアーヌ一行も裏では動いていたはずだな。その前は派兵の? そう言えば大聖堂で事件もあったか」

そうやって並べ立てられると、我ながら忙しい人生だ。

「混乱はわかるけど、今は身を守ることを優先しよう」

僕が現実的に言ったら、ソティリオスもようやくゆっくり答え合わせしてる場合じゃないと思いだしたようだ。

そして目はあわただしくこの馬車を守ろうと動く外の動きに向く。

「正直、この馬車はいい的だ。どういうわけか普通の魔法では考えられない威力の出る手段で攻撃してくる。ここで守りを固めるより、伏せてる相手をあぶりだしたほうが早い」

何せ行く道に地雷が埋められてるし、街道の横には伏せる敵がいる。

方向転換して後ろに戻ることも、この車列では無理だ。

だったらさっさと姿を露わにさせて、捕まえるほうがこっちも安全確保できる。

僕はソティリオスの手を叩いて離してくれるように促した。

「ともかく失敗の汚名返上なら、ソティリオスは狙われてる可能性が高い。どちらかわからないよう顔は隠しておいて」

言いながら、僕は座席部分を取り外して、アズロス代わりの人形を出す。

それには皇子の外出着として着てたマントを頭からかけて、ぱっと見人が座ってるように見せかけた。

「じゃ、僕は先頭に行って爆発の原因を調べてくるね」

「待て! お前が行くな!」

「僕じゃないとわからないと思うよ」

「外はすでに戦闘音が聞こえている」

「籠ってるより移動し続けたほうが的にされないって」

「ならば、私も行く」

「えぇ?」

あまり時間もないことをセフィラが伝える。

僕が投げた爆発物、あれをセフィラが行く先を操作して伏せてる敵の一部を巻き込むようにしたらしい。

それで逃げたり騒いだりで、敵の居場所が露見した。

そうなると隠れてもいられず、その一部が表立って攻撃をし始めたそうだ。

ハリオラータというのは魔法に特化した犯罪組織。

違法な魔法、研究、魔導書の売買などを行う、基本魔法使いの集まりだ。

違法なことをしてでも、魔法に傾倒するヤバい人たちとも言える。

「僕から離れないようにね」

「トライアンの港町のようなことをするなら止めるぞ」

ファーキン組に襲われて、ソティリオスが捕まった時のことかな。

あれは元はと言えば僕が捕まろうとしたから、ソティリオスが庇った。

さらにそれを、僕が助けにファーキン組のアジトへ侵入するという状況だったっけ。

捕まろうとしたか、アジトに侵入したか、どちらのことにしても止めるのかな。

仕方なく僕は杖を抜いて、セフィラの対応を誤魔化す準備をする。

手持ちの錬金術の道具は多くない。

基本エッセンスといくらかの薬だけだ。

「ともかく、まずは先頭に向かうよ」

「うぉぉおおお!」

馬車の外へ出た途端、杖一本でこの馬車を目指す賊と鉢合う。

見た目は魔法使いをほうふつとさせるローブと帽子の人物だ。

そしてこけるように地面へダイブ。

守るこちらの兵は脅威度は低いと、遠距離から放たれる殺傷力の強い魔法へ意識を戻した。

けど地面に四つん這いになった賊の手には見覚えのある杖が握られてる。

「ふへへ、これで…………! へ?」

僕は水のエッセンスを魔法で操って、杖を地面に突き立てる瞬間賊の手にかける。

エッセンによって魔力の流れを乱されたことで、杖に送るべき魔力が足りず、魔法の起動が不発に終わった。

ハリオラータだろう魔法使いが驚いてる間に、飛んでくる魔法に対処した兵が制圧に動く。

「な、なんでだ!? 魔法が、今確かに?」

「やぁ、錬金術は初めてかな? 魔法を使えなくされた気分はどうだい?」

抵抗を封じるため、僕はあえてそう声をかけ、相手を震え上がらせたのだった。