軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

416話:ハリオラータの報復1

「ひどい、親に告げ口なんて。僕は言わなかったのに」

「逆に言っていなかったことに、私は父諸共に驚愕しかない!」

馬車の中でソティリオスに怒られたから、逆切れしてみたら切れ返されました。

僕は今、ルキウサリアへの帰路についている。

ソティリオスと会った翌日、本館に呼び出された。

そしたら、父と妃殿下二人がかりで怒られたんだ。

どうやらソティリオスから、帰路で襲撃の恐れがあると聞いたユーラシオン公爵が、父に対策を聞いたけど、父にも言ってないから対策なんてないことが発覚したとか。

「私の父も慌てて、私兵をルキウサリアの兵への対応という理由でつけようと提案しに行ったんだ。だというのに、皇子の守りが宮中警護一人とは」

「家庭教師二人もけっこう戦闘できるよ」

ソティリオスにそう言う問題じゃないと睨まれる。

「…………本音は?」

「言ったら怒るでしょ」

「いっそルキウサリアへ帰る兵員だけのほうが襲撃者が気を抜くと狙ったか」

わかってるのに聞くのは意地が悪いと思う。

もちろん僕が否定しないと、ソティリオスは自分の膝を叩いて注目を強制してきた。

「帝国の皇子が、まともな護衛も用意されずに、襲われる。この外聞の悪さがわからないか」

「けど、逆にそれで捕まえられればさ…………」

「守りを厚くして抑止するのも被害を抑える。手順を踏んで捕まえるほうがいいに決まっているだろう」

ソティリオスにまでお説教されるけど、そう言う話はすでに妃殿下からされたんだ。

その上で父も加わって、僕が無理に危険に身をさらすことをすべきじゃないって怒られた。

「ただお蔭で、本当に皇帝陛下に何も申し上げていないのはよくわかった」

「最初からそう言ってるって」

「独断専行がすぎるということも、よぉくわかった」

めちゃくちゃ圧をかけられた。

これ話を逸らそうかな。

と思ってたらソティリオスが先に口を開く。

「そういう行動をとらなければ何もできなかったのはわかってはいる」

「ユーラシオン公爵に何か聞いた?」

仕事と家庭はわけるタイプみたいだし、そこは割り切って話すこともあるだろう。

けどソティリオスは首を横に振る。

「いや、現状家を出ることを掲げてる私には話せないと言われた」

「それもそうか」

跡継ぎなら確執でしかないから把握が必要になる。

けどそうでないなら、身内でもあまり広める話じゃない。

すでに皇太后がことを起こした後だ。

そんな時に、継承権が上の皇子は邪魔だから妨害してたなんて、家の中でも言うべきじゃない。

「だが、改めて第一皇子の状況は理解した。それで何をしたかの想像くらいはできる」

「あぁ、だから左翼棟に人がいないこと気にしてたのか」

実際はいる、見張りだ。

ストラテーグ侯爵から宮中警護、ルカイオス公爵や、ユーラシオン公爵の息のかかった者も配置されてるのは昔から。

けど、それだけ。

後は直接関わらない程度の使用人たちしかおらず、皇子として扱われてない。

だから皇子としてふるまうつもりもない。

そんな僕のスタンスとしては、左翼棟の現状に文句はない。

「あれはあれで気楽なんだけどね」

「…………そんなことに慣れるな」

「いやぁ、物心ついた頃にはあれが普通だったから」

何か言おうとするソティリオスに笑顔を向ける。

「それに仕返しもできる時にはしてたし」

「…………あの、初めて会ったルキウサリアの。あの時の言動は、いつからだ?」

「え、うーん、怒らない?」

「怒るようなことなのか。いや、今までの言動から、まさかあれはあの時の思い付きか」

なんか読まれてるなぁ。

「まぁ、うん。まともに相手するのめんど…………陛下の迷惑になるかもって思って?」

「今面倒だと言ったな?」

「あー、それより。ルキウサリア戻ってからの動き打ち合わせようよ。宮殿では結局そういう話できなかったし」

今度こそ話を変える。

ソティリオスは無茶な移動で弱っていたし、ちょっと回復して僕に怒ってまた悪化したし。

回復して左翼棟に来た時には、もう次に会えるのは一回だけ。

今日こうして移動する時に詳しいすり合わせをする予定を立てるしかなかった。

「二か月近く病気療養ってことになるんだから、上手く復帰しないと」

「く、どれくらいの人間が実態を知ってるかはわかるか?」

ソティリオスも考えなきゃいけないってことで、話に乗ってきた。

ルキウサリアとは魔導伝声装置で連絡を取って、ソティリオスが無事なことは報告済み。

その時点でルキウサリアは、ソティリオスの長患いを理由に王家の別荘を貸すという形で、学園都市自体からソティリオスがいない状況を作ったそうだ。

「ディオラとウェルンタース子爵令嬢は知ってるね。ルキウサリアの王城とはやり取りしてたからそっちも知ってる。で、兵も動かしたから軍も知ってて、これで学園が把握してないわけないだろうね」

「帝都にいないことになっている。だが、ルキウサリアでは誘拐さえ隠されている、か」

「それも人工ゴーレムに関して手を組めば、事情知ってるルキウサリア側からの悪い印象払拭されるかもね」

「…………思いどおり過ぎる」

ソティリオスが呟いた。

「誰の?」

「父だ」

「そうだね。家を出たいってソティリオスを留めるのに使われるとは思わなかったな」

誘拐事件では被害者だけど、弱者に回ることはソティリオスの評判としては思わしくない。

それを払拭する一手として、ルキウサリアでもやる人工ゴーレムの試みには、学園に通ってるソティリオスが噛むことになった。

そこで優秀さを示せれば、誘拐された令息というイメージを上書きできる。

けどそれはユーラシオン公爵家の持つ鉱山という資産に関わる話で大事な仕事。

途中で放り出すなんて許されない。

ましてや財産にかかわる仕事を、家を出た人間が請け負うこともできない。

「ソティリオスは学園を卒業しても、人工ゴーレムに関して結果を出して引き継がなきゃ、ユーラシオン公爵家を出るのが難しくなったね」

「いや、そうか。引継ぎを前提に来年入学する弟に…………」

「けど結果のこさないと、ルキウサリアでも誘拐されたご令息のままだろうし」

「うぅ」

やったらユーラシオン公爵家からは離れられない。

けどやらないと、ディオラに求婚なんてルキウサリア側に取り上げてはもらえない。

こういう搦め手、本当にぽいな。

そしてそれを息子にもやるのかぁ。

けっこう情はあるほうなのに、仕事関係となるとこういうことをするんだね。

やっぱりユーラシオン公爵はユーラシオン公爵なんだな。

「はぁ、音楽祭の後に人前に現れてないことを思えば、終わりと同時に体調不良で帰宅となっているか」

ソティリオスは今できることに目を向け、切り替えるらしい。

「あ、そうだ。僕も音楽祭の片づけ手伝ってないから、戻ったらみんなに謝らないと」

「ちなみにそちらはどういう言い訳をして学園を離れた?」

「僕は元から家の都合で立場が不安定って言ってあるから、実家から急な帰還命令ってことで、誰か危篤かもってくらいの雰囲気で休みを申請したよ」

「そう言えばそういう話だったな。…………まんまじゃないか」

「あははは。けっこうばれないよね」

「当たり前だ。こんな皇子がいるなどと、歴史上にもないことだ」

後を継げない長男で、後妻のほうが権力があって、家の外に出るか、中に残れるかわからない。

そんな状況は第一皇子である僕その者が、歴史上でも前例がない。

けどソティリオスが言うように、気づかれないものなんだよね。

皇子という権威がそんなぐらぐらだとは、宮殿外では誰も想像してない。

実態知ってる宮殿の人たちだって、自国の皇子の立場は危ういですよなんて吹聴はしないしね。

(報告します)

セフィラが突然話しかけてきた。

今は帝都を出てから数時間が経ってる。

もう帝都の影も見えない距離だ。

(行く先の道に不審点あり)

(ウェアレルたちに伝えた?)

(すでに。車列の足を遅めて、馬を駆っていく先を確認に向かいました)

どうやら予想は当りのようだ。

今日の車列は人数が増えたこともあって、事前告知で街道は人払いをしてある。

そんな守りが固くなった中でも仕掛けてくるなら、やっぱり犯罪者なんだろうな。