軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

302話:学生道中2

旅はまだ雪が残る道を馬車で移動して、馬の世話も自分たちで行う。

そして御者もウェアレルとラトラスができたから、道中僕たちも教わりつつ進んだ。

「早めに出たから急ぐ必要もない。急いで事故を起こしても…………ふぁ~」

「あの魔力に反応する金属が完成した時点で、ネクロン先生から全部の課題が中止だって言われたもんね。お蔭で出発は早まったし」

眠たげなエフィに答えて、僕も移りそうになる欠伸を我慢する。

旅はウェアレルも入れて七人での道のり。

町や村を辿って、屋根のあるところで一泊できるように旅程は整えてある。

それでも野宿になった昨日は、交代で火の番をした。

基本的に人にやってもらう身分の僕とエフィは慣れてなくて眠い。

「二人とも一回起きると寝付けないタイプ? イルメはけっこう野宿慣れてるね」

「国許で聖地巡礼の旅をしたもの。人の通わない地になってしまった聖地にも訪れたから」

火の番の交代もスムーズだったラトラスに、イルメはなんでもないように答える。

ネヴロフも疲れた様子を見せずに会話に混じった。

「ここら辺って移動しやすいよな。道の雪避けてあるし。魔物も出ないし」

それにはちょっと心当たりがあるな。

ディオラが道の整備と言っていたから、ルキウサリアから僕たちに先行する人がいるんだろう。

そんなことを話しながら、僕らはウェアレルが操る馬車の横を歩いてる。

荷物を運ぶ分、馬に疲れが出ないよう歩けるところは外に出て歩く形だ。

これも皇子として移動したり、公爵家のソティリオスと同乗してた時にはなかった体験。

「うん? なんかいる。色違い先生、なんかまずそう」

突然ネヴロフが声を上げると、ウェアレルは馬車を停めて杖を手に取る。

すると行く手を塞ぐ形で、垢じみた服の男たちが現われた。

手入れの悪い武器を持ってることから、地元民とかじゃなく賊なのは間違いない。

「お子さま引き連れて物見遊山か? さぁて、身代金の取れそうなガキはどれかな」

勝手に品定めしてるってことは、どうやら盗賊というよりも人さらいのようだ。

旅装の僕たちは、人さらいの男たちよりも全員が身綺麗でいいカモに見えたのかな。

向こうは同じ人数だけど、こっちは大半が子供で護衛らしい人もいないってことで、すでに勝った気でいるようだ。

その分隙が多く、魔法使いであるウェアレルの目の前に全員が姿を現してるから、もはやただの的なんだけど。

(セフィラ、ウェアレルに隠れてる人の有無を教えてあげて)

イルメがいるから、僕に答える声はない。

ただセフィラの声を聞いただろうウェアレルは、持ち上げようとしていた杖を止めた。

「みなさん、動かずに」

ウェアレルがそう言った時、別の武装集団が横合いから現れた。

そちらもどうやら十人弱の集団。

防具を身に着けていて、僕らじゃなく賊に向かって剣を振る。

容赦はなく、抵抗すれば深く斬りつけられ、そもそもの腕が違うのは動きでわかった。

そうしてほどなく、賊は抵抗をやめて命乞いを叫ぶことに。

「いやぁ、災難だったな。こっちとしては賞金首を楽に捕まえられたぜ」

リーダーらしき人がそんなことを言って寄って来る。

他は賊を縛り上げてるんだけど、僕はその賊を縛る中に一人見知った人物を見つけた。

「アズ?」

ラトラスが目ざとく、驚いた僕に気づいて聞いてくる。

同時に怯えた様子が窺えるから、ここはあえて言うしかないか。

「ルキウサリアで見たことがある人がいたんだ。だから、たぶん大丈夫だよ」

そう言ったら、リーダーはおおげさに肩を竦めて見せた。

きっと動揺を隠すためもあるんだろう。

「そうそう、ルキウサリアで冬越ししてた狩人だ。この時期大公国に向かう人間狙う奴らもいるし、いい稼ぎになるんだよ。こんな風にな」

ウェアレルは僕が見たということで、何か察した様子でお礼を言う。

「それは、助かりました。私も学園に勤める中で、狩人に依頼して素材を求めることもあります。ルキウサリアで仕事を貰える腕があるならば大丈夫でしょう」

「おっと、先生だったか。ってことは、その杖も威嚇目的じゃなく実用か。あー、あの賞金首もらっては行くぜ?」

「えぇ、助けられたのは間違いありませんから」

「お、話がわかるな。だったら、いっそ大公国まで俺ら雇ってみる気はないか? 正直あんたらいいカモだぜ」

この先も狙われるからというのは建前で、僕の護衛が本命かな。

けれどウェアレルはそれに対してノーと答えた。

「自衛を前提に生徒たちも旅程を考えています。何より先立つものも少ない旅ですから。お心遣はいただいておきましょう」

「そうかい。じゃあ、もう少し進んだ先でちょいと休憩でもしておけば、俺らが先進んでめぼしい獲物は刈り取っておいてやろう」

偉そうなふりして喋るけど、その実、ちょっと露払いのためにお時間くださいってところなんだろう。

「そうですね、突然のことで生徒たちも驚いているでしょうから。お言葉のとおり休憩してから進みましょう」

「えぇ? 別にいいのに。あれくらいならどうにかなるぜ」

けっこう勇ましいネヴロフに、ウー・ヤーが心持ち声を落とす。

「仕事の邪魔するなということだろう。自分たちの情報が先行しているとしたら、待ち伏せが他にもある」

「私たちとあの狩人たち。どちらを賊が襲いたいかと言われればそうね。賊だって山野に生きているわけではないから、立ち寄った町で目をつけられたかもしれないわ」

イルメの具体的な懸念は、つまりそういう目に遭ったことあるのかな。

偉そうな物言いを受けて、クラスメイトの反応はおおむねよろしくはない。

ただエフィだけが首を傾げる。

「俺たちの後に着いてくるほうが、囮に使うにはいいような…………」

「それはさすがにあからさますぎるって自重してくれたんじゃない?」

僕もフォローしつつ、ルキウサリアからの護衛が扮した狩人は先に行ってもらった。

そして一度道端で休憩を取るのは、眠気が強い僕には渡りに船だ。

ただ休憩しているだけでもなく、襲われた時の対処についても話し合い、また出発した。

「あ、今度は魔物だ。左手注意して」

ラトラスが臭いをかぎわけるように鼻を上げて忠告する。

「なんの魔物かわかったりは?」

「うーん、ヤクみたいな臭い」

僕が聞いてみたら、同じように臭いを追ったネヴロフが答えてくれた。

ヤクって山地に住む毛深い牛のことだよね。

なんて思ってたら本当に牛の魔物が現われた。

見た目はバイソンのようにもじゃもじゃだ。

「牛で角があるのは狩人の観点からすれば当たりだが、これはちょっとまずいな」

「どう見ても興奮してる。群れからはぐれて攻撃的になってるんだろう」

護身のための剣を抜くウー・ヤーとエフィ。

ただ相手は下手したらトンありそうな巨体で、そうそう倒しきれそうにはない。

そしてはぐれた個体は、さすがに狩人に扮した護衛でも予想できなかったらしい。

「これは近づかれるだけ危険ですから。私がやりましょう」

言って、ウェアレルは今度こそ杖を構える。

そして雷を一撃。

それだけでバイソン風の魔物はガクガクと動きを鈍らせる。

後は刃物の扱いに慣れたクラスメイトが確実に首を裂いて襲われる前に仕留められた。

その刃物の扱いに慣れた中にイルメがいるのは、やっぱり危険な旅をこなした経験なんだろう。

「もっと人数がいれば、解体して食肉にするけれど。魔石を探すことはするかしら?」

「さすがに大きすぎるから、道の端に避けるだけにしたほうがいいかも」

イルメに答えるラトラスも惜しそうだけど、血で他の獣が寄って来ても危ない。

それにネヴロフが、馬車に積んでたのこぎりを片手に声をかける。

「こっちって角売れたりしないのか? 売れるとこは持ってこうぜ」

うーんクラスメイトがたくましい。

僕はちょっと考えて、同じように馬車から錬金術で作った薬を持ちだした。

「ねぇ、これ使ってみない? 魔力に集まる粉末」

青トカゲの実験でできた薬で、魔力を集中したところに砂鉄のように集まる性質がある。

青トカゲの生態はまだまだ謎すぎるけど、こうして何がしかの成果物が得られるところから考察するのも一つの研究。

なんて言い訳しつつ、面白いから色々作った中の一つだ。

「実験もいいですが、疲れない程度にセーブするように」

「「「「「「はーい」」」」」」

ウェアレルの忠告に返事をしつつ、僕たちは興味に動かされて作業を始めた。