軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33話

満景は制服姿で、とある雑居ビル――占いの館にやってきた。

今日から占い師として、ここで働くためだ。

既に来ていたソコノ住職に導かるようにして、雑居ビルの二階にある一室へ。

この部屋は、土日に外様の占い師に貸し出される場所の一つ。今まで平日は空き部屋だったが、満景が占い師デビューするにあたって、この部屋を使わせてくれるようだ。

「でも今までと同じように、土日は外の占い師の人に貸すんですよね、この部屋?」

満景の疑問に、ソコノ住職はもちろんと頷く。

「満景も今まで通り、土日はビルの出入口での受付をやってもらう」

「土日に来る人、最近多くなりましたもんね。受付を置いておかないと、客の多さで混乱が起きかねませんもんね」

と満景が自論を口にすると、ソコノ住職から睨まれた。

満景が睨まれる理由が分からずにいると、ソコノ住職は溜息まじりに苦情を口にする。

「土日の客の中には、満景を目当てに来る人もいるんだぞ。それなのに、何を他人事のように言っておるのか」

「僕目当てって、本当に?」

「年若い男子に優しくされて、嬉しくならない大人は少ないもんだ。特に大人の女性には受けが良い。まして、深刻な悩みの際にだけ渡してくれるお呪いグッズ。あれが欲しいという客も多いんだぞ」

「へぇ。受付の際に言ってくれれば、あれぐらいのものなら渡したけどなあ」

「馬鹿め。止めておけ。満景の作るお呪い道具は、金がとれる出来だ。下手にタダで渡すと、同じ業界の者に恨まれるぞ。特に、才能がなく、インチキ呪い道具しか作れないヤツは特にだ」

そう忠告されても、満景は納得がいかない。

「僕が作っている物って、程度の低いものしか素材に使ってませんよ。たぶん学校の授業で生徒が作るものの方が、今まで僕が作ってきたものより効果が高くなると思いますけど?」

「その雑な素材で作った弱い呪い道具ですら、世に溢れるインチキ道具よりマシなんだ。そしてインチキ道具を販売代金は総じて高い。付け加えて言うのなら、熊野高等専修学校の授業で生徒が作り、そして教師が効果を保証する呪い道具ともなれば、インチキ道具の数倍の値段で売れる」

「えっ、売れるんですか!?」

「あの学校の授業で作ったものは、課題の成果物として学校に提出するもの以外は、生徒の所有物になる。生徒が所有物を他に売ろうと、学校は関知せんよ」

「ちなみに、どのぐらいの値段なんですか?」

ソコノ住職が手指を使って、予想される売却金額を示す。

効果が小さなもので十数万円。大きなものになると百万円近い値付けになるらしい。

「はへー。それだけの金額で売れなら、製作と販売だけで生計が立てられそうですね」

「世の大半の霊能者は、占い師か道具作りで生計を立てているんだ。テレビドラマや映画のような、大怨霊と霊力バトルを行うような輩などは一割ぐらいしかおらん」

「あれ、でも学校で悪霊と戦う実習があるんですけど。それなのに一割ぐらいしかいないんですか?」

「熊野高等専修学校に入学できる者は、その年代の霊能者の中でも上澄みだ。さらにA組は、その上澄みの中の上澄み。政府としては、A組に入れるほど才能豊かな人間ぐらいは、悪霊退治に従事してもらわんと、国歌の安寧が保てんと考えておるのだ」

ソコノ住職は、国情などどうでもいいと身振りすると、別の話題を切り出してきた。

「それで満景は、なにで占う気だ?」

占いの手法について問わたので、満景は制服の内側からカードの束を取り出した。

「師匠たちから色々と占いのやり方を教わってもいますけど、僕はベタにタロットカードをやります。大アルカナで」

タロットカードことアルカナカードは、実は七十八枚で一組。

そのカードの中にある寓意画二十二枚のみを使う占いの事を、大アルカナという。世間一般で認知されているアルカナ占いは、この大アルカナである。

ちなみに、それら以外のカードで占う事を、小アルカナという。トランプカード占いは、この小アルカナの流れを汲んでいることが多い。

大アルカナは大まかな結果を、小アルカナは細やかな結果を占いで出すといわれているが、占い師によって大小アルカナについての見解の相違もあったりもする。

ともあれ、満景は世間一般に認知されているタロットカードで占い師をやることにした。

ソコノ住職は、タロットカードと聞いて、微妙そうな顔になっている。

「満景なら、もっと別の占いが出来そうなもんだがなあ」

「出来なくはないですけど、的中率が高い方の占いですし、駆け出しの占い師っぽいし、他の占いの館の占い師の人たちと被らない占い方ですから」

「あー、そう言えば。うちの占い師連中で、タロットカードをやっているやつ居なかったな、そういえば」

「神降し、卜占、水晶、筮竹、ウィジャ盤、聖灰で、ソコノ住職は経文から引用する御神籤でしたよね」

「俺のは占いじゃなく、説法を用いる悩み相談だ。だから平日では受付をして、土日に悩み相談の場を開いているんだろうがよ」

正式に寺を持っているソコノ住職にとって、自分は占い師ではなく仏教徒であるいという点は譲れないのだろう。

そんなソコノ住職の拘りを横に置いて、満景はタロットカードを掲げる。

「ここの占い師の占い方は一癖あるものばかりなんですから、一つぐらい認知度の高い方法があったって良いでしょう?」

「そういうことなら任せる。ちなみに、この館の給料制度は、ベースにプラスして出来高だからな。客が多く入った方が手取りも増えるぞ」

「生活に困るぐらいに客が来なかったら、さっきソコノ住職に教えてもらった、お呪いの道具を作って売りますよ」

「道具作りを主にする気なら、俺が買い取り先になってやろう。ちゃんと適正価格で買い取ってやる」

そんな話をしてから、ソコノ住職は部屋を去っていった。

満景は一人になったところで、殺風景の部屋を見回し、ビルの倉庫に仕舞いこまれているものを使って部屋を飾ることにした。もちろん土日に外様の占い師に部屋を貸し出す点を考えて、すぐに撤収できるようにすることも忘れずに。