軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29話

入学二日目のホームルーム時間が終わると、次はクラブ活動の紹介が体育館で行われる。

鬼瓦先生が言うには、この学校でのクラブ活動は、入るも入らないのも任意らしい。

A組の生徒たちがそれぞれ体育館へ向かう中、満景は担任の鬼瓦先生を廊下で呼び止めた。

「鬼瓦先生。少し話がしたいんですが」

「どうした、犬塚?」

疑問顔になっている鬼瓦先生に、満景はソコノ住職から渡されたアルバイトの許可申請祖を差し出す。

「アルバイトを始めるので、その許可を貰いたくて」

「構わないが、一応理由を聞くことになっていてな。どうしてバイトをしたいんだ?」

「一人暮らしを始めたので、色々と物入りで」

「一人暮らし? ああー。君は親御さんと折り合いが悪いんだったか」

鬼瓦先生に家庭の事情を話した覚えはないのにと、満景は疑問に思った。そして、もしかしてと思いついたことがあった。

「 犬塚家(うち) の家庭の事情って、業界内では有名だったりします?」

「あー。まあ、な。犬塚家は歴史の長い呪術師の家だからな。大抵の霊能関係者は情報を仕入れていることが多いだろうな」

「この学校、兄が前に受験したことがあるので、猶更に情報があったわけですか?」

「面接のときにペラペラと家庭の事を話していた、ということは聞いたな」

兄である英孝のやらかしに、満景は恥ずかしさで赤面しそうになる。

そんな満景の姿に何を感じたのか、鬼瓦先生は苦笑いになっている。

「事情が事情なだけに許可は出せるだろうが、一応放課後に職員室まで来てくれ。そこで許可不許可を伝える」

そこで一度言葉を区切ってから、鬼瓦先生は言葉を続ける。

「アルバイトするのは構わないが、教師という立場から助言すると、できればクラブ活動にも参加して欲しいんだ」

「どうしてです?」

クラブ活動を行えば、アルバイトに入れる日数が減る。それはすなわち、収入が減ることに繋がる。

懐に入ってくる金額を減らしてでも、クラブ活動をする意義はあるのだろうか。

満景の顔に心に思った疑問が浮かんでいたのか、鬼瓦先生は表情に真剣さを滲ませる。

「霊能関係の仕事は人脈が物を言うことが多い。顧客は基本的に、困りごとを解決したくて、霊能者を頼るからな。そして人は、信用のない相手に困りごとを持ち込むことはない。しかし、その相手が知人の関係者の場合は、直接的に信用がなくても依頼を出してくれる。他にも、自分の手に負えない案件の場合でも、より腕に覚えがある人物と繋がっていれば、そっちに仕事を流すことだってできる」

語ってくれた内容は、満景にとって覚えのあるものだった。

占いの館にいる満景の師匠たちは、まさに人脈の典型例だ。

大した宣伝活動はしていないのに、占いや除霊の腕が良いからと、客がひっきりなしに占いの館にやってくる。

霊障を患う客も、満景は祓いきることはできないが、師匠の誰かに案内して解決してもらうことは多々ある。

確かに人脈は、霊能関係の仕事において大事そうだと、満景は理解した。

「その人脈作りに、クラブ活動が適しているんですか?」

「この学校に入れた生徒は、実家が霊能関係の仕事についていることが多い。そうでない場合でも、間接的に霊能者と接している家庭だったりする。つまりクラブの先輩後輩は、将来の人脈になりえる。そして高校時代に作った人脈は長く続くものだしな」

「そういうものですか」

満景には、いまいちピンと来ない話だが、担任教師である鬼瓦先生が言うのならと納得することにした。

だが、何のクラブに入るかは、いまの満景には案すらない状態だ。

満景が通っていた中学校では、クラブは一人一つは強制加入だったので、一応クラブ活動の経験はある。

しかし入ったのは幽霊部員歓迎の文芸クラブ。

満景は入りはしたものの、実家のオシロやアゼンの世話があったので、余り活動に参加しなかった。

(体育館で各クラブが活動内容を説明してくれるらしいし、それを見て聞いて決めればいいかな)

満景は気楽に考え、鬼瓦先生にアルバイトの許可を重ねてお願いしてから、すっかり生徒の姿がなくなった廊下を急いで体育館へと向かった。