軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27話

入学式があった翌日、満景は学校への通学路を歩いていた。

私服登校も可の学校ではあるが、満景は午後に占いの館に出勤することもあり、制服を着ている。

昨日と同じように迷いの術があるかもしれないと警戒しながら通学していたのだが、要らない警戒だったようで、すんなりと学校の正門に到着した。

満景が安堵しながら校内に入り、そして一年A組の教室へ。

昨日座った席に座り、机のフックに学校鞄であるボストンバッグをかける。

始業時間までには、まだ少し時間があるからか、教室の中にいる生徒の数は少ない。その少ない生徒の殆どが、私服姿である。

その中で、満景が座る席の左斜め前の席には、すでに多久頭力雄が座っていた。力雄も、満景と同じで制服姿だ。

(なんだか意外だな)

満景が基準にしているのは、小学校と中学校で同級生になった生徒たち。

力雄のような見た目――いわるゆ体育会系な見た目をした生徒は、学校生活を不真面目に過ごす人が多かった。

正確には、運動部の活動は積極的かつ真面目にやるものの、勉学の部分では手抜きをする人が多かったのだ。

その手の人たちにとって、運動で得られる評価の方が大事で、授業態度で得られる内申点やテストの点数はさほど大事に感じていなかったのではないかと、満景は分析している。

ともあれ、小学校中学校の体育会系の生徒の多くは、登校する際に遅刻はしなくても登校時間ギリギリなことが多かった。

だから満景は、見た目だけなら彼らと同じに見える、力雄が既に登校していることに驚いたのだ。

加えて、私服登校可能な学校にもかかわらず、制服を着ているのも驚くポイントだった。

(真面目な体育会系? それとも見た目に反して、実は運動とは縁がないとか?)

その考えを、満景は即座に自分で否定する。

席に座る力雄からは、朝練を終えた運動部の生徒特有の、運動で高まった気分の名残りと疲労が纏わりついている肉体が見て取れた。

そう見て取ってから、満景は首を傾げる。

熊野高等専修学校の新入生は、どの部活にも入っていないはずだからだ。

(実家が運動関係――いや、力雄は神社の跡取りとか言ってたっけ)

知っている情報からでは、力雄がなぜ朝に運動しているかは読み解けない。

しかし、これ以上他人のプライベートに踏み入るべきでないと判断し、満景は気付いたことを気にしないことにした。

始業時間までの時間、スマホを見て時間を潰そうかなと、満景が制服の前合わせを解いて内ポケットに手を伸ばそうとすると、横から軽い体当たりを食らった。

その方向に満景が顔を向けると、小里が満景の肩に寄りかかる体勢で立っていた。

小里は満景と力雄とは違い、私服姿。

オーバーサイズのジャンパーとベルボトムのズボン。柄物のジャンパーの内側は白いカットソーのシャツで、ズボンのベルトには太い黒革が撒かれていて、ベルトにポーチのようなものがついている。

昨日見た古めかしいセーラー服姿だったのに、今日は華やかな見た目だ。

その見た目の違いによって印象が大きく違っていて、満景は一瞬誰かわからなかった。

「……小里は私服なんだな」

どうにか体当たりを食らった返事をすると、小里は満景に私服を見せつけるように腕と足を広げた。

「どうどう?」

「似合っているけど、ちょっと意外にも思った」

「意外って、どこがよ?」

「ズボン履いているところかな。なんとなく、小里はズボンよりスカートの方が好きそうな気がしたから」

満景の言葉に、小里は照れ笑いのような顔を見せてきた。

「いやー、私もスカートの方が好きなんだけど、管狐のためには、スカートよりもズボンの方がいいからねー」

「スカートは形状的に筒一つで、ズボンは筒が二つあるからか?」

「ズボンの方が筒の径が小さいって点も、管狐にしてみたら住み心地がいいみたいなんだよね」

その言葉を受けて観察してみると、小里の衣服は生地の目が確りと詰まっているもので、筒状になれるもので揃えられている。

どうやらズボンだけでなく他の部分の衣服についても、管狐の住み心地を重視したもののようだ。

小里の気遣いが正しいと証明するように、ズボンの裾から管狐が顔を出し、そしてすぐに顔を引っ込ませた。

可愛らしい小動物の仕草に、満景は思わず微笑みを浮かべてしまう。

その後で、ふとした疑問を持った。

「そういえば、その管狐って、小里の身体の上を徘徊しているのか?」

浮かんだ疑問をそのまま口にしたのだが、小里からは半目の睨み顔を向けられてしまった。

「乙女に対して、服の内側がどうなってるか聞くとか、デリカシーなさすぎ」

「……ごめん。言ってしまった後で、気付いたというか」

「ま、悪気があったわけじゃないってのは分かってるから、今回は特別に許してしんぜよう」

「ははー。ありがとうございますー」

軽い冗談のやり取りによって、先ほどの失言は流されることとなった。