軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ネロの兄であり、ネロが城を出るきっかけとなった存在。

(確かお名前はアラン様だったはず。そしてプルメリア様の婚約者様)

まさかプルメリアと第一王子であるアランが婚約するとは驚きだった。

あれ以来、二人の間でプルメリアの話題はなんとなく避けられてていることもあり、どうしても

詳しい話が聞けないままだった。

(もしかしたら顔を合わせる機会があるかもしれないし、お話を聞いておいた方がいいかもしれ

ない)

ネロが戻ってきたら少し話してみようと考えていると、不意に扉の向こうが騒がしくなった気配

を感じた。

「どうしたのかしら?」

なんとなく気になって扉の近くに近寄れば、大きな声が聞こえた。

「私が開けろと言っているんだ。何故逆らう」

「し、しかし」

「いいから通せ。私は第一王子だぞ!」

扉の前にいる兵士と誰かが争っている声が聞こえ、ビアンカは息を呑む。

(今、第一王子って……まさか)

そんなことがあるのかと一歩後ろにさがった瞬間、扉が勢いよく開いた。

「……!」

「なんだ。やはりいたのではないか」

一組の男女が断りもなく部屋の中にずかずかと入ってくる。

止める術を思いつかずビアンカが唖然としていると、男の方がビアンカに妙にじっとりとした視

線を向けてきた。

背は高いがとても痩せている。肌が不自然なほど白く、纏う空気はどこか希薄なのに、瞳だけが

妙にらんらんとしていて威圧感があった。

(ネロ様に、似てる)

頭をよぎったのはネロの顔だった。

黒髪に黒目という特徴的な部分を含め、その顔立ちはビアンカの愛する人によく似ていた。

「君がネロの婚約者なのかな? 想像よりも随分と地味だね」

「アラン様、そのようなことを言ってはなりませんわ。ビアンカ様、ごめんなさいね。ひさしぶ

りだというのにろくに挨拶もせずで」

「プルメリア様……」

男の横でやわらかな笑みを浮かべるのはプルメリアだった。

扇情的な白いドレスを身にまとい、男の腕に身体を押しつけている。

「こちらは第一王子のアラン殿下よ」

やはり、とビアンカはごくりと喉を鳴らした。

扉の前で聞こえた兵士の言葉や、姿口調、そしてなによりプルメリアと一緒に来たのを考えれば

、疑いようもないだろう。

どうしてという驚きと、なぜという疑問でうずまいていたが、ビアンカは令嬢らしく頭を下げる

ことに成功した。

「はじめましてアラン殿下。ビアンカと申します」

「名前まで平凡だとは思わなかった。ネロも趣味が悪い」

「アラン様、いけませんわ。ごめんなさいねビアンカ様。アラン様は言葉を飾るのが苦手な方な

の」

プルメリアの口調は穏やかでビアンカを庇っているようではあったが、内容はまったくそうでは

ないことが不気味だった。

アランもまた初対面だというのに、ひどく攻撃的だ。

ネロとは不仲だからだと言ってしまえばそれまでだが、ここまで言われる所以はない。

(でも下手に言い返して揉めるのはよくないわよね)

立場を考えれば、王子であるアランとことを起こしてもいいことはない。

下手をすればネロにも害が及んでしまうだろう。

「お二人はどうしてこちらに? ネロ様はまだ戻ってきていらっしゃらないのですが」

やんわりとここに来た理由を聞けば、アランが何が面白いのか口の端をにやりとつり上げた。

「ネロがいないからこそ来たんだよ。僕は奴の顔など見たくないのでね。だが、君には興味があ

ったんだ」

「はい?」

何を言っているのだとビアンカは思わず身体を硬くする。

アランはビアンカを探るように見つめながら、一歩ずつ距離を近づけてきた。

「これまでネロがどんな女にも興味を持たなかった。この美しいプルメリアにもだ。なのに何故

、君を選んだのか。僕はそれが知りたい」

近寄ってくるアランの瞳は怪しく光っており、ビアンカはじりじりと後ずさる。

いつの間にか部屋の扉は閉じられており、室内にはビアンカとアラン、そしてプルメリアしかい

ない状況だった。

(どうしよう)

酷く嫌な予感がした。

プルメリアはアランを止める様子もなく、ただうっすらと微笑んでいる。

「お戯れはおよしください」

「戯れ? 僕は本気だよビアンカ。別にとって食おうと言うわけじゃないんだ。少し話をしよう

じゃないか」

だが、どう見てもアランの様子は話をするだけでは済みそうにない。

不自然にならない程度に部屋の中を動きながら距離を取ってみるが、アランが足を止める気配は

ない。

「ふうん。よくよく見て見ればかわいい顔をしているじゃないか。まるで追い詰められた野ウサ

ギのようだ」

「まあ野ウサギだなんて。アラン様ったらお上手ですわ。たしかにビアンカ様を動物に例えるな

らばウサギさんかもしれませんわね」

気味の悪い会話に肌が粟立つ。

これ以上、一緒にいたくない。そう本能が告げていた。

(なんなの。この不気味さ)

この部屋の中だけ空気が薄くなったような気がする。

部屋を飛び出してしまおうかと考えるが、先ほどからプルメリアが扉の前に立ちはだかっている

「お引き取りください。お話があるのならば、ネロ様がお戻りになられてから伺いますから」

これ以上は無理だと語気を強めて伝えれば、アランが足を止めた。

諦めてくれたのかと思いきや、アランはぎりりと奥歯を噛みしめていた。

「ネロ、ネロとうるさいな。不愉快な名を出すな!」

「ひっ」

短い悲鳴を上げたビアンカをアランがじっとりと見つめる。

「君もネロの方が王太子にふさわしいと思っているのだろう。そして僕を見下すんだ。ああ、腹

が立つ。身体が丈夫だからなんだというのだ。僕の方がこんなにも優秀なのに」

唸るような声で呟きながら、アランが髪をかきむしる。

その姿にビアンカは奇妙な既視感を抱いていた。

かつて同じようなことを誰かに聞かされたことがあった気がするのだ。

それは一体誰だったろうか。

「ネロはいつも僕の大切なものを奪っていく……ああ、そうだ。だったら今度は僕がネロの大切

なものを奪うのもいいかもしれないな」

ぞくりと悪寒が身体を駆け巡った。

「ビアンカ。どうだい? ネロではなく私のものになるというのは」

『アルルは僕のものになるんだよ』

こちらに手を伸ばしたアランの姿が、かつてアルルに手を差し出したブラン姿に重なった。

(——ブランお兄様!)