軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

孤児狩り襲撃、ヤマタニの罠が炸裂

閑話:孤児狩り襲撃、ヤマタニの罠が炸裂

ある日、孤児の少年が半べそをかいて、何かを探しているのを見つけた。

「どうした? 探しものか?」

「うぅ……弟がいないんだ。」

その声は震えていた。泣きそう、ではなく、すでに泣いている。

「どこでだ?」

「あそこの門を曲がった先……。」

少年が指した方向を見ても、そこにはただの石畳が続くばかりだった。人の気配も薄い。だが、空気だけが妙に重い。

「炊き出しの列に並んだとき、弟がなかなか追いついてこなかったんだ。」

「だから探したのか?」

「でも……片方の靴しか見つからなかった……。」

その一言で、ヤマタニの表情がわずかに変わった。

片方だけ残された靴。

まるで“そこにいた証拠だけを残して消された”ような違和感。

ただの迷子ではない。

(……やられたな。孤児狩りか。)

だが今回は軽い連中ではないと直感した。

痕跡が薄すぎる。手慣れすぎている。

人を“消すこと”に慣れている組織だ。

ヤマタニはすぐに動いた。

まず、灰と乾燥唐辛子粉を混ぜる。さらに少量の油を加え、空気中に広がりやすく調整する。

それを布に包み、試しに壁へ叩きつけた。

破裂音。

乾いた衝撃。

そして遅れて広がる刺激臭。

「……これでいける。」

だがそれだけではない。

これはただの防犯道具ではない。

“戦術装備”だ。

孤児院の子供たちには訓練を行った。

・合図の理解

・複数同時投擲

・風上・風下の判断

・逃走経路の封鎖

遊びではない。実戦の準備だ。

「怖いなら投げなくていい。」

ヤマタニはそうは言わなかった。

代わりに言った。

「兄妹を、仲間を守りたいなら、覚えろ!」

子供たちは黙って頷いた。

その目に、迷いはもうなかった。

そして炊き出しの日。

街はいつも通りに見える。だがヤマタニだけは違和感を感じていた。

どことなく視線を感じる。

怪しげな空気を感じる。

人の流れが“監視の形”をしている。

(最低でも六……いや、八か。連携してる。)

単独犯ではない。訓練された狩りだ。

やがて孤児の列に影が落ちる。

その瞬間だった。

門の裏側から、子供の腕が掴まれた。

「今だ!!」

ヤマタニの声と同時に、孤児たちが一斉に動いた。

布袋が投げられる。

破裂。

白煙。

刺激臭。

「ぐああああッ!!」

「目が……開かねぇ!!」

隠れていた“狩人”たちが一気に姿を現す。

だがその顔にあったのは怒りではない。

“理解”だった。

(……待ち伏せだと?)

次の瞬間、さらに二発目。

三発目。

風上から連続して叩き込まれる粉末。

逃げ道が消えていく。

路地裏、屋根上、退路すべてが“計算されている”。

「撤退だ! このガキ共め――。」

叫びは途中で潰れた。

足場の先にも仕掛けがあった。

先回りされている。

逃げる方向すら読まれている。

一人、また一人と姿を消すように退いていく。

戦いではなく、崩壊だった。

数分後。

静寂。

残っているのは風と、散った布袋だけ。

孤児たちは震えていた。

だが誰一人として倒れてはいない。

掴まれていた子供が解放される。

泥だらけの手で、地面に立つ。

その瞬間だった。

小さな笑い声がひとつ。

次にもうひとつ。

そして、連鎖するように笑いが広がった。

恐怖の中で初めて、“勝った”という実感が生まれていた。

その報告を聞いたヤマタニは、静かに息を吐いた。

そして短く言う。

「……想定より数が上だったな。」

孤児たちが駆け寄る。

「勝ったのか?」

「どうやってやったの?」

「また来る?」

矢継ぎ早の声に、ヤマタニは一瞬だけ黙る。

そして言った。

「来るかもしれない。」

その言葉に一瞬だけ空気が冷える。

だが続けて、こう言った。

「だから次も勝つ準備をする。」

その瞬間、子供たちの表情が変わる。

不安ではない。覚悟だ。

その夜。

街のどこかで、誰かが報告を受けていた。

「……失敗だと?」

低い声。

孤児狩りは終わっていない。

むしろ、今のは“始まり”に過ぎない。

だがその街にはもう一つだけ変化があった。

守られる側ではなく、守る側が存在し始めたということ。

そしてその中心にいるのが、ヤマタニという男だった。

まさに知恵と準備と連携の勝利。

だがそれは同時に、新たな戦いの幕開けでもあった。