軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

辺境伯領北西部戦線参戦

第45話 辺境伯領北西部戦線参戦

ヤマタニは新型装甲車の試験運転を兼ねて辺境伯領に向かった。

一応、カミル隊、一般兵もトラックに乗せて来た。

途中、異常を告げるランプが点灯するトラブルもあったものの、ヤマタニ達は路肩で何度も点検を繰り返した。

「配線か?」

「いや、振動で接触がズレてます。」

「こんな山道じゃ負荷がデカいな。」

整備班が工具片手に慌ただしく動く。

山道は険しく、重量の大きい装甲車には負担が大きかった。

それでもヤマタニは焦らなかった。

ここで無理をして故障すれば、最悪戦場で動けなくなる。

慎重に確認を続けながら、数時間かけて辺境伯本城へと到着した。

巨大な石壁に囲まれた辺境伯本城では、多くの兵士達が慌ただしく動いていた。

伝令が馬で駆け回り、兵達の表情も険しい。

空気が重い。

戦況が悪化しているのは、城門をくぐった瞬間にわかった。

「ヤマタニ子爵只今参りました。」

「これはこれはヤマタニ子爵様。」

ラッセルの対応が、この前とは手のひらを返した様な態度でヤマタニを出迎えた。

以前のような見下した空気は完全に消えている。

今や辺境伯軍の中でも、ヤマタニの名は知らぬ者がいない。

蛮族軍本隊撃破。

補給部隊壊滅。

新兵器。

そして数々の戦果。

辺境伯軍の兵達も、ヤマタニ達を畏怖混じりの視線で見ていた。

ヤマタニは辺境伯に挨拶した。

「ヤマタニ殿早速だが、北西陣地が状況が悪くなった。至急向かって欲しい。」

辺境伯の顔にも焦りが浮かんでいた。

「悪いとは?」

「なんでも、膠着状態だったが、敵が攻勢にでてきたらしい。」

「なるほど、ではすぐ向かいましょう。」

「すまぬ。案内を付けるから、宜しく頼む。」

「了解しました。」

ヤマタニはついた早々だったが、北西陣地へと向かう。

トラック隊と装甲車が再び動き出した。

モーター駆動の装甲車は、低い駆動音だけを響かせながら山道を進んでいく。

馬車とも違う、不気味な音だった。

「急げ!前線が持たないかもしれん!」

案内役の騎兵が叫んだ。

兵達も慌ただしく弾薬や装備を確認していく。

空気は完全に戦場のものだった。

蛮族軍は着実に反撃の準備をし、機会をうかがっていた。

そして今、蛮族軍は攻勢に出た。

ドドドドドドドドッ!!

地鳴りのような振動が大地を揺らす。

無数の兵士達が進軍し、砂煙が空を覆っていた。

「敵がどんどんせまってきてます。」

副官が言った。

「見ればわかる。」

ガリックはさらっと答えた。

しかし、その額には汗が滲んでいる。

要塞から出てきた敵部隊が1000、2000、3000、4000とだんだん増えてくる。

黒い波のような軍勢だった。

「これは、ヤバい!」

数で圧倒的に、こっちを殲滅するつもりか?

敵兵達の鬨の声が響く。

「ウオオオオオオオオッ!!」

大軍の圧力だけで、兵達の足が震えた。

「全軍戦闘態勢だ!」

「了解。伝令。全軍戦闘態勢を伝えろ!」

伝令は走り出した。

ラッパが鳴り響き、兵達が慌ただしく配置につく。

約10000の兵が陣形を組んで、こっちに迫って来た。

前衛は重装騎兵、あきらかに帝国兵だった。

鈍く光る鉄鎧。

巨大な軍馬。

長大な槍。

その威圧感は凄まじい。

後に続くのは長弓兵。

一気にこちらを殲滅する気満々だった。

「騎兵くるぞ!弓かまえろ!」

ガンガン迫って来る重装騎兵。

ドドドドドドドドッ!!

重装騎兵の突撃で大地が震えた。

兵達の顔が青ざめる。

射程圏内に入る。

「引きつけろ!」

「まだだ。」

ガリックはギリギリまで耐えた。

「撃て!!」

攻撃合図のラッパが鳴り響いた。

無数の矢が空を覆う。

ヒュオオオオオオッ!!

矢の雨が重装騎兵に降りそそぐ。

矢は重装騎兵に当たるが効果は薄い。

鉄鎧に弾かれ、致命傷にならない。

尚も突進して来る敵重装騎兵。

だが馬防柵で勢いが削がれる。

馬が悲鳴を上げ、何頭かは転倒した。

それでも敵は止まらない。

重装騎兵は投げ槍で反撃してきた。

ドスッ!!

弓兵はあちこちで倒される。

喉を貫かれ、胸を貫かれ、兵達が地面へ崩れ落ちた。

後続の敵弓兵が迫って来て、射程圏内になると、ガンガン矢が飛んできた。

空が黒く染まる。

「伏せろぉぉぉ!!」

矢が味方陣地に突き刺さった。

重装騎兵は馬を降り、突撃してきた。

「槍歩兵前へ!」

歩兵はかまえるが、敵の矢を受け倒れる者が続出していた。

「ぐあっ!!」

「腕がぁぁ!!」

悲鳴が飛び交う。

重装騎兵が剣を抜いて槍歩兵に襲いかかってくる。

ガギィン!!

金属音が激しく鳴り響く。

戦いは次第に乱戦になって来ている。

槍が折れ、剣が振るわれ、兵達が次々と倒れていった。

「ヤバいな、あの重装騎兵。矢があまり効かないか?」

ガリックが言った。

「装甲が厚いようですね。」

副官が答えた。

「陣地が破られそうになったら、予備部隊を投入するぞ!」

「了解です。」

しかし、ゴリゴリとあちこちで味方陣地が削られてきた。

敵の圧力が強すぎる。

中央部に敵の猛攻が集中し、今にもくずれそうだった。

味方兵が次第に後退していく。

軍旗も一本倒れた。

「中央に予備部隊を回せ!」

「はっ。」

ガリックは次々と予備部隊をあちこちに投入したが、事態は好転しなかった。

「押されてるぞ!!」

「中央が抜かれる!!」

現場の兵達の叫びが飛び交う。

「司令官。もう予備部隊がいません。」

副官の悲痛な叫び声が響く。

「うっ!いざとなったら本部隊が蓋をする。絶対に敵を突破させるな!」

「了解!」

しかし勢いは敵が圧倒的だった。

中央がもう持ちません。

最前線では兵士達が押し潰されるように倒れていく。

敵重装騎兵が盾を弾き飛ばし、防衛線へ食い込んでいた。

「ダメだ……!」

「もう止められねぇ!」

後退し始める兵まで出始める。

「踏み止まれぇぇぇ!!」

指揮官達が怒鳴るが、戦線は崩壊寸前だった。

「仕方ない。本部隊の半分を投入する。」

「はい。」

とはいえ、陣地はもう限界だった。

あとは撤退の号令をかけるしかない。

ガリックの額から大量の汗が流れた。

その時だった。

左翼方面から凄まじい轟音が響いた。

ドガガガガガガガガガッ!!!

「何だ!?」

兵達が一斉に左翼を見る。

土煙の向こうで、巨大な鉄の塊が火を吹いていた。

敵兵が次々と吹き飛ぶ。

肉片と土煙が舞い上がった。

伝令が左翼から走ってきた。

「援軍です!軍神ヤマタニが敵を薙ぎ払っています!」

「ヤマタニ子爵か。やっと来たか!」

ガリックの引きつった顔が、ヤマタニの来援で緩んだ。

ヤマタニ装甲車は3つに分離して、敵右翼へ突撃していく。

1号車の機関砲が火を吹いた。

「バババババババッ!!」

重装騎兵ごと敵前衛を薙ぎ払う。

鎧ごと敵兵が吹き飛んだ。

さらに屋根部30mm大砲が旋回する。

「バォーーーン!!」

轟音と共に敵集団が爆散した。

土煙と悲鳴が上がる。

2号車ではトミーが機関砲を連射していた。

「左翼側押し返すよ!」

「バババババッ!!」

密集していた敵兵達が次々と倒れていく。

3号車では機関砲に加え、屋根の二連20mm機銃が火線を撒き散らしていた。

「ダダダダダダダッ!!」

敵弓兵部隊が次々となぎ倒される。

「何だあの武器は!?」

「化け物だ!!」

敵軍は完全に混乱していた。

ヤマタニはさらに突き進んで、敵中央部を抉っていった。

敵陣形が真っ二つに裂ける。

1号車の30mm大砲が再び火を吹く。

「バォーーーン!」

「バォーーーン!」

「バォーーーン!」

轟音と共に土煙が吹き上がる。

一直線に敵兵達が吹き飛んでいった。

爆風で周囲の兵士まで巻き込まれる。

連射するヤマタニによって敵は大混乱に陥った。

「機関砲は断続的に撃て!銃身が焼き付いて壊れるぞ!」

「敵が多すぎる!止まんないよ!」

トミーが叫ぶ。

薬莢が車内外へ大量に飛び散っていた。

「まったくだよ!」

タクトも叫んだ。

「ダダダダダッ!!」

二連20mm機銃が再び火を吹く。

やがて中央部も混乱状態に陥って、敵中央部は徐々に崩壊する。

敵兵達の統率が完全に乱れ始めた。

「撤退だぁぁ!!」

逃げ出す敵兵まで現れる。

敵左翼部はそれを見ると撤退を開始して行った。

ヤマタニ参戦によって、味方は救われ辛うじて崩壊を免れた。

「軍神ヤマタニ助かった!」

「軍神ヤマタニバンザイ!」

歓喜した辺境伯軍はヤマタニを称える声があちこちから聞こえてきた。

崩壊寸前だった兵士達の士気は、一気に回復していた。

「よく来てくれたヤマタニ子爵。」

司令官ガリックはヤマタニを出迎えた…。