作品タイトル不明
蛮族軍の北西戦況
第43話 蛮族軍の北西戦況
アキタリス国王の西、山脈北に登山口がある。
ここを拠点として蛮族が要塞を築いていた。
3重の堀と壁、壁の前には堀があり、山から流れる冷たい水が満たされている。
外壁の上には投石、バリスタが装備されている。
近づく軍はまずこれらの武器で大ダメージを受ける。
さらに外壁に近づいても、梯子をかけられない。
しかも外壁を越えてやって来ても、2枚目の壁と堀があり、さらにその壁を越えても3枚目の堀と壁がある。
この難攻不落の要塞がある限り、辺境伯軍は蛮族の侵入を止めることは出来なかった。
しかも最近は蛮族軍の中に帝国兵がいて、統制がとれており、強力な武器や装備をもっていた。
辺境伯軍は押されに押され、だんだん劣勢になっている。
「ガリック殿、この膠着状態なんとかなりませんかね。」
ガリック司令官にラムロイ部隊長がやって来た。
「何とかできるなら、何とかしてやるがな。」
半円形に敵要塞を囲うように、陣を引いている辺境伯軍。
空堀に柵や馬防柵などを築いて、敵侵入を防いでいる。
敵の射程外だが、風に乗ればギリギリ届く距離にある。
「大体敵要塞が攻略できないから、こんな長期戦になっているんだ。」
「しかしですよ、あの要塞崩しのヤマタニ子爵が来れば何とかなるんでしょ?」
ラムロイはヤマタニがやって来ると知っていた。
「何だ、知ってたか。」
「だが、俺はヤマタニを知らないし、噂が本当なのかもわからない。」
ガリックは一息つく。
「でも、辺境伯様やリチャードが言うんだから、その要塞崩しの軍神ヤマタニに縋るしかないな。」
「…ですか。」
ガリックとラムロイは遠くの蛮族要塞を見てため息をついた。
「もし、お前が司令官だったらどう攻める?」
ガリックが質問した。
「兵力は?」
「現状と同じ、敵12000、味方8500。」
「まともにはやりませんね。近寄れば投石やバリスタ、長弓で数を減らすだけですしね。」
「せめてこちらにも長射程の武器が欲しいところです。」
「あとは工兵に穴でも掘らせて、そこから攻めますね。」
「しかし穴掘ってる音で、かなりの確率で発見されますが。」
ラムロイは思う限りの策を話した。
「まぁ、そんなところだな。」
「山脈を大きく迂回したら?」
「それも考えたが、やはり砦があって、ここと似た様なもんだ。」
「打つ手なしか…。」
ガリックもラムロイもこれ以上の策は思いつかなかった。
そんな話をしていたら、敵に動きがあった。
狼煙が上がり、太鼓やドラが打ち鳴らされる。
敵要塞の城門が開かれ、敵の軍勢がやって来る。
「やって来ましたね。」
「いつもの挑発かもしれんが、お前も配置につけ。」
ガリックはラムロイの頭を軽く小突く。
「はいはい。」
ラムロイは自分の部隊へ帰った。
敵の兵力は騎馬隊2000程で、こちらの弓の射程には入らず、ギリギリで停止した。
「このクソ虫ども、我らに挑んでくる度胸がありなら、早くかかってくるがいい。」
「度胸がないなら、さっさと降伏しろ!」
などと挑発してくる。
「いつもの挑発だ。決して乗せられるな。」
伝令はガリックの言葉を走って各部隊に伝えてまわる。
要塞から離れた岩山をよじ登って、奇襲する作戦もやったが、これも発見されたしな。
投石機も壁の高さで、あちらが射程が長い。こちらが撃つ前に投石機部隊はやられてしまう。
やはり打つ手なしか…。
ガリックは頭の中で、敵の要塞攻略方法を考えるが、なかなか策は浮かばなかった。
副長や参謀にもよい策はない。
「軍神ヤマタニの神の 雷(いかづち) か、早く来てくれ。」
頼みはあのヤマタニしかいない。
散々挑発した蛮族騎馬隊は、こちらがのってこないとわかると、さっさと帰っていった。
「こちらかは、仕掛けないのですか?」
副官が言ったが、やってもいたすらに兵を失うだけだ。
「ただでさえ兵力が少ないのに、これ以上減らしたくはないな。」
「あの防御壁の上の投石機やバリスタがなければ、やってみようとは思うが…。」
膠着状態は続き、敵も積極的には攻撃してはこなかった。
このときまでは……。