軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタニ、辺境伯に合う

第38話 ヤマタニ、辺境伯に合う

登山口にリチャードを後処理してもらい、本城の辺境伯に会うことにした。

本城に到着すると、辺境伯配下ラッセルという臣下が出迎えてくれた。

「これは、ヤマタニ子爵殿。お早いおつきで。」

言葉は丁寧だが、どことなくひっかかる話し方だった。

「私は辺境伯配下ラッセルと申します。」

「辺境伯様が病気なので、かわりに出迎えに参りました。」

このラッセルという男は、見た目は良いが何か陰険な感じがする。

「はい。ヤマタニ子爵只今参上いたしました。」

「砦と敵蛮族を撃退しましたので、挨拶と報告に罷り越しました。」

「ははは。ヤマタニ子爵はなかなかご冗談がすぎますな。」

「今日やってきたばかりで、砦攻略と敵撃退?ありえませんな……。くっくくく。」

ラッセルは笑い飛ばしたが、ヤマタニは気にもしないで、城の中に入って行く。

ラッセルは慌ててヤマタニについて行く。

「ヤマタニ殿、こちらです。」

城の執務室ではなく、辺境伯の部屋に案内された。

辺境伯ランドルフはベッドの上でヤマタニを迎えた。

「お初にお目にかかります。王命によりやってまいりました。ヤマタニ子爵です。」

ヤマタニは部屋に入ると、まずランドルフ辺境伯に挨拶した。

「ヤマタニ子爵殿、援軍かたじけなく思う。かような姿で申し訳ない。」

ランドルフはヤマタニが来ると起き上がり、感謝と挨拶をした。

「して、戦況はどうですかな?」

「はい。本日敵を殲滅してまいりました。」

ヤマタニの報告に皆、面を食らい、驚いている。

「さらに、登山口を破壊しました。」

ヤマタニは辺境伯にありのままを報告した。

「しかし、本日やって来て砦と敵本体撃破とは…。」

「調べてもらえば、わかると思います。北西の状況はいかがですか?」

ヤマタニは時間が惜しかったので、知りたい情報を先に聞いてみた。

「確かに調べればわかる。」

「北西にはかなりの軍勢を差し向けた、ほどなくして敵を押し返すと思われる。」

ランドルフは答えた。実際の状況はまだランドルフも把握していないが、辺境伯軍の大半の軍勢を差し向けているからには、成果がなんかしらあるだろう。

「それは重疊です。」

「陛下から辺境伯領の蛮族排除の勅命を受けましたのでしたが、北西の戦い参戦は不要でしたか。」

「うむ。」

「では、残務がありますから、これにて兵を引かせていただきます。」

ヤマタニは早く引き帰りたかった。

「せっかく来られたのだから、宿泊してゆるりと話を聞かせて欲しい。」

「いえ、急いでいますので、またの機会に……。」

「ヤマタニ殿は敵撃滅と虚言が知られるのを、恐れておられるのか?」

「戦場はヤマタニ殿が言うような、甘い世界ではありませんぞ。」

ラッセルはあざけ笑いヤマタニを疑って言った。

ヤマタニは答えなかった。

やはり戦果が早すぎるから無理もない。

「ラッセルやめよ。無礼だぞ。」

ランドルフはラッセルを諫めた。

「では、失礼します。」

ヤマタニはすぐ城を後にした。

ヤマタニは手勢を引き上げさせた。

もっとも装甲車やトラックは先へ急ぎ、早々に帰還してしまう。

残された国王の援軍もヤマタニの指揮で王都へ帰還して行った。

ヤマタニ子爵が帰ってしまった後に、兵からの報告があった。

「ヤマタニ様の援軍は凄まじく、あっという間に砦の蛮族を撃滅しました。続いて敵本隊に進撃し、敵本隊を壊滅しました。」

「しかも休む事なく、登山口を破壊し封鎖を行って蛮族の憂いを絶っていただきました。」

この報告を受けたラッセルもランドルフも驚いた。

「なんだと!」

「馬鹿な!そんな戦いは甘い世界では……。」

ラッセルの顔は青ざめ、その場で足をもつれさせ腰を抜かして倒れた。

顎をカタカタさせて何か言おうとしていたが、言葉にはならない。

アルバートはまだ帰還していなかった。辺境伯領に残った敵を次々と掃討していく。

「もっと成果を、もっと勝利を手にしなくてはならない。」

「これまでの失態を埋めるまでは、簡単には帰れない。」

そう副官に言いながらも、疲れた身体に鞭打って走り回った。

実際にアルバートの失態で、無駄に兵を殺してしまったが、辺境伯領周辺に住んでいる者たちにはありがたかった。

箍が外れたはぐれ蛮族は食料や金品を、民から略奪して回ったからである。

結果として、皮肉にもアルバートの人気はどんどん上がっていった。

リチャードは敵の生き残りを始末して回った。

大半はヤマタニの援軍が倒した敵だったが、生き残りや、負傷した者たち、補給部隊などが無傷で残っている。

戦って倒すか、捕虜になるかどちらかだった。

「それにしても、ヤマタニ殿は噂以上に有能で苛烈だったな。」

「あの迅速な動き、采配、そして発明した装甲車の強大な火力。まさに神の 雷(いかずち) だ。」

成り上がりだろうが、商人だろうが、もはや考えない。あの方こそ、軍神だ!

リチャードはヤマタニの事を尊敬、崇拝し、軍神と思うようになる。

そして、ランドルフにもそのように報告したのだった。

一方ヤマタニは、戦いにあちこち回っていて、その付けが今、やってきていた。

「あ〜、なんだかやたら忙しい。」

新たな図面を引いて、各部署に回した。

あちこちから打ち合わせを申込まれ、あちこちに指示を回した。

面会を受け付け話し合ったり、取引相手に理由を言って後日に面会をしてもらう事にした。

しかし、よい事もある。

助手のトミーは指示しなくても装甲車の整備や、弾薬の補給などしてくれた。

冒険者アルは排水処理場の仕事を終わらせ、ブエナのネズミ退治に向かってくれた。

タクトはヤマタニの代わりに、図面を引いてくれた。しっかりとした三面図にヤマタニは驚いた。

他の者もヤマタニが不在でも、自分で出来る範囲はキッチリと自分でなんとか仕事を熟してくれた。

「みんな、確実に自分がいなくても、しっかりと仕事が出来るように成長したな。」

ヤマタニは戦場の成果よりも、子供達や他の成長こそ本当に嬉しくて仕方なかった。

だがしかし、戦場は終わってはいない。

そして戦いはヤマタニを離さなかった。

北西の蛮族に帝国の兵力が加わり、自体は辺境伯軍を苦しめていたのだった。