軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタニ仔犬を拾う。しかしただの仔犬ではなかった。

第13話 ヤマタニ仔犬を拾う。しかしただの仔犬ではなかった。

新装甲車の試し乗りのため、ヤマタニはサンブレロ周辺の野山を走っていた。

「社長さん、この新型装甲車は野山でも乗り心地がいいですね!」

「あぁ。サスペンションを改良したからな。振動がかなり抑えられているはずだ。」

装甲車は荒れた地形をものともせず、滑るように進んでいく。

――そのときだった。

遠くから、獣の悲鳴のような声が聞こえた。

ヤマタニが視線を向けると、そこには一匹の仔犬と、それをいたぶるオーガの姿があった。

仔犬は必死に食らいついているが、体格差は歴然だった。

次の瞬間、オーガの蹴りが炸裂し、仔犬の体が地面を転がる。

「……このままだと殺されるな。」

ヤマタニは静かに呟き、装甲車の扉を開けた。

「しゃ、社長さん!?何する気ですか!」

返答はない。

ヤマタニはアサルトライフルを構え、ゆっくりと照準を合わせる。

――だが、オーガが動いた。

仔犬にとどめを刺そうと腕を振り上げる。

「チッ……!」

引き金を引く。

「バババッ!」

連射された弾丸が土を弾き、オーガの体をかすめる。

だが致命傷には至らない。

オーガがこちらに気づき、咆哮を上げて突進してくる。

「間に合わん……!」

その瞬間、仔犬が最後の力を振り絞るようにオーガの足に噛みついた。

わずかな隙。

ヤマタニは呼吸を止め、引き金を絞る。

――パンッ。

乾いた一発。

弾丸は正確にオーガの眉間を撃ち抜いた。

巨体が崩れ落ち、地面を揺らす。

「……ふぅ。」

ヤマタニはゆっくりと銃を下ろした。

「す、すげぇ……オーガを……」

トミーは腰を抜かしていた。

ヤマタニは無言で歩み寄り、血にまみれた仔犬を抱き上げる。

まだ、かすかに息があった。

「大丈夫だ。助ける。」

そのまま装甲車へ戻り、屋敷へと急いだ。

数日後。

傷の手当てと看病の甲斐あって、仔犬は自力で餌を食べられるまで回復した。

「その仔犬、どうするんです?」

ヒラリーが尋ねる。

「ぶっそうな世の中だからな。育てて番犬にでもする。」

ヤマタニは仔犬の頭を撫でた。

「名前は?」

「……ハチでいいか。」

「ハチ?」

「昔、そういう名前の忠実な犬がいてな。」

ハチは小さく鳴き、ヤマタニの手にすり寄った。

それからというもの、ハチは屋敷で元気に駆け回り、誰にでも懐いた。

だが――

特にヤマタニには異様なほど従順だった。

まるで言葉を理解しているかのように動き、指示を出さずとも意図を汲む。

時折見せる視線には、仔犬とは思えない知性が宿っていた。

ある日のこと。

ヤマタニが馬車で工場巡回に向かっていると、突如として野党に襲撃された。

「ヤマタニ様!外に出ないでください!」

護衛たちが応戦するが、敵の数が多すぎる。

「最近、やけに増えているな……」

馬車のすぐ近くまで敵が迫る。

このままでは押し切られる。

ヤマタニは銃を手に取り、扉に手をかけた。

――その瞬間。

ガタンッ!

ハチが馬車から飛び出した。

「ハチ!?」

次の瞬間、空気が裂けた。

一瞬で距離を詰め、野党の一人の喉元に噛みつく。

鎧ごと、肉を引き裂いた。

「なっ……!?」

さらにもう一人。

横から襲いかかった男を、まるで見えているかのように回避し、そのまま首を噛み砕く。

速い――いや、速すぎる。

目で追えない。

気づけば、十人近くいた野党は地面に倒れ伏していた。

静寂。

血の匂いだけが残る。

「……これは、驚いたな。」

ヤマタニはゆっくりと馬車を降りた。

ハチは何事もなかったかのように駆け寄り、尻尾を振る。

「ハチ……お前、本当に……。」

ヤマタニはその頭を撫でる。

柔らかい毛並み。

だが先ほどの光景が、頭から離れない。

ハチは低く唸り、倒れた野党の一人をじっと見下ろしていた。

その目は――

庭を駆け回っていた仔犬のものではなかった。

「……ハチ?」

呼びかけると、ハチはすぐに表情を緩め、いつものように擦り寄ってくる。

まるで何もなかったかのように。

だがヤマタニは、確信していた。

この仔犬は――

ただの番犬ではない。

とんでもないものを拾ってしまったのかもしれない。