作品タイトル不明
謎の魔物使い
第10話 謎の魔物使い
後日、ゴドールらが意識を取り戻した。
ヤマタニは、あの日に何が起きたのかをすぐにゴドールにたずねた。
「あの日、あのあとどうしたんだ?」
「あぁ。ヤマタニ様と別れた後、森に向かいました。」
ゴドールは静かに語り始める。
「単に、あの魔物の鳴き声が気になっただけです。ですが、どうも森の奥から聞こえてくるようでして……。」
「森の奥まで様子を見に行き、そのまま帰ろうとしたのですが――。」
そこで一度言葉を切る。
「魔物の群れに遭遇してしまいました。」
「夜通し、逃げては戦い、戦っては逃げることの繰り返しでした。」
「そして、ついに疲れ果ててしまい……面目ありません。」
ゴドールは深く頭を下げた。
「いや、無事で良かった。」
ヤマタニは短く言い、顔を上げるよう促す。
「しかしながら、魔物の群れを操っている男がいます。」
「それはどんな奴だ?」
「はい。魔物を操っている男は、おそらく魔物使いかと。ですが、流石に倒すことは出来ませんでした。」
「……謎の魔物使いか。」
ヤマタニは小さく呟いた。
「ヤマタニ様、どうかお気をつけください。」
「ふむ……。」
実のところ、ヤマタニ自身もすでに魔物の群れと遭遇していた。
だが、そのことはあえて口にはしない。今は何より、ゴドールの休養が優先だ。
◆
街道は再び通行可能となり、様々な人々が往来し始めた。
あれほどのロックゴーレムが出現した以上、本来ならば長く警戒が続いてもおかしくはない。
それでも人の流れは戻り、街道はひとまずの平穏を取り戻したかに見えた。
しかし――
しばらくすると、街道沿いの森で再び魔物が出没し、通行不能となったという報告が入る。
「……これではイタチごっこだな。」
ヤマタニは低く呟いた。
ロックゴーレムに続き、今度は魔物の群れ。
明らかに、何者かの意図が働いている。
何らかの対策を講じなければならない。
最も手っ取り早い方法は、その魔物使いを倒すことだが――
相手の所在も動きも掴めない以上、慎重に事を進める必要がある。
ヤマタニはゴドールに視線を向けた。
「魔物の群れへの対応部隊と、魔物使い討伐の部隊に分けるべきだな。」
「……はい。」
「まず俺が囮になって魔物を引きつける。その間に別働隊で魔物使いを叩く。どうだ?」
ゴドールはしばし黙考した。
やがて、ゆっくりと口を開く。
「悪くはありません。ただ……何が起こるかわかりません。」
「予備部隊をヤマタニ様の側に置きましょう。万が一に備えて。」
「……わかった。それでいこう。」
こうして作戦は決定した。
ヤマタニ本隊が囮となり前面へ出る。
ゴドールは予備部隊として後方に控える。
ミランドとカミルは別働隊として魔物使いの討伐に向かう。
その他の部隊はヤマタニの両翼を固め、支援に回る。
それぞれの役割が明確に定まり、準備は整った。
明日、街道の森にて魔物掃討が行われる。
◆
翌朝。
ヤマタニは装甲車に乗り、騎士団とともに街道の森へと向かった。
森へ足を踏み入れると、空気が一変する。
静けさの中に、どこか張り詰めた気配が漂っていた。
だが――
森を進んでも、魔物使いの姿は一向に見当たらない。
魔物の気配はある。だが、肝心の“主”が現れない。
「……また、帰り際の待ち伏せかもしれないな。」
ヤマタニはそう判断し、部隊に引き返すよう命じた。
進軍ではなく、あえて退くことで敵を誘い出す。
だが――
それでも、魔物使いは姿を現さなかった。
「……一体どういうつもりなんだ?」
ヤマタニは眉をひそめる。
敵の意図がまるで掴めない。
ゴドールが警戒を崩さず、静かに言った。
「何らかの揺動かもしれません。こちらの隙を窺っている可能性があります。」
「……なるほどな。」
ヤマタニは周囲を見渡す。
森は静まり返っている。
だが、その静けさがかえって不気味だった。
――見られている。
そんな感覚だけが、拭えずに残る。
結局その日は、魔物使いと対峙することなく帰還することとなった。
なぜ現れないのか。
何を狙っているのか。
疑問だけが積み重なっていく。
ヤマタニたちは警戒を強めつつ、再び森へ向かうしかなかった――。