作品タイトル不明
大盗賊団再び
第77話 大盗賊団再び
装備を整えた大盗賊団は、サンブレロのヤマタニ屋敷を再び狙っていた。
以前の屈辱を晴らし、大金を奪うために――。
「以前は簡単に奇襲できましたからねぇ。今回もやってやりましょうぜ。」
「そうだな……だが油断はするな。」
シグマは低く言う。
「やつの発明品には気をつけろ。あの奇妙な車にはしてやられた。」
「へへっ、今回は問題ありませんぜ。」
部下がニヤリと笑う。
「すでに引き込み役を潜入させております。門は内側から開きます。」
「しかも街や屋敷内じゃ、あの車も使えません。」
「……なるほどな。」
シグマは酒をあおり、女を引き寄せて笑った。
「いいだろう。今度こそ終わりにしてやる。」
◆
孤児院上がりの騎士団最年少、ピケは塞ぎ込んでいた。
騎士団に入ったものの、重傷を負い長く戦線を離脱。
復帰後もジャイアントボアに吹き飛ばされ失神。
盗賊団討伐でも、目立った戦果は上げられなかった。
今はヤマタニ屋敷、南門の警備を任されている。
「……一般兵と変わらないな。」
自嘲気味に呟く。
そんなある日。
用を足しに向かった物陰から、ひそひそとした声が聞こえてきた。
「合図は口笛だ。タイミングを見て、閂を外せ。」
「これが報酬だ。成功すればさらに出す。」
「……わかった。」
ピケが音を立てた瞬間、気配は消えていた。
(今のは……内通者か?)
一瞬迷う。
(証拠もない。だが――。)
拳を握る。
(ここで何もしなければ、また同じだ。)
ピケは駆け出した。
◆
数日後。
大盗賊団がサンブレロの街へ押し寄せた。
その数、およそ百。
門はあっさりと突破され、ヤマタニ屋敷は完全に包囲される。
「ヤマタニ!今日がお前の命日だ!」
「かかれ!!」
シグマの号令と共に、一斉に突撃が始まった。
南門。
――ピィィィッ。
口笛が響く。
跳ね橋が降り、門が開かれた。
「引き込み役が成功したぞ!突っ込め!」
二十名ほどが一気に内部へなだれ込む。
だが――
「……なんだここは?」
進んだ先は行き止まり。
正面は壁、左右も壁。
袋小路。
「おい、門を開けろ!」
再び口笛が鳴る。
しかし――何も起きない。
次の瞬間。
上から無数の矢が降り注いだ。
「ぎゃああああ!!」
逃げ場のない虎口で、盗賊たちは一瞬で殲滅された。
◆
他の門でも同様だった。
門前で足止めされた盗賊たちに、矢と石が容赦なく降り注ぐ。
気づけば、百いたはずの盗賊団は半数以下に減っていた。
「お頭、やべぇですぜ!」
「……ちっ。」
シグマは歯噛みする。
「門は諦めろ!縄梯子だ!壁を越えろ!」
盗賊たちは一斉に塀へ取り付く。
しかし――
上から石が落ち、次々と叩き落とされる。
ようやく登りきった者には、熱湯が浴びせられた。
「ぐああああ!!」
さらに、容赦ない弓矢。
誰一人として、屋敷内部へ辿り着けない。
「くそ……!」
シグマが次の策を巡らせた、その時――
「門が開くぞ!」
重々しい音と共に、正門が開いた。
現れたのは、整然と並ぶヤマタニ騎士団。
「反撃開始だ。」
号令と共に、一斉に突撃する。
統率の取れた動きに、盗賊団は一気に崩れた。
「や、やべぇ!逃げろ!」
シグマは舌打ちし、撤退を決断する。
「撤収だ!!」
散々に打ちのめされ、大盗賊団は逃げ去っていった。
◆
この勝利の裏には――
一人の小さな決断があった。
南門の警備に立つピケは、静かに拳を握る。
「……やっと、役に立てたか。」
その報告は、確かにヤマタニへと届いていた。
ピケにとって――初めての“手柄”であった。
二部 完