作品タイトル不明
ひとりで生きる事を決めた少年
第74話 ひとりで生きる事を決めた少年
俺の名前はトブ。毎日毎日物乞いをして生活している。親父は飲んだくれで、物乞いの金を酒にしちまうろくでなしな親だ。
そんな親でもいないよりかはましだろう。
しかし何とか2人で1日パンが買えるくらいの稼ぎにはなる。
稼ぎがない日は水や木の実でも採って食べるさ。 草だってアク抜きすれば食べれる。
魚が釣れたら万々歳だ。
ある日いつものように、空き缶を置いて座っていると噂話が聞こえてきた。
「寂れた村がガラッと変わった話知ってるか?」
「ああ。ソンナ村だろ?知ってる。」
2人の話がなんとなく耳に入ってきた。
「寂れた農村があっという間に工場が立ち並ぶ街になったらしいな。」
「そうそう。工場には何故か子供が働いているらしい。」
「子供なら給料安く、こき使えるんじゃないか?」
「それが、ちゃんと寮や食べ物なんかも用意してくれるらしいな。」
そんな子供が働ける工場なんかあるものか!と言いたくなったが、トブは堪えた。
腹いっぱい食べれたらいいな。
大体でっちだと住み込みで食べさせてくれて、寝るところもあるさ。
でも給料まで子供がもらえるわけねーだろ。
貰ったとしても、お客さんからのチップくらいなもんだろう。
まぁ〜、一回その村に行って見てみたい気はするが、眉唾だろうな…きっと。
噂は噂。トブは気にもしない。物乞いの時間が終わると魚の仕掛けを見に行く。 今日は一匹ひっかかっていた。
ラッキーだ。
あとはレストランのゴミ箱漁りだ。食べられそうな物はないか?
クズ野菜が手に入った。今日はなかなか良い日だ。
黒パンとフナとクズ野菜で、ディナーだな。
家に帰ると父親がいなかった。 また酒屋の裏に行って、空き瓶の残り酒でも舐めてんじゃないかな。
魚や野菜を入れてスープを作ってみた。 我ながら会心の出来だった。
俺はコックに向いてるかも知れない。
しかし親父はなかなか帰って来なかった。 一人で夕飯を食べ、眠りについた。
翌日の朝も、次の朝も親父は帰って来なかった。
「どうやら、俺は捨てられてしまったようだ。」
ハハハ。
トブは笑って誤魔化した。
あんな親でもいないと寂しいもんだな。
喉の奥が痛い。
「これから俺は、一人でどうやって生きればいいんだ?」
心の中で自問自答する。
ソンナ村でも行くか? いや、あんなのデタラメに違いない。
親父がいなくても、これまで通りさ。
一人だって立派に生き抜いてやる。
トブは一人で生きていく決意をかためた…。
夜風がまた一段と冷たかった。
付近は落ち葉で寒さが増してきた頃だった。