作品タイトル不明
ヤマタニ領税
第72話 ヤマタニ領税
これまで隣町や既存の税制度を流用していたが、街はほぼ完成した。
ならば――税もまた、ヤマタニのやり方に変えるべきだ。
サンブレロ街の土地、建物、その大半はヤマタニ、そしてソンブレロモネダ商会の所有となっている。
ここで暮らす者は、例外なく税を納める必要があった。
町役場で登録した者には、三つの支払い方法が与えられる。
――金銭
――作物(小麦など)
――労働
税率は一律33%。
他領と比べて、特別高くも低くもない。
だが――違う点が一つあった。
「労働での納税は、少し軽くする。」
ヤマタニはそう決めた。
現金を持たぬ者でも、生きていけるようにするためだ。
貧しかったこの街の住民にとって、それは大きな救いとなる。
粉挽きの使用料は据え置き。
だが、入場税や橋税といった細かな税は撤廃した。
「税金管理官に任せきりだったが――これからは違う。」
ヤマタニはトリヤに向き直る。
「ヤマタニ家のやり方でやる。」
トリヤは眉をひそめた。
「しかし……ヤマタニ様。税は、取れるところから確実に取らねばなりません。」
「外壁、橋、施設……どれも莫大な費用がかかっております。維持費も、兵の給金も必要です。」
「入場税や橋税は、安定した収入源となりますぞ。」
その声には、現実を知る者の重みがあった。
だが、ヤマタニは首を横に振る。
「だからこそ、33%だ。」
「この街の大半は貧しい。金はない。」
「なら、働いてもらうしかない。」
一歩も引かない。
トリヤはしばし沈黙し――やがて口を開いた。
「……では、今年度はこの制度で様子を見ましょう。」
「もし税収が不足すれば、その時に改めればよい。」
妥協だった。
領主はヤマタニ。決めるのは彼だ。
(……このままでは、いずれ苦しくなる。)
トリヤはそう確信していたが、それ以上は言わなかった。
「うむ。それでいこう。」
ヤマタニは頷く。
「税については、君の経験を頼りにしている。」
「これからも助言してくれ。」
「はっ。」
こうして、ヤマタニ領の新たな税制が始まった。
――だが。
そのやり取りを、側で聞いていたケイトは思う。
(……トリヤの言う通りだ。)
(取れるうちに、取るべきだ。)
(でなければ――あとで必ず困る。)
小さな不安が、胸に残った。