軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

水堀完成と外輪船

第70話 水堀完成と外輪船

――ついに、水堀が完成した。

水門を開けば、川の水が水路を通り、ゆっくりと堀を満たしていく。

城を守る防衛設備でありながら、それは同時に――新たな交通路でもあった。

そして翌日。

隣接するドックから、一隻の船が静かに水面へと滑り出した。

試作型――外輪船。

「……進水は成功、だな。」

「はい、社長。ボイラー圧力、上昇中。規定値、到達します。」

助手のトミーが圧力計を見つめながら答える。

「よし……外輪、回せ。」

「外輪、回します!」

――ギギ……ギギギ……

ゆっくりと。だが確実に、巨大な外輪が回り始める。

ヤマタニは、汽笛の紐を引いた。

――ピィィィィィィィィィ!!

高らかな音が、水路に響き渡る。

「これより、テスト航行を開始する。」

黒煙が煙突から立ち上る。

蒸気の唸りとともに、船体が水を押し分けた。

遅い。だが――力強い。

「サンブレロを一周する。ボイラーマン、釜焚き頼むぞ。」

伝声管に声を通す。

「任しときなぁ!!」

威勢のいい返事とともに、蒸気圧がさらに高まる。

――シューッ……ボォォォ……

船は、確かな推進力を得て前進していく。

「……いいな。」

「ああ。想像以上だ。」

順調すぎるほどの滑り出し。

――その時だった。

ドカン!!

「!?」

激しい衝撃。

船体が――ぐらり、と揺れた。

一瞬、浮力を失ったかのような感覚。

「止めろ!外輪停止!!」

水面が荒れ、外輪が空転する。

慌てて右舷を確認すると――

流木が、外輪に噛み込んでいた。

一部の羽根板が、無残に折れている。

「……っ、下手すりゃ軸ごと持ってかれてたな。」

「危なかったですね……。」

トミーの声も、わずかに強張っていた。

「完全に見落とした。見張りが必要だ。」

「水上は“見えない障害物”が多いですから……

。」

だが致命傷ではない。

「流木をどかせば、帰還は可能です。」

「よし……ドックに戻るぞ。修理だ。」

外輪船は、ゆっくりと方向を変え――

そのまま帰還した。

修理はドックに任せる。

そしてヤマタニは、すでに次の未来を見ていた。

――中央広場の再開発。

「ここを……テーマパークにする。」

ぽつりと呟く。

トミーは、一瞬言葉を失った。

だが、その構想は――すぐに理解できた。

常識の枠を、明らかに超えている。

町の中をバスが走る。

外周を機関車が巡る。

水路には外輪船。

――街そのものが、アトラクション。

移動するだけで楽しい。

移動するだけで金が生まれる。

「体験させるんだよ。」

ヤマタニは笑う。

「子供の頃に“乗った記憶”は、一生残る。」

だから――

その子供が大人になったとき、自然と選ぶ。

自動車も。鉄道も。船も。

すべて――ヤマタニ製を。

「教育と娯楽と商売を、全部まとめる。」

それが、この構想の本質だった。

植物園。

博物館。

発明品展示。

そして――

ゴーカート。観覧車。ジェットコースター。コーヒーカップ。

入口では記念撮影。

帰りには写真を渡す。

出口は必ず土産屋を通す。

「……完璧だな。」

さらにホテル、キャンプ場。

滞在型へ拡張すれば、金は何度でも落ちる。

ヤマタニの頭の中では、すでに“完成形”が出来上がっていた。

「……ただし。」

ひとつだけ、重要な点がある。

「周囲の治安管理は徹底しないとな。」

余計な店が入り込めば、すべてが崩れる。

夢の空間は――守らなければならない。

ヤマタニテーマパーク構想。

それは今、静かに――

だが確実に、動き出した。

――この街の運命を、変える計画が。