軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゼンマイ式おもちゃと従業員の選抜

第14話 ゼンマイ式おもちゃと従業員の選抜

限定品や、新しく動く玩具はよく売れた。

客は物珍しさに惹かれ、土産や贈り物として手に取っていく。

ヤマタニは手応えを感じていた。

(次は“仕掛け”だな。)

現代の知識を頼りに、彼は金属くずを丸め、試行錯誤しながらゼンマイを作った。

単純な構造だが、巻けば力を蓄え、ほどけることで動力になる。

これがあれば、安価で“動く”玩具が作れる。

試作第一号――ゼンマイ式の馬車。

床に置き、ゼンマイを巻いて手を離すと、カタカタと小さな音を立てて前へ進んだ。

それを見た従業員たちは、目を丸くした。

「すごい……勝手に動いてる……!」

「魔法じゃないんですか……?」

歓声に近いざわめきが広がる。

ヤマタニは小さく頷いた。

「よし、これも商品にしよう。限定100個だ。」

希少性を持たせる。

売れる確信があった。

価格は銀貨一枚程度。

裕福でなくとも、少し背伸びすれば手が届く額だ。

(問題は生産だな。)

ヤマタニは再び、人手を増やすことにした。

これまでの従業員は忠実で真面目だ。

だが、この玩具は細かい作業が多い。

手先の器用さと、理解力が必要になる。

(選別がいるな。)

彼は簡単なテストを考えた。

木を削り、積み木を作る。

丸い円柱、四角、三角、長方形――形も大きさもばらばらだ。

それを机に並べ、条件を決める。

「これを組み合わせて、俺の言った通りに、早く、正確に完成させろ。」

さらに、大量の安いパンも用意した。

「パンが食べたければ、テストを受けろ。

合格すれば工場で働ける。寮と食事付きだ。」

その言葉は、強かった。

あっという間に噂が広まり、少年少女たちが集まってくる。

工場の周りには、何十人もの浮浪者が押し寄せた。

だが――

最初にテストを始めた時、ヤマタニはすぐに気づいた。

(ダメだな。)

視線は積み木ではなく、パンに釘付けだった。

手は動くが、雑。

形も順序も無視して、とにかく終わらせようとする。

空腹が、思考を奪っている。

ヤマタニは一度手を止めさせた。

「先に食え。」

パンを配り、お茶も出す。

少年少女たちは無言でむさぼった。

噛む音だけが、やけに大きく響く。

あっという間に、用意したパンは消えた。

(……相当、飢えてたな。)

少し時間を置いてから、再びテストを始める。

今度は違った。

ゆっくりだが、考えながら手を動かす者が増える。

それでも――

落ちる者は多かった。

雑な積み方。

ぐらつく構造。

説明を理解できていない配置。

理由は様々だが、“仕事として任せられるか”という基準では足りない。

次々とふるいにかけられていく。

静かに涙を流す子。

悔しそうに歯を食いしばる子。

何も言わず去る子。

ヤマタニは、感情を切り離して見ていた。

(全員は救えない。)

それが現実だった。

だが――

その中で、五人だけが残った。

指示通りに組み上げ、形も正確。

無駄な動きがなく、完成も早い。

ヤマタニは腕を組み、少しだけ考える。

(二人でいいな。)

五人いれば余裕はある。

だが、教育コストと管理を考えれば、最初は絞るべきだ。

「……合格は二人だ。」

空気が張り詰めた。

名前を呼ばれた二人は、信じられないという顔をしていた。

残りの三人は、一瞬だけ俯き――すぐに顔を上げた。

「また来い。機会は作る。」

ヤマタニはそうだけ告げた。

完全に切り捨てるわけではない。

だが、今は選ぶしかない。

合格した二人には、すぐに待遇を与えた。

食事。

風呂。

そして清潔な作業着。

子供用の服はないため、大人用を縫い詰めて調整する。

最初は戸惑っていた二人も、やがて少しずつ表情を緩めていった。

(これでいい。)

仕事を与え、対価を払う。

その循環を作ることが、ヤマタニのやるべきことだ。

こうして――

ゼンマイ式おもちゃの生産が、本格的に始まった。