軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国王陛下、装甲車に乗る

第68話 国王陛下、装甲車に乗る

王命で作った装甲車――

その完成は、俺の首と引き換えかもしれなかった。

とりあえず、車体は完成している。

残るは――バッテリーだけだ。

鉱物講師から受け取ったリチウムで、試作を行う。

次の瞬間。

ぼっ!!

白い炎が爆ぜた。

「うおっ!?」

思わず飛び退く。作業台が焦げ、布に火が移りかける。

「水だ!急げ!」

消火。

あと一歩で、工房ごと燃えていた。

焦げた匂いの中、ヤマタニは呟く。

「……だめだ。何度やっても燃えちまう。」

納車後に発火すれば――

処刑。

その未来が、はっきりと見えた。

「社長さん……やめましょう。これは危険すぎます。」

「火の車なんて見せたら、間違いなく首が飛びます。」

「……それでもだ。」

ヤマタニは焦げた作業台を見つめた。

「ここで止めたら――俺は終わる。」

沈黙。

「他に使える物はないか?」

鉱物の山に目を走らせる。

その中で、柔らかい塊が指に触れた。

「これは?」

「天然の鉛です。」

押すと、へこむ。

(――いける。)

「鉛を二つ……硫酸に浸ける。」

「……何をするんです?」

「充電できる電池――二次電池だ。」

試作開始。

だが、容器がない。

硫酸に耐える素材がない。

考え込んだ、そのとき。

火花が散った。

「社長さん、あれは?」

「ああ、溶接だ。火を見るなよ――。」

言いかけて、止まる。

(バーナー……高温……。)

(――ガラスを焼ける。)

思考が一気につながった。

「でかした!講師!一杯奢るぞ!」

「はぁ!?」

耐熱硝子のケースを作る。

さらにゴムで覆い、衝撃対策。

そして――

「……できた。」

鉛蓄電池、完成。

装甲車に搭載する。

「いくぞ。」

モーターが唸る。

動く。

走る。

止まらない。

「……いける。」

航続距離、約40km。

短い。だが――ゼロではない。

確かな前進だった。

――数日後。

王城、納車の日。

「ワシが乗る。」

「陛下!危険です!」

「ならば近衛隊長と宰相も乗れ。それでよいだろう。」

止められない。

装甲車が走り出す。

城の外周。

順調――

そのとき。

ガクンッ!!

車体が大きく揺れた。

「なに!?」

一瞬、出力が落ちる。

(電池か――!?)

電圧の乱れ。

計算にはなかった挙動。

車体が傾く。

転倒すれば――終わりだ。

(まずい――!!)

背中に冷たい汗が流れる。

指先が震える。

だが。

次の瞬間、出力が戻る。

装甲車は持ち直し、そのまま走り切った。

やがて停止。

沈黙。

重い空気が場を支配する。

「……ふぅ。」

王が息を吐いた。

そして――笑う。

「面白い。」

ゆっくりと立ち上がる。

「これはただの乗り物ではない。」

一歩、車体を叩く。

「未来を運ぶ“獣”だな。」

その一言で、空気が変わる。

「ワシはな、この装甲車に乗りたかったのだ。」

家臣たちの緊張がほどけていく。

「見事だ。」

王が、真正面から言った。

「よくここまで形にした。」

その言葉の重さに――

ヤマタニの手が震えた。

張り詰めていたものが、切れる。

「……っ。」

声が出ない。

ただ、深く頭を下げた。

――助かった。

その実感だけが、胸に広がる。

だが。

(まだ足りない。)

航続距離、40km。

あまりにも短い。

そして――

(さっきの出力低下……。)

あれは偶然じゃない。

電池は、まだ未完成だ。

(このままじゃ終わらない。)

(もっと速く、もっと遠くへ――。)

300km。

いや、それ以上。

この世界の移動を変える。

ヤマタニは震える拳を、強く握り。