作品タイトル不明
ヤマタニが嫌いな貴族
第61話 ヤマタニが嫌いな貴族
住民が、じわじわと減っている。
その多くが――ヤマタニ領へ流れているという。
「……由々しき事態だ。」
ギンガム男爵は、机を強く叩いた。
このままでは、領地は空になる。
税収どころか、維持すら困難になる――。
「ヤマタニめ……あの成り上がりが。」
歯ぎしりする。
先日送り込んだ暗殺者も、あっさり返り討ち。
どうにも、容易には崩せない相手だ。
「……一人では限界か。」
ギンガムは決断した。
同じ不満を抱く貴族を集めることに。
呼び寄せたのは、シャルダン男爵とベルナー男爵。
「どうだ。奴の領地に火を放つというのは。」
ギンガムの提案に、シャルダンが顎に手を当てる。
「発電所、とやらがあるのでしょう。
石炭を大量に扱っていると聞きます。……確かに、火は有効かと。」
「くく……面白いじゃないか。燃やしてしまえ。」
ベルナーは愉快そうに笑った。
こうして、放火工作は決定した。
夜――。
複数のごろつきが、同時に火を放つ。
倉庫、資材置き場、そして発電施設周辺。
炎は一瞬、闇を裂いた。
だが――
「消火だ!水を回せ!!」
即座に警鐘が鳴り響き、警備員と騎士団が動く。
訓練された連携。
配置された水桶、消火設備。
火は広がる間もなく、次々と叩き消されていく。
「くそっ、なんだこの警備は……!」
ごろつき達は狼狽し、やがて逃走した。
結果――被害は軽微。
ヤマタニ領は、意外と隙がなかった。