軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタニはモテモテ

第60話 ヤマタニはモテモテ

少女たちの声は、騒がしくもどこか真剣だった。

笑いながら受け流しているヤマタニだったが、その目の奥はほんのわずかに柔らかくなる。

彼にとって彼女たちは「守るべき存在」であって、対等な恋愛対象として見るには、まだあまりにも幼い。

しかし――。

その純粋な言葉は、確かに胸の奥に残るものがあった。

「……まったく、困った連中だな。」

小さく呟きながらも、ヤマタニは再び一人ひとりの頭を撫でていく。

その手つきは、いつもより少しだけ長く、丁寧だった。

その様子を、少し離れた場所から見ている者がいた。

秘書見習いのレイナである。

彼女は書類を抱えながら、その光景を静かに見つめていた。

(……やっぱり、みんな同じなんだ。)

孤児院出身の少女たちにとって、ヤマタニは“救い”そのものだ。

だからこそ、その想いは自然と“憧れ”や“恋”へと変わっていく。

だが同時に、レイナは理解していた。

その距離は、簡単には縮まらない。

「社長。」

レイナが声をかけると、ヤマタニは少女たちの相手を終え、ゆっくりと振り向いた。

「ん、どうした?」

「午後の予定ですが、少し変更が入っています。」

「ほう、どれどれ。」

書類を受け取るヤマタニの横で、少女たちはまだ小さく言い争っている。

「わたしが一番最初に結婚するんだから!」

「ちがうもん!あたしが先!」

そのやり取りに、レイナは思わず小さく微笑んだ。

(……でも、いつか。)

レイナは心の中でそっと呟く。

(あの人の隣に立つのは、ただ憧れるだけじゃなくて、自分で選ばれた人なんだろうな。)

その時、ヤマタニがふとレイナに視線を向けた。

「レイナ。」

「はい。」

「お前も大変だな。この騒ぎの中で仕事とは。」

「慣れました。」

短く答える。

だが、その瞳はどこか揺れていた。

ヤマタニは軽く笑う。

「まあいい。これも賑やかで悪くない。」

その言葉に、少女たちの声がさらに弾む。

未来の約束と、今の時間。

それぞれの想いはまだ交わらない。

だが確かに――同じ場所に積み重なっていく。

そして、その積み重ねの先に、誰かの想いが届く日が来るのかもしれない。