作品タイトル不明
冒険者アルの仕事
第59話 冒険者アルの仕事
「あ〜……またネズミ退治かよ。」
穀物庫の見張り番。
気づけば、アルは“ネズミ専門”のようになっていた。
仕事があるのはいい。
だが——昼夜逆転の生活は、地味に堪える。
(俺、何やってんだろうな……。)
そんなある日。
掲示板に新しい依頼が貼り出された。
——近くの畑が荒らされている。原因不明。
アルはすぐに察した。
(……ああ、俺のせいか。)
穀物庫を守ったことで、ネズミは餌場を変えたのだ。
◆
深夜。
畑に現れたのは——やはりネズミ魔物だった。
アルは迷いなく斬り伏せる。
「……今日は8匹か。」
だが——
朝方、再び気配がした。
今度は違う。
逃げる“人影”。
追いついた先にいたのは——
小麦を抱えた、二人の少女だった。
「あの……見逃して……。」
震える声。
細い腕。
——魔物より、よほど弱い存在だった。
◆
焚き火の前。
「……腹、減ってんだろ。」
差し出したパンとチーズ。
最初は警戒していたが——
一口食べた瞬間、止まらなくなった。
むしゃむしゃと、夢中で食べる。
その様子に、アルは目を細めた。
(……昔の俺だ。)
「その麦、どうやって食ってた?」
「……お湯に入れて……増やして……。」
「そっか。」
静かに頷く。
(ネズミだけじゃねぇ……。)
(人間も、食い場を失ってる。)
◆
「このままだと、お前ら奴隷送りだぞ。」
びくっと震える二人。
アルはすぐに手を上げた。
「安心しろ。悪いのはお前らじゃない。」
一瞬だけ、言葉に詰まる。
そして——
「……悪いのは、全部——魔物だ。」
◆
夜明け前。
アルは二人を連れて、孤児院へ向かった。
背後では、穀物庫の消した焚き火の跡の煙が小さく揺れている。
守ったはずの場所。
だが、その外で——守れなかったものがあった。
朝日が昇る。
やけに、眩しかった。
(……これでいいのかよ。)
答えは出ない。
だがアルは、歩き続けた。