軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタニ日記1

第57話 ヤマタニ日記1

ヤマタニの朝は早い。

薄明かりの中、静かに目を覚ますと、まず身支度を整える。

そのまま屋敷の外へ出て、周囲をゆっくりと歩いた。

朝の冷えた空気を吸い込みながら、意識をはっきりとさせる。

一日の流れを頭の中で組み立て、今日やるべきことを整理していく。

屋敷に戻る頃には、体も心もすでに仕事へ向かう準備が整っていた。

朝食は屋敷の食堂でとる。

焼き立てのパン、温かいスープ、彩りのよいサラダ、ゆで卵、ヨーグルト、そして香り高いコーヒー。

規則正しく、質の良い食事が用意されていた。

朝食を終えると、ケイト、ヒラリーと合流し、馬車に乗って会社へ向かう。

道中の時間も無駄にはしない。

簡単な報告や打ち合わせを交わしながら、今日の予定を再確認する。

会社に到着すると朝礼を行い、その後は会議、そして各工場セクションの見回りへと移る。

現場を歩き、設備の状態を確認し、作業の進み具合を把握する。

合間を見つけては発明の図面を引き、時には実際に組み立てを行う。

休憩時間には工場の周囲を歩いたり、孤児院の様子を見に足を運ぶこともあった。

子どもたちの様子を確認し、必要があれば手を差し伸べる。

助手と共に他の工場を巡察し、打ち合わせを重ねることも日課の一つである。

昼食は工場の食堂、あるいは孤児院で孤児たちと共にとる。

朝に焼かれたパンと野菜のスープ、そしてお茶。

質素ながらも温かい食事を囲み、子どもたちと同じ時間を過ごす。

食後は、しばし孤児院の子どもたちと過ごす。

何気ない会話や笑い声の中に、日々の疲れが和らいでいくのを感じていた。

午後になると、再び仕事へ戻る。

秘書たちと共に取引先を巡り、販売代理店、原料の供給先、銀行、そして他の商会などを訪問する。

交渉や調整を行いながら、事業の基盤を広げていく。

屋敷へ戻った後は、秘書たちと三時のお茶をとる。

束の間の休息でありながら、次の予定の確認や軽い打ち合わせの場でもあった。

その後は面会や面接、プロジェクトの現場視察など、対外的な対応が続く。

合間を見ては再び発明の作業に取り組み、夕方まで時間はあっという間に過ぎていく。

十八時頃、ケイトやヒラリーらと共に馬車で屋敷へ戻る。

夕食は白身魚のムニエルにスープ、パン、サラダ、そして白ワイン。

食後には季節の果物をデザートとして楽しむ。

夕食後は妻たちとお茶を飲みながら会話を楽しみ、執事長から屋敷の報告を受ける。

その後、入浴を済ませ、静かに本を読んでから床に就く。

このような多忙な日々が、淡々と繰り返されていた。

ある日のこと。

ヤマタニに強い興味を持ったという人物が、王都大学から訪ねてきた。

セルファン教授と名乗るその男は、ヤマタニの発明や仕事ぶりを間近で学びたいと申し出た。

「極秘案件以外であれば、見るだけなら構いませんよ。」

ヤマタニはそう答え、しばらくの間、共に行動することを許可した。

こうしてセルファン教授は、ヤマタニの日常に密着することとなる。

しかし――彼は単なる大学教授ではなかった。

ある貴族から密かに依頼を受けた、暗殺者である。

その目的は、ヤマタニの行動を観察し、事故を装って始末すること。

工場には危険が溢れている。

工具は凶器となり得るし、蒸気設備は一歩誤れば重大な事故を引き起こす。

さらに蒸気バスのような新しい技術もまた、使い方次第では“武器”となる。

セルファンは冷静に周囲を観察しながら、内心でほくそ笑んだ。

「ふふふ……さて、どうやって奴を始末してやろうか。」

静かに、しかし確実に。

彼は策謀を巡らせ始めていた。