作品タイトル不明
真犯人を探せ
第54話 真犯人を探せ(強化版)
ヤマタニは確信していた。
——敵は、必ずもう一度来る。
「警備を一部、外せ。」
その命令に、現場はざわついた。
「よろしいのですか? また被害が——。」
「構わない。」
即答だった。
「餌を撒かなければ、魚は釣れない。」
その声に、一切の迷いはない。
既に“狩り”は始まっていた。
◆
その夜。
あえて警備を薄くした車庫に、影が滑り込む。
二人組の男。
足音を殺し、周囲を警戒しながら進む。
「……本当に大丈夫なんだろうな。」
「報酬は破格だ。やるしかねぇ。」
低く交わされる声。
前回と同じ手口。
車体の下へ潜り込もうとした——その瞬間。
「そこまでだ。」
闇を裂く声。
次の瞬間、松明が一斉に灯った。
視界が焼けるように明るくなる。
「なっ!?」
逃げ場はない。
既に周囲は騎士団に塞がれていた。
剣が向けられる。
「動くな。」
わずか数秒。
それで全てが終わった。
◆
取り調べは、密室で行われた。
最初、男たちは口を閉ざしていた。
視線を逸らし、歯を食いしばる。
——だが。
「依頼主は誰だ。」
ヤマタニの声は低く、感情がなかった。
その“無”が、逆に重くのしかかる。
沈黙。
時計の針の音だけが響く。
コツ、コツ、と。
「……言わないなら、それでもいい。」
ふと、ヤマタニが言った。
「ただし——お前たちの雇い主は、もうお前たちを切っている。」
男の肩が、わずかに震えた。
「証拠は残さない。そういう連中だ。」
「っ……。」
「つまり、お前たちは——“消される側”だ。」
静かに告げられる事実。
逃げ道が、完全に塞がれる。
「……し、知らねぇ……!」
ついに崩れた。
「ただ……!」
顔を上げ、叫ぶ。
「“ハモンド様のとこ”に金をもらっただけだ!」
その名が出た瞬間——
部屋の空気が、凍りついた。
◆
同時刻。
ある屋敷の一室。
「……捕まったか。」
ハモンドは静かに呟いた。
机の上には、既に処分された書類の灰。
証拠は、残っていない。
「だが、問題ない。」
ゆっくりと立ち上がる。
「駒は捨てるためにある。」
その声音に、一切の揺らぎはない。
窓の外。
夜の街を見下ろしながら、薄く笑う。
「せいぜい足掻くがいい。」
◆
「ハモンド……。」
ヤマタニはその名を繰り返した。
——やはり来たか。
だが、まだ足りない。
名前だけでは、潰せない。
証拠がない。
法も、貴族も、この段階では動かせない。
「……いいでしょう。」
静かに呟く。
その目に、冷たい光が宿る。
机に地図を広げる。
視線は一点——
ハモンドの拠点へ。
「証拠を探す必要はない。」
ぽつりと、言った。
「証拠を“作らせる”。」
静寂。
そして、わずかに口元が歪む。
「追い詰めれば、必ず動く。」
その声は確信に満ちていた。
「ならば——逃げ場ごと潰す。」
完全に、獲物を狙う目だった。