作品タイトル不明
人口爆発による弊害
第51話 人口爆発による弊害
「人が多すぎる!」
サンブレロの街は、かつてない混乱に包まれていた。
移民は日に日に増え続け――
街のあらゆる場所で悲鳴が上がる。
「食料が足りない!」
「寝る場所がない!」
「先に来た俺たちの仕事を奪う気か!」
怒号と不満が飛び交い、
ついには殴り合いまで発展した。
◆
「やめろ! 子供がいるんだぞ!」
「うるせぇ! こっちだって生きるのに必死なんだよ!」
広場では、男たちが掴み合いになっていた。
その周囲で、怯えた子供と女たちが身を寄せ合う。
――限界だった。
この街は、もう受け入れの限界を超えている。
◆
報告を受けたヤマタニは、即座に立ち上がった。
「まずは物流だ。」
迷いはない。
「トラックと鉄道を総動員しろ。周辺から食料と生活物資をかき集める。」
「供給量を倍にしろ。止めるな」
「はっ!」
命令は即座に伝達され、街中の車両が動き出す。
◆
「次に住宅だ。」
地図を広げ、一瞬で判断する。
「空き地はすべて使え。仮設住宅を建てろ。」
「資材は規格化済み、組み立ては最短でいけるな?」
「はい、すでに準備済みです。」
「区画も整理しろ。無秩序に広げるな。」
街は“管理”しなければ崩壊する。
◆
「そして人だ。」
ヤマタニの目が鋭くなる。
「住民登録の処理が遅れている。人員を増やせ。」
「列が街を塞いでいます!」
「なら列を分散させろ。臨時窓口を増設だ。」
人が増えれば、制度も追いつかねばならない。
◆
だが――
「住民同士の衝突が増えています。」
「……予想通りだな。」
ヤマタニは静かに頷いた。
物が足りない時、人は争う。
それは避けられない。
「地域ごとに世話役(民生員)を置け。」
「世話役、ですか?」
「信頼の厚い者を選べ。面倒見のいい奴だ。」
仕事の斡旋、揉め事の仲裁、生活相談。
現場で動く“人”が必要だった。
「上からの統治には限界がある。」
「現場に任せろ。」
◆
その頃――
「……あんた、新入りか?」
「……ああ。」
無精ひげの男が声をかける。
「ここは揉めるぞ。だがな。」
少しだけ笑った。
「助け合えば、なんとかなる街でもある。」
それが、世話役だった。
◆
問題は山積みだった。
だが――
一つずつ、確実に潰していく。
◆
夜。
ヤマタニは窓の外を見ていた。
仮設住宅の灯りが、次々とともっていく。
昼間は混乱に満ちていた街が、少しずつ“形”を取り戻し始めていた。
「……これが、都市を作るということか。」
小さく呟く。
人が増えれば、すべてが足りなくなる。
だが同時に――
「人は、力にもなる。」
労働力は増え、街は拡張できる。
混乱の先には、成長がある。
◆
だが――
この急激な人口増加。
あまりにも、出来すぎていた。
移民の流入は止まらない。
まるで、どこかから“押し出されている”かのように。
「……誰かが、流しているのか?」
ヤマタニの目が細められる。
この流れは、自然ではない。
もし意図されたものだとすれば――
その目的は何だ。
◆
サンブレロの混乱は、まだ序章に過ぎなかった。