作品タイトル不明
公害問題
第49話 公害問題
ヤマタニが設計した煙突フィルター。
だが、思わぬ問題が発生していた。
「煙が、うまく抜けない……?」
フィルターで煤や有害物質はある程度除去できる。
しかしその分、排気の流れが悪くなり、煙が滞留してしまうのだ。
このままでは、逆に工場内や周辺に煙が漏れ出す危険がある。
対策はすぐに講じられた。
排ガスを一度で出さず、再びフィルターへ循環させる多段処理。
さらに煙突そのものを高くし、上空へと拡散させる構造へ変更。
加えて――
「フィルターは定期的に交換・洗浄する。放置は許さない。」
維持管理の仕組みも整えた。
当然、コストは跳ね上がる。
だが。
「人を救うための工場が、人を苦しめる道具になってはならない。」
ヤマタニは迷わなかった。
「利益は後で取り返せばいい。だが、人の命は戻らない。」
それが、管理者としての責務だった。
◆
一方――溶鉱炉の街。
そこに改善はなかった。
直談判した者は、冷たい骸となって帰ってくる。
そんな噂が広まり、誰も声を上げなくなっていた。
咳き込む子供。
弱っていく女房。
黒く染まった空。
「……もう無理だ。」
家を捨て、街を去る者が出始める。
残ったのは、行き場のない者たちだけだった。
人が減り、店は閉まり、治安も崩れていく。
街は急速に荒れていった。
――スラム化。
その言葉が現実になりつつあった。
そんな中、ある噂が広がる。
「煙をどうにかしてくれる領主様がいるらしい。」
半信半疑でも、人は希望にすがる。
「……そこへ行けば、普通に暮らせるのかもしれねえ。」
人々は、少しずつその地を目指し始めた。
――街は、崩壊へと加速していく。